ロスト・ストレイト
2018年製作/95分/イラン
原題または英題:The Lost Strait
スタッフ・キャスト
- 監督
- バラム・タバコリ
- 脚本
- バラム・タバコリ
- 撮影
- ハミド・コゾイエ
- 編集
- メイサム・モライ
- 音楽
- ハメド・サベ
-
ジャバド・エザッティ
-
アミール・ヤジジ
-
ハミド・レザ・アザラン
-
アリ・ソレイマニ
-
マフディー・ゴルバニ
-
マフディー・パクデル
2018年製作/95分/イラン
原題または英題:The Lost Strait
ジャバド・エザッティ
アミール・ヤジジ
ハミド・レザ・アザラン
アリ・ソレイマニ
マフディー・ゴルバニ
マフディー・パクデル
詳しい事は知らないイランイラク戦争。
攻防の焦点となったストレイト(海峡)
実際に戦場にいるかのような、そこで撮影してきたような砂漠と瓦礫の中の戦闘。
最初は川辺?海辺の公園で皆ピクニックをしたりニンジンジュース飲んだりして平和なシーンだが、つかの間という雰囲気かもしていて、戦争によるものか家族を助けるため借金が必要など生活困窮もわかり、軍に合流復帰、、となったとたんに前線へ駆り出される。兵舎もただの古い建物、輸送車もただのトラック、装備も、なんだか出稼ぎが季節労働に行くような感じだ。アメリカが絡む戦争ものはベトナムの奥地だろうがどこだろうがすごい装備すごい兵舎すごい物量で駐屯地の中はアメリカって感じだから、このイランの兵士のいでたちだけでも十分に悲しく理不尽を感じる。
カメラを持った少年、父親は負傷兵、自らも信仰心、信念、愛国心に若者らしい負けん気で前線にでたがる。前線から避難民とともに撤退する負傷兵が理解できない、なぜ負傷しただけでまだ歩けるのに前線に背を向け撤退しているのかとし疑問を呈してしまう、が、徐々に前線の現実に、そこは神の加護も及ばないところだと知るだろう。
友情のわだかまりがありデューティ中の兵隊でもないの前線で避難民の誘導孤児迷子の確保に走り回り、最後は敵戦車スレスレのところで戦闘。砲撃や爆撃や狙撃の中、前進し友を気遣いカバーし合い、負傷死傷した仲間を担いで運ぶ、
反対方向からくるすれ違いざまの負傷兵にこれから進軍する兵士が水筒を渡す。昨日のピクニックから、たった1日の出来事、乾いた砂漠の戦場では水がなく渇いてなくなる者も。
サダム(フセイン)の母親が人工中絶しに医師を訪ねたが医師が母親を説得した、その医師のせいで俺たちは今こんな酷い目にあってるから、医師にむかついてるんだ!と今にも当たりそうの砲撃の最中に言うところが印象的だった。みんな生きてる、その時を楽しもうと、誰かと時間を分かち合おうと、みんな生きてるだけなのに戦争に巻き込まれたら何もかも変わってしまう。イラク軍のスナイパーがいるが探そうとしないので姿は見えない、イラク軍は戦車で侵攻してきて最後戦車で撤退する、姿として見えない敵に撃たれ、空爆され、イランのこの小さな休暇で家に帰れなかった隊のメンバーは生身を晒して反撃し生身を晒して仲間を助けに行く。国を守るために、国が勝つために、なぜ個人が殺し合うのか、と言う根源的に意味不明なんだが、よく生きてよく死ぬという態度で臨む男たち。
生々しくリアルな戦争を描くが、そこには意図しても意図しなくてもでてしまいがちな戦争の高揚感はなく、反戦の意志を感じる。それにしても、避難する人々の貧しさ、兵士の軍の装備何もかもの乏しさ、世界の富、力、物資、武器を独占する一握りの人たちと、そうでない人たち、の中でもとりわけ、持たない人々との格差に呆然とする。
戦争に勝ち負けはないと
戦争で勝つのは武器商人だけ、というこの映画の中のセリフがまさに真実で、戦争反対!武器産業解体!もいいたい。
そして、ありえない装備環境兵力の中闘っている人達の、兵士住民大人子ども分け隔てなく自分の職務からでもなく、人として、仲間を助け合い見捨てない熱い思いと信念、彼らの闘い、戦争の意義大義はここにあると強く感じた。
イラン・イラク戦争をイラン側の視点で描く。映画自体は物語としてはつまらない。戦場をリアルに表現しており、砂埃、暗闇で映像も見にくく、ちぎれた腕を元に戻すべく、その人へ運ぶなどグロいシーンも沢山あり。兵士にはそれぞれ子供や親家族があり、誰も戦地に赴くのを望んでいない。一人が少年に戦争で勝者はおらず、武器商人だけが勝つと、重い言葉。結局、戦っているのではなく、祖国を守るため、家族を守っているだけと。何と言っても戦闘シーンはリアルで、銃弾、砲撃飛び交う中、倒れた兵士を助けに走り回るシーンは、絶対に真似できず、想像を絶する。兵士達も死に物狂いで動き回り、喉乾くと言うが、見ていてこちらも喉が渇いてくる。頭に銃弾を受け、死の自覚もないまま、地面に横たわり、頭から血を垂れ流し死んでいく。5日後に停戦が締結されるが、イラクの侵攻を食い止める切っ掛けとなった部隊は混乱に紛れて死んでいき、歴史からも忘れ去られる。一体、何なんだろうと重く心に残る。
イラン・イラク戦争末期。前線に投入された兵士の過酷な戦いを描く物語。
イラン・イラク戦争を描いた戦争映画ですが、プロパガンダ映画ではなく、しっかりとした反戦映画に仕上がっていました。
名もなき兵士、戦闘を知らず勇ましく叫ぶ若者、前線の混乱、そして突然の砲弾と死。それらが特別な飾りもなく描かれています。
戦闘シーンの撮影。ワンカット長回しの手法も取られていて、戦闘の緊迫感をより感じることが出来ました。
知らない戦争を知ることが出来た半面、知らないだけに分かり難い部分もあって、映画の面白さとしてはやや低めの評価を付けました。しかし、それでも一見の価値はあったと思います。
イランは宗教国家ですし、アメリカからテロ国家として指定を受けている国です。でも、このような映画を製作出来ることは、素直に評価したいと思います。