朝が来るのレビュー・感想・評価
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また反省させられました
ストーリー説明・ネタバレなし、原作未読 河瀬直美監督作品は『あん』以来の鑑賞だったと思います。 今年はコロナ騒動で映画鑑賞が凄く減ったにも関わらず、観る映画観る映画、殆ど満足していて、特に邦画は質が高い作品ばかりで嬉しくなりますね。今、日本映画業界のガラパゴス化が言われていますが、それで映画の質が上がるなら、例え迫力あるスペクタル映画やアクション映画が作れなくても、例え洗練されたミュージカル映画が作れなくても、日本映画はそれで突き進めば良い様な気がします。 本作ですが、今までの河瀬監督の作品群と比べると是枝監督かと思う様な作風で、とても分かりやすい作品でした。 河瀬監督と是枝監督って扱う題材やテーマが似ている感じですが見せ方は微妙に違い、河瀬監督は映像にドラマを乗せるような感じであり、是枝監督は逆に物語に映像を乗せている感じで、観客にとっては後者の方が理解しやすいと思います。 で本作の場合、才気が先走り観客に対しての気配りの希薄さはあまり感じなかったし、物語自体も分かりやすかったですね。それは『あん』くらいから見られる傾向で、樹木希林という役者からの影響が大きくあったのかも知れませんね。本作ではテーマも興味深いものでしたが、物語にも十分引き込まれました。 それと『星の子』の感想でも書いたのですが、自分自身を反省する様なテーマの作品が多くなってきた様に感じます。本作でもそうでしたが、これは歳をとり頭が硬くなってきたせいもあるのかも知れませんが、今まで嫌悪していた行いを己自身が行っていることの発見ほど応えることはありませんからね。 この作品でも世間一般の浅はかな先入観が、自分の中にも確実に存在している事を気付かせてくれました。 映画の冒頭ではこの作品の主人公は永作博美だと思っていたら、ひかり役の蒔田彩珠が本作の主人公だと気付き、彼女に対する私の印象がまさに“世間の目”的な本質とはかけ離れた、フォーマット化さた行動だけでの未熟さ愚かさだったのですが、これは映画的な誘導というか印象操作もあったとは思います。そう思わされたこと自体が物語の終盤にになって強く自分の心に突き刺さりました。 物語の中で、半グレの様な連中に友達の保証人にされて恫喝されたシーンで(正確な台詞は忘れましたが)「何故、私が……」の答えに対し半グレ達から「バカだから…」という返事をされるシーンがありましたが、これは今のSNS時代の象徴的な言葉でもあり、殆どの人間が他者(世間)に向かって無意識に発している総称の様に感じられ、私も当然その1人であったことを思い知らされました。(『あん』の時のハンセン病に対する世間の対応と同一の人間心理だと思います。) (SNS社会では自分以外の全ての他者(肉親/他人、強者/弱者、賢者/愚者関係なく)一個の人間としてではなく“バカ”という総称で呼ぶ傾向を強く感じてしまうし、自分もその例外ではない) この作品の結末が悲劇となるか?希望となるか?、観客はこの二つの結末の予兆を作中に与えられるのですが、観客はどちらの結末を想起してしまうのか?、人間をちゃんと一個の人間として見ることの難しさをこの作品は伝えてくれました。この作品に登場する全ての人間に(あの半グレ達でさへ)記号的な役柄はいないと、捉えられるかどうかを試された様な気がします。
うーん…
予備知識なしに、映画のポスター?見開き?と他の作品の際の短い番宣のみで、産みの親が子供を取り返しに来たり、「そして父になる」のような親子になっていくようなストーリーを勝手に想像してた。 ところが井浦新、永作博美夫婦の「子供を持てない葛藤」のあとにくる「産みの親の苦悩」のサイドストーリがコントラストを付けていて、さらには河瀬直美監督の映像美?カメラワークというのかなぁ、淡々とした画面の中にある一つひとつ(一人ひとりかな)がすごく上質に撮られていた作品だと思った。 凄く泣けるわけでもなく、かと言って凄く感動するわけでもないけど、現代社会にある「割り切れない想い」が丁寧に描かれていると思った。
