Winnyのレビュー・感想・評価
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天才プログラマーの罪と罰
評判良く拝見。とても良かったですね。
骨太の筋だけで面白く、刑事もの、法廷ものとして追いかけてゆく。
地味なりに良質な映画力が抜群で、緩急ある流れに身を任せて、ずっと観ていられますね。
画づくりも悪くなく、音楽も過不足なく(これがなかなかできない)
邪魔もせず、さり気なく場面や筋を補説する役割に留めています。本来、劇伴てのはそういうもののはず。
更に、俳優の演技が良かったですね。やはり小劇場出身で長らく商業にも身を置けるレベルの俳優の演技力は素晴らしい。
特筆すべきは、渡辺いっけいと吹越満ですね。
非常によく抑制された、それでいて芯たるエネルギーに満ちあふれている。
エッジの効いた演技が段違いですね。
比べて失礼ながら、評価の高い吉岡氏も
映像の世界の演技でしかないと気づかされるレベルですね。
(しかしまぁ、あの満男が老け役とは、、歳の経つのは(以下略))
しかし、あれだけ紡がれた物語も
俳優が血肉通わせた登場人物たちのドラマも
物語は最終盤で現実に収束してしまうため、ノンフィクションものの宿命で
楽しければ楽しいほど
盛り上がれば盛り上がるほど
この時間よ終わってくれるな、夢よ醒めてくれるなの
あの物語構造は、いろいろな作品でお目に掛かりますが
この作品においても、非常によく機能していて、
結末を知っていればいるほど、その落差に涙してしまいます。
ジェットコースターのようなものですね。よく出来ています。
さて、タイトル回収ですが
私はプログラマー御本人に直接お逢いしたことはないため、物語上の推測ですが
果たして、彼は本当に、純粋に山があったから登ったという種の
研究者タイプの人物としてカテゴライズしてしまって良いのでしょうかね?
本当に、無邪気で純粋な探求者でしかないのか?
零戦を作った堀越二郎のように
原爆を作ったオッペンハイマーのように
ロケットを作ったフォン・ブラウンのように
己の生み出した技術とその結果を恨み、後悔したことはなかったのでしょうか。
この映画のテーマそのものでもありますが
果たして、本当に技術者に罪はないのでしょうかね?
社会通念上の、刑事罰に処せられる類の罪はなかったとしても
私にはなにか、違う「罪」(とその罰)のようなものがあるような気がしてならないのですね。
あれだけ頭の良い人が、果たして、本当に著作権侵害に使われないと
使われかねないという可能性を、少しでも考えなかったものでしょうかね?
使い方はあくまで使う本人の問題だと。
愚かな大衆の手に余る力をもたらしてしまった、その功罪の罪の方は
本人が意図しなかったのならば、その手は決して汚れてはいないのでしょうか?
匿名で技術を開発できれば、本当に自由は、安全は守られると?
裁判で語られるとおり、彼自身に、「罪」は本当にないのか?
私には、彼が心許した弁護士にだけ、飛行機飛ぶあの夕陽に
ほんの少しだけ滲ませた、自分の罪に対する意識の欠片を見た気がします。
私の気の所為かもしれませんが。
気の所為であって欲しいのですが。
日本版「リチャード・ジュエル」
表題通り、C.イーストウッド監督の「リチャード・ジュエル」を思い出した。
捜査で得る情報より予め書いたプロットを優先する警察、職業意識や探求心から行ったことで標的にされたにも関わらず、市民として捜査に協力しようとする善意を利用される被疑者、そして同業の後進が委縮しないようにと最後まで戦う意思を貫いた登場人物達。
潔白を勝ち取った後の主人公に残された時間の少なさまで重なるとは…。
「リチャード・ジュエル」は家族の訴えやプロ意識に目覚めた記者が主人公に味方することで世間の目が変わり、ドラマチックに潮目が変わったが、本作では弁護団と主人公のチームワークや法廷での駆け引きに重点が置かれ、ある意味シビアな現実が次々と出て来る分、成り行きにハラハラさせられた。
最後に金子氏本人の映像が流れるのだが、それを観て、彼を演じた東出昌大氏の憑依ぶりに痺れた。
こんな裁判をぐちぐちやっている間に
いつもの映画館で
大型連休真っ只中で結構客が入っていた
事前予約で席を確保していてよかった
東出がコツコツ頑張っていてうれしい
三浦貴大のリアル近眼演技もいい
素通しメガネは興覚めなのだ
吹越は儲け役だった
愛媛県警の不祥事告発の話と交錯していて
吉岡秀隆が目ヂカラ演技で頑張っていたが
何だか必然性を掴み損ねた
証拠が上がるのにWinnyが一役買ったということか
匿名性を発揮したとかそういうことか
なんだかウイルスのせいで漏れたのと
一緒くたになっていた感があって
そこははっきり説明した方がいいかと
こんな裁判をぐちぐちやっている間に
すでにYOUTUBEという新しい技術が出てきたという
ブラックユーモア
なんかその後の日本の技術力の凋落とリンクしているような
ま そういうメッセージなんだろうな
このタイミングでの放映はまさにベストタイミング。
感動の名作だった。もっと多くの映画館で放映して欲しい。
ソーシャルネットワークみたいな、インテリ系の映画と思ってたけど、どちらかというと法廷ドラマでした。まさか感動するとは。
金子勇のような天才が日本で羽ばたければもしかしたら、GAFAのようなIT企業が産まれていたかもしれない。
タイミングや日本の土壌も悪かったし、世間の理解も追いついていなかった。
そして今、ChatGPTが流行り政府も活用すると明言している。これに対し欧州各国やアメリカの大手ITは警戒感を示している。そのタイミングでこの映画放映はすごいタイミングだと思った。
金子勇が訴えたことを真に理解できるひとが増えれば、今後の日本も捨てたもんじゃないです。
罪の道具作りに罪はあるか
これは観て良かった
地味だけれど、丁寧に作られた佳作
面白かったー!
