「よくぞサッシャ・レインを見つけてくれた!」アメリカン・ハニー 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0よくぞサッシャ・レインを見つけてくれた!

2025年6月30日
PCから投稿

アンドレア・アーノルドはかなり直感的な映画作りをすると思っているのだが、その最も最たるものがこの映画のキャスティング。フロリダのビーチで見かけたというサッシャ・レインを映画の主演にと口説き落とし、スカウトされた当人もまさかカンヌ映画祭の常連監督とは知らずにポルノ映画かと思ったと発言しているくらい、誰も予想してなかったド素人からの起用だった。しかし映画を観れば、サッシャ・レインのよくもこんな生き物がいたものだと驚くほかない野生馬のような佇まいと、旅の仲間である若者たちのどうしようもないバカばっかなのになんかピュアで眩しいという絶妙なさじ加減こそが、この長い映画のストーリーよりも大事な根幹の部分なんだと思い知る。奇跡的な出会いが積み重なって生まれたとしかいいようがない映画だが、撮影の名手ロビー・ライアンや全編を彩るポップソングの数々などがしっかり下支えしていて、アンドレア・アーノルドの監督術にも心から感心する。傑作。

村山章