川島海荷のドラマ版が好きで映画を見た
2016年に川島海荷さん主演で深夜ドラマでやっていたのを見ていました。ドラマ版がすごく好きで今回映画を見ましたが、結論をいうと、ドラマ版の方が好きです。
長いドラマを、映画で2時間位に圧縮するので、物足りなさを感じてしまうのは仕方ないと見る前から覚悟は決めていましたが、もしドラマを見ずにこの映画を見たら、もっと評価していたかも知れません。
ドラマ版と映画版で大きく違うのは、ドラマはひかりが主役、映画版は佐都子が主役になっていること。
また、ドラマ版と比べて1番物足りないと感じたところは、最後の方。
最後に佐都子がひかりに、「わかってあげられなくてごめんね」というシーンがありますが、
ドラマ版では、ひかりが新聞配達で借金を背負わされた後、借金取りから逃げるために別のビジネスホテルで働きます。そこでお金を盗んで、今度は警察から追われる、健太(映画版には出てこない)というひかりの知り合いが、ひかりを守るために借金取りをナイフで刺す、といった、ひかりがどんどん深みにはまっていってしまう話が、複数回にかけて放送されます。
最後の「やっと見つけた、わかってあげられなくてごめんね」というシーンは、ドラマ、映画版両方にあるシーンですが、ドラマ版ではこういった前置きがあってからのこのセリフなので、重みが全く違うように感じられました。
またドラマ版では、ひかりの母親もしっかりひかりに対して愛情を持っていたという描写があります。
ただ、映画版の役者さんたちのみなさんの演技は素晴らしかったと思います。ドラマ版の方が好きですが、映画版でも心を打たれるものはありました。
ドラマ版を見ていない方は、ぜひそちらも見て欲しいです。
複雑な心境に
複雑な心境になりました。 ベストな選択なんてあるのでしょうかね。 世間体を気にしての選択が、人生という長い時間軸のなかで当事者達を変えてしまうこともあるような気がします。難しいですね。聞く耳を持つこと、話しをすることが大事なんでしょね。 良い作品でした‼︎
最後の最後で涙腺決壊
逆光がよく使われていて、画面のコントロール難しいのをよくやってると思ったし、演技がナチュラルで、撮り方も含めてドキュメンタリーぽい。
幼くして子供を産み、里子に出した少女も、その子を特別養子縁組で迎えた女性も、女だというだけで割を食ってる。
孕ませた少年は何の責任もとらず、全てを忘れて高校に進学し生活を楽しんでいるのに、進学校に進む予定だった少女はスーパーでキュウリを詰め、家での居場所も失くす、この不公平感。
優良企業に勤める同僚同士の夫婦、子供が出来ずに望んだ特別養子縁組の条件は、夫婦のどちらかが育児に専念すること。妻は仕事を辞める。どちらかがと言われて、恐らく収入の多いであろう夫が仕事を続けるのは合理的判断ではあるが、なぜ夫の、男性の収入が多い設定に社会そのものがなっているのか。
なぜ、夫は子供も仕事も両方手にして、妻は仕事を手放さなければならなかったのか。
どうしても引っ掛かる。
そしてたぶんこの映画のテーマのひとつは「女って、女ってだけで割を食ってるんだよなあ」なんだと思う。
自分の居場所を失くした少女がなぜあんなことをしたのかわかる気がする。
居場所を失った少女が、最後に拠り所にしたのは子供だった。
そして、それを子供の養母が理解できたのも、ある意味必然だったのだろう。
エンドロールの歌で、「これここに持ってきやがって鬼か(誉め言葉)」とうるうるしていたが、エンドロールの最後の最後で涙腺決壊。
彼女の居場所が、ちゃんと彼の中にあって良かった。
切実なテーマをリアルに描いているが