前情報全く無しでこの映画を観ました。冒頭から東出昌大演じる主人公金子勇さんの言動に違和感しかない状態で観てました。東京大学の先生がこんなに何も知らない筈がない、この脚本ひどすぎるとか思いながらに観てました。
が、しかし、最後になってこの映画が実話であることに気付きました。更にエンドロールでご本人登場で、あっ!この人知ってる、こんな裁判確かにあったわと、自分がこの裁判を知っていたことを思い出しました。
当時理系の息子にWinnyって知ってる?凄いの?と聞いたことまで思い出しました。
あの頃テレビで見た実際の金子勇さんは東出昌大さんが演じている程気持ち悪くなかったと思う。オタクっぽさはあるものの気持ち悪い人ではなかった。東出さんの演技はわざとらし過ぎるような…?笑
(ネタバレあります。あらすじ+感想)
開発中のWinnyという画期的なソフトの試験版が2チャンネルに公開され、それを悪用した犯罪が起きてその犯人2人が捕まる所から映画は始まる。
警察はWinnyの開発者の金子勇の所にも行き金子は取調べを受ける。
困るんですよねぇ。こういうものをばらまいて貰っては。貴方が犯罪を起こそうとしたんではないのですか?
色んな質問を受け帰らして貰えない中警察からある提案がなされる。
しょうがない、誓約書書いて貰えますか?もうこんな事はしませんってね。そうしたらすぐ帰って貰えますよ。
刑事は見本を持ってきてこの通りに書いてサインして貰えますかー!
書類の題名は誓約書ではなく申述書になっていて中身も自分が犯罪を助長するためにソフトを作りばら蒔きましたという内容になっているにも関わらず書き写してサインしてしまう。冤罪事件の始まりだ。
ここまで観てああこの映画は冤罪事件がどう起こっていって無罪を勝ち取るまでを描く映画なんだなと思ったがそんな単純な話では無かった。
弁護を受け持った壇弁護士の説明が分かりやすい。
ナイフで犯人が被害者を刺したという事件があって、犯人が悪いのは明らかなんだけど、じゃあこのナイフを作った人も有罪なのか?という問題だ。
世の中の為になると思ってソフトを作った金子。色んな人に試して貰ってバグ等の改良に努めようと2チャンネルにアップしたが、そのバグを悪用した犯罪が起こってしまう。
悪いのは悪用した人で作った人ではない筈。もしこれが罪になるとしたら、日本の科学者は研究できなくなる。それは日本にとって大きな損失だ。世界を変えることが出来るような天才なのに…。
テレビで裁判の報道を見ていた頃、ただの免罪事件だと思ってそこまで深く理解できていなかった。映画は色々と考えさせる作りになっている。
20代の若い監督であるが、言いたいこと伝えたいことがはっきりある監督だと思う。免罪事件を普通に取り上げただけでは弱いと考えて全く別の場所で起こった事件を絡めて描こうと思ったと言う。
その事件もWinny事件を調べている内にWinnyに関連があって見つけたものだったとの監督の映画後のトークショーでのお話が興味深かった。若い監督であるが非常に深く考えて色んな観点から自分の描きたいこと伝えたいことが伝わるように映画を作っておられるのに感銘を受けた。今後注目していきたい監督さんである。
映画後のトークショーが実に面白かった。
吹越満さん演じる弁護士はヘビースモーカーで火のついた煙草を持ったままあちこち指して話すのだがその演技が凄かった、凄いなあと見入ってしまったと東出。
どういうことかと言うと正面1台、左右2台のカメラで撮影しそれを何回か撮影して後で編集して繋ぐのだが、いい加減に手を動かしたのでは絶対に上手く繋がらない、不自然になってしまう。そこを吹越さんは計算して演技されてて、凄いなあと感じたと。もう僕じーっと見入ってしまいましたー!と。
煙草には火が着いていて手を動かす度に煙がすーっと後を引く。あれを後で繋いだ時不自然にならないような演技って凄すぎる。そんなことなど今まで考えたことも無かったけれどこれから見方が変わりそう。
