「これもまた、極上のプレイリスト映画。」ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
これもまた、極上のプレイリスト映画。
数々の作品に主演しているオリヴィア・ワイルドの長編初監督作品は、ハイスクール卒業前の一夜を描くという、『アメリカン・スリープオーバー』(2010)を彷彿とさせる舞台設定。爽やかな青春ドラマを期待していたら、『グッド・ボーイズ』(2019)もぶっ飛ぶ、えげつなさ成分多少多めの台詞の応酬に笑い、泣く濃厚な映画体験となりました!登場人物の中では間違いなく主人公二人の立場に属するため(ただしイエール大学に入る学力はない)、何とか高校最後の一晩で充実した高校生活を取り戻そうとする主人公達二人の奮闘には、手に汗握りつつも強く共感してしまいました。
パーティーをさまよっているうちに、それまでただ騒がしくて自分たちだけで盛り上がっているように見えたクラスメイトの人物像が掘り下げられていく展開がみごと。特に神出鬼没のジジ(ビリー・ロード)が個人的には最高。そして場面毎に流れる曲は、そのときどきの人物の心情を表現するという、『WAVES』と同様、重要な役割を果たしています。
作中で描かれる米国の学校環境は、日本の学校しか知らない者からすれば驚きの連続。学内でLGBTを問題にする人はおらず(ただしその表明に伴うある程度の困難さは台詞で補足されている)、トイレも男女共用です。これらの描写は決して映画的な誇張ではなく、カリフォルニア州などでは普通の状況だということを知り、これもまた驚き(といってもちろん、全米の学校が全て同じ環境ではないだろうけど)。
パンフレットは大学ノートを基調にしたデザインが秀逸で、高橋芳朗さんの音楽評論、町山広美さんのコラムをはじめとした解説が充実している上、主要映画人の関係図も含まれるほどの力の入れよう。これは買って損はないでしょう!