子供が欲しくても授かることのできない夫婦と、子供を産んでも育てることのできない母親。特別養子縁組による子供、養親、実親の関わりという切実で重いテーマを、リアルに、かつ謎解きの要素を入れて描いている。 木々や島の風と光、ドキュメンタリーと見紛う登場人物の表情やセリフ、揺れるカメラなど、河瀬監督の持ち味が十分に発揮されている。 前半の夫婦のパートでは、妊活に悩む姿、特別養子縁組という制度を知って感銘を受ける姿が、自分事として感じられ、「親のためではなく、生まれてくる子供のための制度」とNPO主宰役の浅田美代子が語る姿に、本当に感動してしまった。 しかし、この作品(たぶん原作も)の真価は、子供を産んでも育てることのできなかった母親の事情と心情を描いている後半のパートにある。そこでの母親役の蒔田彩珠の凄みには目を見張る。よくこれだけの難役を演じきったものだ。 ただし、数年振りに会う母親と名乗る人物が変貌し、金を要求してくるシーンは、謎解きの起点となるシーンであり、事情が明らかになった後にはクライマックスとなるはずのシーンだが、他のシーンの描写の濃密さと比べると、ずいぶん薄味で、しかもセリフに頼っていたように感じ、物足りなさが残った。 後半になるにつれて、謎解きを追いかけるのに性急な感じで、残念ながら、河瀬監督はミステリーを描くのは得手ではないようだ。 ラストの母親どうしの再会、そして子供の視点が、監督が描きたかった本当のテーマなのだろうが、自分としてはうまく読み取ることができなかった。
一人でも多くの人に観てほしい作品
この映画は ほんの少し前に封切られたはずなんだけど… 今日私が観に行った映画館では今週木曜日迄で終了になるらしい。 今日も実際 私を含めて二人のみの観覧者だったので仕方のない現実なのでしょうが、、、。 邦画はチョッとね~とか、思っている方には特に観てほしい!! 私は他の口コミをされてる方々に比べると原作者の辻村深月さんの事も河瀨直美監督の事も殆ど…いえ、全然、予備知識はなかったのですが。 ただ『朝が来る』は たまたまドラマ版を観たことがあって、 私の場合、もし同じ作品をTVドラマで 観てから後で劇場版を見た場合の多くはドラマ版が勝者になる、って感じだったのですが 本来は勝ち負けの問題ではないのでしょうが、どうしてもドラマの方が内容が濃くなって当たり前だし連続で観る映画に比べれば次の回を観たくなる様なメリハリもつけなきゃならないだろうし。 でも、今回の作品に関しては劇場版の方が断然記憶に残るモノになりそうです。 こんなに丁寧に、且つ其々の登場人物に感情移入出来る作品は そうは無いと私は思いました。 他の方の口コミにも有りましたが、こんなにリアルに、まるでドキュメンタリーの様に仕上げられた作品は少なくとも私は出会った事がありませんでした。 私が語るまでもなく、永作さんも井浦さんも、もちろんヒカリ役の薪田彩珠さんも称賛に値する役者さん達でしたが、 私の中では朝斗君の3人目のお母さんにあたる浅田美代子さんも実に印象深い配役だったと思いました。 若い方々には浅田美代子さんの認識は薄いかも知れませんが、 終盤の浅田さんのセリフは浅田さんにしか出せなかった心からの言葉だった様に思えてなりませんでした。 最後に、最初の内にコーヒーを飲んだのが災いしたのか… エンドロールの少し前からトイレに行きたくなってて、他の多くの方々の口コミを見てなければ最後まで観ずに出てしまうところでしたが、 最後まで観て 本当に良かったです!! この場を借りて有難うございました! 【補足】邦画が好きだと公言してる割にはあまりに認識がなかったので、後で調べて判明した事ではあったのですが… 私の今まで観た邦画作品の中で印象深いモノの中に辻村深月さんの『ツナグ』がありました~! ご存知の方には"言わずもがな"でしょうが主演の松坂桃李さんが比較的近年のアカデミー主演男優賞大賞受賞後に樹木希林さんとの思い出を涙ながらに語られた作品です (長い補足でスミマセン^^;)
テーマや取り上げ方は良いが・・・
子どもに恵まれなかった夫婦に養子を斡旋し、子育てを始める。そこで起こる典型的子育ての苦悩、養子だと周囲に伝えておくという苦悩を乗り越えて幸せな日々を送っていたが、ある日産みの母親が子どもを返して欲しい・できないならお金が欲しいと要求してくる。
通常だと、養子に迎えた幸せの家庭を描くことが中心となってくるが、さまざまな事情で育てられない母親側の苦悩やその周囲の苦悩まで描かれているのは新鮮である。
