「現実か、映画か」朝が来る とまさんさんの映画レビュー(感想・評価)
現実か、映画か
河瀬監督の作品は今までに何度も拝見しています。
昔は抽象的な作品が多かったですが、「あん」以降は映画の輪郭がはっきりと写し出されるようになり、20代の私が見ても理解できる内容になってきています。
その中でもこの作品はとても印象深く残りました。
役者の方々の演技なのか現実なのか曖昧なくらい自然な演技、それを支えるカメラワークが素晴らしいことは言うまでもありませんが、途中にある木々の映像、広島の牡蠣の養殖の海、その意味を考えさせられる流れに圧倒されました。
身近なこととして考えたことのない、不妊症、養子縁組、思わぬ妊娠、出産、全てが自分のことのようにリアルに感じられ、観賞後には心にずしんと重みが残りました。
何が正解なのだろう、何が彼らの人生にとってベストなのだろう、とまるで映画の中の1人に自分がなったかのような。
前半は夫婦の人生が映し出され、後半にひかりの人生が映し出されるのも、より心をえぐられました。
河瀬監督だからこそ織りなせる、演出のリアリティ。
映画のメッセージがより鮮明に心に響きます。
この作品は色々な人に見て欲しいです。
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