「カイジから架空の現日本へ叱咤激励」カイジ ファイナルゲーム 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
カイジから架空の現日本へ叱咤激励
同名人気コミックの実写化第3弾で最終作。
実に9年ぶりとなり、映画の中の世界では開催された東京オリンピック2020。が、それによって…
国の借金も物価も失業率も上昇。フィクションとは言え、ゾッとするような世界。
しかし、現実世界でも…
コロナで東京オリンピックは延期となったが、未だ私たちの生活や景気に大打撃。
言い方は失礼かもしれないが、果たしてどっちがマシなのだろう…?
そんな事を思いながら見始めた本作。
相変わらず底辺の生活を送るカイジ。ある時、金持ち老人主宰によるイベントに参加。見事勝利し、10億円か、人生を変える極秘情報が得られる“魔法のキー”か選べ、後者を選択する。
後日、その老人の屋敷に招かれ、日本の政界をも巻き込むある壮絶で過酷なゲームに挑む計画を持ち掛けられる…!
もはやこれはギャンブルなのか?(ファンの方に言わせれば『カイジ』なのか?)…という事はさておき、人生懸けたスリリングなゲームとしてはハラハラドキドキで飽きずに楽しめる。
ビル屋上の棒に付いたカードを手に入れる“バベルの塔”。
敵対する2人が“Family”“Friend”“Fixer”“Fan”の資産を金塊に換えて勝負する“最後の審判~人間秤”。
生きるか死ぬか、10本の内一本だけが繋がれた“ドリームジャンプ”。
そして、ある人物との一騎打ち、“ゴールドジャンケン”。
原作者考案のオリジナルのゲームなだけに、新しくもしっかりとツボ抑え。
メインは“最後の審判~人間秤”だろう。
勧善懲悪、悪魔的に絶体絶命に追い込まれ大ピンチ、最後の最後にスカッと超逆転! 近々始まる『半沢直樹』じゃないが、コテッコテの展開。
勝負を決めたのは、情、愛、絆の浪花節。ここら辺、日本人なら大好きだろう。
“キュー”はニヤリとさせられたし、“幻の絵画”と“欠けた金貨”にはちと目頭熱くさせられた。
俺たち弱者を見下す偉ぶった傲慢野郎は遠慮なんか要らねぇ、徹底的に懲らしめろ!
藤原カイジ竜也は今回も期待通り。いや、前2作以上。
カイジ側では、新田真剣佑演じる金持ち老人の秘書はキーキャラ。
関水渚は可愛いが、“キュー”以外は特に見せ場ナシ…。
前2作の松尾スズキや生瀬勝久や天海祐希も登場。特に天海祐希は場を拐っていったね。
香川照之、伊勢谷友介と繰り広げてきた白熱バトル。
今回は、吉田鋼太郎。
嫌みやムカつき、敵役の全てを凝縮したようなTHEヒールで、寧ろ天晴れ!
蜷川舞台他何度も共演してきたからこその息の合った、特濃&感情大爆発&ハイテンション熱演は最大の見所!
実は吉田鋼太郎は中ボスといったところ。
ラスボスは政界の若エリートの福士蒼汰。
存在感もあんなに盛り上がったゲームも、急にラストでショボくダウン…。
彼が推し進める政策やキャラ立ちや考えが『AI崩壊』の黒幕エリートとほとんど同じのような…。
まあ、一部のエリートの自分勝手な思想や政治家どもの腹黒さと言ったら…。
そんな奴らが日本を支えているんじゃない。
そんな奴らの為に日本があるんじゃない。
日本を支えているのは俺たち一人一人だ。
俺たち一人一人が居ての日本なんだ。
カネやギャンブルを通り越し、まさかの日本の格差社会への痛烈メッセージ、私たちへのエール。
急にどうした、カイジ!?
だけど最後は“大きい方”を選んである意味悪魔的にヤバいカイジ。
どうなっても知りゃしねぇ! 今はキンキンに冷えてやがるビールを飲んどけ!
やはりカイジはカイジ!
一応今回で“ファイナル”だが、またその気になればゲーム出来そう。その辺、ざわざわざわざわ…する。
にしてもカイジって、いざとなった時の頭の機転や勝負強さでまともな暮らしや仕事も出来そうな気がする。
だけどそれが出来ないダメでクズ人間で、そうじゃないと話にならないか…。