産みの母親がお金を要求するのは、同僚の借金の保証人になってその返済に困ったからではないか、と安直に想像できるが、それだけではない産みの母親が子どもに会いたいという思いも乗せてぱっと見では意味不明とも思える行動をとったのではないかと思える。
すべての俳優が本当の家族、心底苦悩する、というのが痛いほど伝わる演技で見入ってしまう。
と、ここまでは通常の感想。
河瀬直美監督お得意の風景、特に木々に風が当たっているような場面が転換時や何か気持ちを表すかのように入っている。効果的に入れるのであれば良いが、それが多用されると「今度は何の気持ちが投影してんの?」とツッコミたくなり、げんなりしてくる。
育てられない母親の経済状況、生活状況は決して良くないだろうというのは想像できるが、進学せずに落ちぶれていき、ちょっとグレ気味の風貌になるのは一昔前のような印象が拭えない。借金の保証人に知らないうちにさせられているのも一昔前によくあった設定。産みの母親の側を描くことはとてもよい視点だけにもったいない。原作は読んでいないが、設定がそうであったなら、脚本で現代の設定に置き換えるべきだろう。
警察が事情聴取で来たのを最後に持ってきて引っ張ったものの、捜索人のことで聞きたいという薄っぺらい内容はちょっとがっかり。もっと深いものがあれば展開としてよかったのに残念。最後の展開で2人の母親と子どもが会うシーンで終わるが、養子先の住所を簡単に見られてしまうという初歩的ミスからのもので、そう考えると感動が半減してしまった。
作品の取り上げ方はいいのに、いくつか残念な点が見え隠れした。次回作も風景が要所要所にはいるのだろうか。
彼女にお金が必要な理由
【登場人物】
・妻
・夫
・息子(養子)……幼稚園児
・実母
【映画の構成】
前半……東京の夫婦が養子縁組を行うまで
後半……奈良の14歳少女が出産し、子供を養子に出す。家出した彼女は東京で困窮した生活を送る
【映画のポイント】 「14歳で出産しただけ」で、女性のその後の人生が決定づけられてしまう。そのような旧来的社会設計の問題点が浮かび上がってくる。
だから彼女は、「子供を返して」だけではなく「お金をちょうだい」とも言わざるを得ないのだ。
【映画の構成について】 映画の大半が、過去の回想によって占められている。現在で起こる出来事は、たった2つ。
①ジャングルジム事件……養子の息子が他の園児をジャングルジムから落としたのではないか?という疑惑が生じる
②養子の実母が「息子を返してほしい」と夫婦に連絡してくる
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【あらすじ:前半】
職場結婚をした夫婦。夫は「家族がほしい」と言うが、検査の結果「無精子症」であることが判明。睾丸内で精子は生成されているが、精管が詰まっている可能性が考えられた。そのため睾丸を切開し精子を取り出す手術を予約。だが夫は手術に踏み切ることができず、不妊治療を諦める。
妻は、そんな夫に対し「2人で生きよう」と声をかける。
それでも夫は子供を持つことにこだわり、養子縁組の利用を考える。妻も同調。養子縁組仲介のNPO法人「ベビーバトン」を通して1人の男の子を授かる。
ここで養子縁組の条件は
①真実告知:養子に対し、小学校入学前に実母の存在を告知すること
②共働きはNG
そのため妻は会社を辞め、専業主婦となる。
経済的な負担はそこまででもなく、タワマン30Fに住み、外車を所有していた。
息子はすくすくと育ち、現在幼稚園児。まもなく小学校入学を迎える。
2歳のときすでに真実告知を済ませ、周囲からも養子としての理解は得ていた。
そんなある日、自宅にかかってきた電話から、「子供を返してほしい」「それかお金をください」という言葉が聞こえてくる。
★妻は、夫を気遣い、基本的には黙って付き従うか同調するのみで、本人の意思がセリフに表れてこない。妻の側から、夫に行動を促したり希望を伝えたりすることがない。(妻の要望が私は知りたい)
★夫が子供を持つことにこだわるモチベーションは何?子供を持つことが、妻と一緒にいる条件だと思っていた?
