「静かな雨、確かな足音」静かな雨 ryotaさんの映画レビュー(感想・評価)
静かな雨、確かな足音
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私が一番好きな仲野太賀の主演ということで非常に楽しみにしていた。もちろん、左足が動かないという稀有な役柄も見事に演じられていて、やはり太賀はこのような役を演じるのがうまいと感じた。そしてもう一つの驚きは、衛藤美彩の演技がとても自然であったことだ。乃木坂46時代の彼女の存在を知っているから、多少そのような目で見てしまうかと思ったが、そんなことは全く気にならないほど自然な演技だった。後に知ることだが、この撮影は彼女が乃木坂46に在籍時に撮ったもの(現在は卒業)と知り、なお驚いた。
太賀演じる行助が左足が動かないため、常に足を引きずるように歩いている。その一歩一歩はいわば普通ではない。ただ、その一歩一歩が確かなものだったと感じる。衛藤美彩演じるこよみとの出会いから、最初は真白のキャンバスに恋色が描かれるが、こよみの事故を機に、灰色から黒色へと塗り変えられる。しかし最後は普通は塗り替えることができない黒も淡く綺麗な色に変わって描かれた。
劇中こよみは「ゆきさんの世界には私がいて、私の世界にはゆきさんがいる。けどその世界は別々のもの」と言ったが、私にはそれこそが淡い色で少し霞んでいるものの、2人の世界が少し重なったように見えた。
そして、こよみを想う行助の一歩一歩は、確かな足音を立てながら進んでいた。
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