★妻もきっと子供は欲しいのに、どうして「2人で生きていこう」と言えてしまうんだろう
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【あらすじ:後半部】
奈良で暮らす中学生のひかり。バスケ部の彼氏ができるが、妊娠してしまう。妊娠判明時点ですでに、堕胎可能な期間を過ぎていた。そこで両親は、生まれてくる赤子を養子へ出すことに決める。その仲介役となるのが「ベビーバトン」だった。
広島県内にあるベビーバトン所有施設で、ひかりは、出産を待つまでのあいだ寮生活を送った。
出産後。実家に帰るひかり。姉は奈良学園(県内トップの私立進学校)へ進学し、京都大学を目指して受験勉強していた。
両親のひかりに対する期待も、姉と同様の進路を取ることだった。だがひかりは姉と同じ道はとらなかった。
近所の食材販売店でアルバイトする彼女。ある日親戚の放った一言が決め手となって、家出する。
東京では新聞配達のバイトを行うが、同僚が借金取りに追われ、書類を偽造し、ひかりを連帯保証人にして夜逃げしてしまう。借金を負わされた彼女は上司からお金を借りて返済する。
追い詰められた彼女は、自分の息子の里親に連絡し、「子供を返すか、お金をちょうだい」と要求するのだった。
(本来里親の連絡先を実母が知ることはない。ひかりは家出した途中で居候したベビーバトンの寮で書類を盗み見た)
★妊娠させた彼氏は何事もなく高校へ上がっている。「産ませた」側がリスクを背負っていない。(コンドームを装着するだけでよかったのではないか?とも思うが、初潮を迎えていなかったという事情が設定されている)
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【物語の大半は回想】
物語の大半は、夫婦視点での過去、実母視点での過去と回想によって占められており、現在の出来事ではない。
唯一現在進行形なのは、ジャングルジム事件と、実母訪問のみである。
【メモ】
・単に「子供を返して」だけではなく、「お金をちょうだい」と言わざるを得なかったのはなぜなのか。だって物語は、電話で要求するところで終わるから。ひかりが夫妻を訪問したところで終わるから。その先の展開がないから。それなのにどうして、作者はお金を要求させたの?
・ひかりの妊娠は、否定的には描かれていない。純粋な愛の結末。幸せの頂点。肯定的かはわからないし、ましてや推奨はしていない。ただ幸せな結果として初めての性交をしている。
・妊娠自体に罪があるのではない。養育という実際的な問題だ(費用の用意と、養育者の確保)。および現在「誰もが歩むべき」とされる小中高大就職という理想的な進路のなかに養育費用・時間確保の期間が組み込まれ得ないこと(何歳でこれをやらなければいけない、と決まっていること)。そのような旧来的社会設計を規範化した人々が、「ハズレ」た個人を疎外すること。「こんな社会だったらいいのに」という個々人の願いだけでは環境を変えられないこと。「みんな同じ生き方をするべき」という前提。
・そんな前提を受け容れられなかったひかり。受験には間に合ったかも知れない……姉と同じように進学校に合格し、有名大学へ行けたかも知れない。でもそれは、出産した自分を疎外する人々の側に立つことだ。
・映画のテーマ『アサトヒカリ』
・ジャングルジム事件の必要性→子供の発言の真偽を見極めようとするとき、我が子が「本当の子供」であるかどうかに考えがおよぶ。それがマイナスに働くと、子供に嘘をつかせたり、謝らせたり、という方向にはたらく。(そうして子供がグレていく)だが今回は、そうなる前に、我が子の発言が真実であるとわかった。
・子作りに関して、妻の感情が隠されている。本当は子供が欲しいんじゃないの?離婚はしないの?妻は、基本的に肯定するだけ。主体的に夫を引っ張ったり、行動を促すという描写がされない。もっと彼女の考えが知りたい。妻の感情が溢れるのはラスト。
・産めなかった母と産んだ母との邂逅。妻は、前述のような社会規範に従ったにもかかわらず、産めなかった。産んだ母親は規範からハズれてしまった。
・みんな演技がめちゃめちゃ上手い。邦画アレルギーが解消された
・井浦新の酔いどれ演技が神がかっている。(子供らしくおどおどしたり、家族が欲しいと建前ぶちあげたり、実母に対峙したときは頼りがいがあったり。典型的な男の子って感じだ)
・新聞配達の事業所の店長の涙の演技がいい
・子役が神
ラストは劇場で観てください。
望まない妊娠した少女と望んでも生まれない夫婦との有り得る絆
この問題はどこにでもあり得る問題を愛を持って紡いで行く絆を 表現してほつこりする映画でした。一人一人が子供を愛していたし、子供も養子で有る事を知っていて中学生の彼女が島で出産して、赤ちゃんの顔に顔をくっつけるシーンや家にいられなくて放浪し何度も養子宅に訪れて脅迫まがいの事をしても、真意を分かった夫婦が子供に広島のお母さんだよ言い、子供も会いたかったと話すシーンは涙が出てきました。辻村深月さん原作で河瀬直美監督、永作さん井浦さん、浅田美代子さん蒔田さん、朝斗役の子役さん皆さん良い演技でした。
ラストと随所に入る主題歌が釈然とせず
独特のドキュメンタリータッチな演出方法が秀逸で、特にベビーバトンの特集は、どこかから拝借してきたのかなと思うくらいリアリティがあった。
特に母役の永作博美さんやベビーバトン代表役の浅田美代子さんも素晴らしかった。
養子縁組側からの描き方と実の母側からの描き方が均等だったのは良かった。
しかし、最後の互いに交わした『ごめんなさい』には私自身はあまり理解できなかった。
まず養子縁組の母からは何一つ謝る事はないのかな、と思う。
実の母が急に訪ねてきたのを疑ってしまった事に対してか。
手紙に書いた後、消された『なかったことにしないで』と言う言葉をわかってあげなかったからか。
もしくは幼稚園で他の子とトラブルになった時、少しでも子供に対して疑いを持ってしまった事への
罪悪感か。
いずれにしても実の母に対する『ごめんなさい』は必要あったのかな、と個人的には理解できなかった。
また実の母が同僚に裏切られて金銭的に苦労している故、実の子を理由にお金を要求するわけだが、そのシーンももっと汚く描いても良いかなと思った。
意外とあっさり引いたし、泥臭くないし、あまりに美化されていたような気がする。
あと、主題歌をあんな何回も使う必要があったのか。
何度も劇中でかかるため、歌詞をちゃんと聞いてみたのだが、
それほど映画にズバッと来る感じでもなかった。
皮肉ながら少し前に観た『糸』という作品がかぶってしまい、
それと比べると、正直インパクトもなかった。
それに最後に子供に歌わせるのは正直安易と感じた。
私の敬愛する映画評論家さんたちも高評価していたが、
イマイチ私の心にぐっと来るものはなかった。
そんな映画もあるよね。
里親から観た「朝が来る」
特別養子縁組で2人の子どもを現在進行形で
育てています。また、辻村深月さんの原作も
読んでいました。
河瀬監督作品はあまり多くは観てませんが、
ドキュメンタリータッチの映像作家のイメージが
強かったので、この原作を映画化すると
聞いた時はかなり意外で驚きました。
映画を観ての感想は、想像以上に原作に忠実
だと思いました。そして里親としては佐都子
夫婦にどうしても感情移入してしまいます。
不妊治療から里親へとつながる葛藤、苦悩は
多くの里親に共通する体験であり、共感できる
ものだと思います。
ベビーバトンなる養子縁組斡旋のNPO団体も
里親なら知らない人は居ないのではないか
というほど有名な団体がモデルですが、私も以前
この団体の面接を受けたりしたことがあるので
かなりリアルというか、そのままだったので
正直驚きました。
原作同様、後半のひかりのストーリーに
より多くウェイトが置かれて、原作よりかは
マイルドになっているとはいえ、転落して
いく悲惨さがかなり痛々しいながら、
なんとか踏ん張っているひかりの姿を
好演していたと思いました。
(個人的にはひかりがお腹の子どもにちびたんと
名付けて呼んでいたところは泣けました)
最後、原作のラストで佐都子、ひかりが
朝斗の存在により結びつき浄化される様を
どのように演出するかと思いましたが、
エンドロールの最後の「会いたかった」の一言で
表現したのは見事でした。
映画としても素晴らしいのですが、この作品を
通して特別養子縁組や社会養護への
理解が深まるよう願っています。
この映画を観ようかどうしようかと迷っている人はまず私のレビューを読んで欲しい。
はい。ようこそ来て頂きありがとうございます。 この映画を観ようか、やめようか迷っているあなた!まずこのレビューを読んで頂ければ幸いでございます。 なんか不妊症の夫婦の話かあ。重そうだな。きつそうだな。はい、わかりますよ。わかります。だって私もそう思っていましたから。 確かに不妊症の話しはかなりの尺を使って描かれます。 男性側が無精子症だと顕微授精でお金が掛かります。心理的な負担も有ります。つらい。観ている方もつらい。しかし・・・ 中盤から話しは一転。赤ちゃんを提供した少女の話しにシフトします。しかも最初からです。 ひと恋染めしのドキドキ感から妊娠、そして出産まで。これはこれでつらい。しかし。しかしです。・・・観て損は有りません。きっと。 ここで、まるで違う話しになります。 三年前に奈良に行った時の事です。知っていると思いますが、鹿が沢山います。可愛い。何度も鹿せんべいを買って鹿にあげます。 大仏殿に向かう参道で鹿せんべいを買いました。その刹那。なんか生暖かい。獣臭い。そうです、肩の上に二頭の鹿。脇に二頭の鹿。完全にロックオンされています。 当時は台湾でドラマの「鹿男あをによし」が放送されていて、台湾では大ブームです。8月に行ったのですがお客の半数は台湾の方です。台湾ギャルは鹿に追い回されて嬉しそうです。多分一生忘れないよ。 しかし。しかしです。十鹿十色。鹿は本来優しい生き物です。 大仏殿に向かう途中に小さなせせらぎがあります。暑い盛りなので多くの鹿が涼をとっています。 ふと見ると若い雌鹿。人間だと推定15歳。そしてその横には小さな仔鹿。とてつもなく可愛いです。私は仔鹿を写真に撮ろうとしました。しかし、母鹿が仔鹿の前に出る。 何回も繰り返し結局、仔鹿を写真に収める事は断念しました。 鹿は本来草原で、草を食んで生きる動物。捕食者、被捕食者で言うと完全に被捕食者です。つまり本能として仔鹿を守っているのです。 二月堂に向かうと外国人が何度も鹿にお辞儀をしています。鹿もそれに呼応してお辞儀をします。 オー ニホンノシカハ レイギ タダシイデス❗️ ちょっ!待てよ❗️鹿せんべいは❓あげろよ。私は買いに行ったんですよ。代わりに。そしたら店頭に人がいねえの❗️やる気だせよ。鹿さんごめんね🙇鹿さんは可愛い。ディア 鹿さん。 はい。枕終わり。長いなあ。すいません。まずは簡単にストーリーを紹介します。ネタバレはしませんからね。 栗原清和(井浦新)と佐登子(永作博美)の夫婦は一度は子供を持つことを諦めましたが、特別養子縁組により男の子を育てることになりました。朝斗(佐藤令旺 さとうれお)と名付け、良い子に育ちました。 もうね朝斗くんが可愛いし健気なんです。幼稚園でいざこざが有り、周りがギクシャクした時の一言。 「ママ、ぼくがやったって言った方がいい?」 私はびえんだよ。すいません。調子に乗りました。新しい事を言いたかっただけです。 夫婦に突然の電話。ドキドキ。私の子供を返して下さい。 えっ?まじっすか?その人は家に来ます。茶髪でスカジャンを着ています。夫妻は赤ちゃんの受け渡しの時、女子中学生に会っています。似ても似つかない容姿。 あなたは誰ですか? そして物語は中盤に入ります。少女の話しです。片倉ひかり(蒔田彩珠 まきたあじゅ)の視点になります。 まず奈良の風景が美しい。流石の「あをによし」です。里山の風景。桜のインサート。光が溢れています。河瀬監督は奈良出身なんですね。奈良愛を感じました。しかし鹿はワンカットしか出ません。 蒔田彩珠。最近観た映画に出ていたんで覚えています。凄く上手い。なんと次の次の朝ドラ「さよならモネ」で清原果耶の妹役を勝ち取ったのだった。凄い。 皆様。名前を覚えて下さい。まきたあじゅ、まきたあじゅ。最後のお願いに参りました。まきたあじゅに皆様の清き一票をお願いします。 何故、選挙風❓ その後の広島の島の風景も素晴らしい。内海なので太平洋のような暴力的な海では有りません。とにかく優しい海です。 あなたの島にお嫁に行きたくなりました。 そんなこんなで泣きました。良かった。凄く。 ネタバレなしなので隔靴掻痒の思いでございます。夜は冷たく長い。でも誰にでも朝は来ます。希望の朝です。 夜は鬼が出ます。朝の映画は如何ですか? エンドロールの最後まで制作者の愛を感じました。 長文でごめんなさい。 ふざけてごめんなさい。 ここまで読んで頂き感謝カンゲキ 雨嵐でございます。
レビューの良さで期待しすぎた
レビュー評価だけ見て あえてレビュー内容は見ずに鑑賞 なんだろ・・・ ワケあって育てられなかった中学生も 母性を持ったのはわかる ならば自分の母ちゃんに対して少しでも 心の変化がほしかった 仲違いのままで救いなし 自分の将来を考えてくれる家族がいたのに ないがしろのままで終わったのは 悲しかったな 最後まで自分自分で 自分の子供に会いたいやら金だせやら 人を思いやれる人になって 身を引いたりもせず 心の成長が見れず残念 なんなん?
法律だけでは片付けられない
子供が授かれない側(前半)と 産んだが育てられない側(後半)の 苦悩と葛藤 この映画を観るまでは 前半側の意見に 凄く共感してました しかし、 色んな事情で 手放さなきゃいけなく 凄く苦しむ人もいると わかりました 2人の母親が 子供にとって 良い選択を取ろうと 必死にもがき 考え 苦しみ 終盤に 泣きながら ひざまづいて 謝る姿が 見てられなかった 法律だけでは 片付けられない要素が そこにあり 人の感情と世間体(社会)との 狭間を揺れ動く描写など うまく表現していると思いました 帰り道 あとから泣けてきます
一本一本と大事に物語を紡ぐ。これが邦画だ。日本映画なんだ!
個人評価:4.4 美しい人。守りたい人。命と人生を扱った素晴らしく、そして誇張がない人間ドラマだ。 河瀬作品はどれも素晴らしいが、自身が物語も手懸ける作品と、原作がある物語を手懸ける作品とではやはり趣きが違う。「あん」でも感じたが、原作がある時の作品は人間描写が素晴らしく繊細と感じる。台詞なしで表情のアップ、その眼差しだけで何を感じているか伝わってくる。人間を描くのが本当に上手いと思う。他作の自身が物語を描く時は、人間よりも土地や風土に宿るモノを描いていると感じるが、人間を描かせた河瀬直美も本当に素晴らしい。 一本一本と大事に物語を紡ぐ。外国映画にはないこれが日本映画なんだ!という作品。 アメリカアカデミー賞に久しく日本映画がノミネートされた事も嬉しく思い、オスカーも必ず取れる作品だ。
送り出す母、向かい入れる母の壮絶なバトルかと思いきや、どちらの母も...
送り出す母、向かい入れる母の壮絶なバトルかと思いきや、どちらの母もそれぞれの立ち位置で子を思う良き母だと思った。 1番怖かったのは幼稚園のママ友。(ママ友あるある) 十代で妊娠した女の子は子供を産んだ事で精神年齢と実年齢が伴わずうまく生きて行けなくなったのに男の方は変わらず学生をしている姿がリアルだった。
見事な映像の連なりに魅せられた
全ての監督作品を見ているわけではないけれど、個人的には最も好きな作品だった。 私的ドキュメンタリーから始まって、どの劇作品にもその影響が色濃いという認識。この作品もリアルさの追求というものを強く感じたけれど、これまでと違うなと思ったのは、画面の中の絵を意識的に意図したものを作り上げようとしていたようなところ。偶然に捉えたものとか極力抑えて、偶然に見える箇所も明確な演出があってそのように構築されていると強く感じた。故に、これまで以上にカッチとした劇映画という印象だったけれど、その反面、これまで以上に全てがナチュラルに流れている印象で、相当見入った。 とにかく、映像の連なりが見事で、話とか構成も素晴らしかったけれど、絵がいいなあという─、今までこの監督作品ではそんなこと感じたことがなっかたのですが・・・。 まだまだこれから傑作を作り出してくれる監督だとは思いますけど、とりあえず今のところの総決算的な映画のように感じました。
全288件中、161~180件目を表示