日本の国益に明らかに反するような警察と検察の、天才プログラマーに対する無知と横暴に対する静かな怒りが伝わってきた
松本優作 監督による2023年製作(127分)の日本映画。
配給:KDDI、ナカチカ。
新しい画期的なものを創る才能を潰しにかかるという日本の大きな問題を真正面から描いた、とても硬派な骨のある映画と感じた。この日本の言わば悲劇を描いた映画を産み出した中心人物、松本優作(1992年生まれ、脚本と監督) 及び岸建太朗(1973年生まれで撮影と脚本を担当)両氏に、拍手を送りたいと思った。
Windy を産み出した天才プログラマー金子勇の、超理系的で純粋にプログラミングを楽しんでいる人物像が実にリアルで、素晴らしかった。その人物像を創った脚本と、その人物をとても魅力的に見せた東出昌大の渾身の演技に魅せられてしまった。このヒトやっぱり、凄い俳優だ。
裁判で金子を弁護した壇俊光弁護士を演じた三浦貴大も、弁護士としての粘り強さに金子への尊敬と愛情が滲み出る演技で、とても良かった。大スターを両親に持ちながら、朴訥さに溢れて良い俳優だなとも感じた。
法廷描写はとても難しいと思うのだが、見事な闘いのドラマとなっていた。特に、吹越満演ずるスター弁護士が警察官に嘘を話す様に仕掛けるところの組み立ては鮮やかで、その飲み屋での観客向け?の解説も含めて、お見事!と感心させられた。
愛媛警察における裏金問題を告発した仙波敏郎・元巡査部長(吉岡秀隆)の実名エピソードにもビックリ。県警は否定したが、Winnyで証拠ファイルが出てきてしまうという展開が、事実らしいが皮肉な展開。金子さんの検挙は、こういった内部告発に対する恐怖からの組織的な対応ということなのか?いずれにせよ、事件をでっち上げての裏金作りに組織をあげて取り組んでいたという事実、告白者を抹殺しようと動く正義遂行するはずの組織に恐怖を覚えた。
最後、本人の映像も含めて、この裁判の後に控訴し、最高裁で勝利を勝ち取ったが、2年後心筋梗塞で亡くなった映像もみせられる。日本が産んだ貴重な天才、その彼から奪い取った貴重な時間(起訴2004年で、最高裁判決が2011年)、長期的な国益に明らかに反するような自己目的化した警察と検察の無知と横暴、それらに対する静かな怒りがこちらにも十分に伝わってきて、涙が流れた。凄いパワーを秘めた画期的な映画であった。
監督松本優作、原案渡辺淳基、脚本松本優作、 岸建太朗。
企画古橋智史、プロデューサー伊藤主税 、藤井宏二、 金山、撮影岸建太朗、照明玉川直人、録音伊藤裕規、衣装川本誠子、梶原夏帆、ヘアメイク板垣実和、装飾有村謙志、編集田巻源太、音楽プロデューサー、田井モトヨシ、音楽Teje 田井千里、音響効果岡瀬晶彦、助監督杉岡知哉、キャスティング伊藤尚哉、ラインプロデューサー中島裕作、制作担当今井尚道 、原田博志。
出演
東出昌大金子勇、三浦貴大壇俊光、皆川猿時、和田正人、木竜麻生、池田大、金子大地、
阿部進之介、渋川清彦、田村泰二郎、渡辺いっけい北村文哉、吉田羊、吹越満秋田真志、吉岡秀隆仙波敏郎。
そもそも 僕は 知的財産権法 に疑問を持っている。
Winny を使った事があるし、この問題には浅からぬ興味を持っていたので、映画作品として、どう扱われるか、たいへん興味がありました。
本作は、時系列的にも よく整理されており、ドキュメンタリー以上にリアル感がある、優れた映画にしあがっていました。
作品としてのまとまりも よく
カメラワークも 照明も音響も上手さが光っていました。
日本では、N88ベーシック 、TORON、Winny という 「PCとは何か?」「インターネットはどうあるべきか?」 と言う 社会の根幹さえも変えかねない 新技術が多々産み出されたが、それらはみな 日本国自身の手で葬り去られ、代わりにGAFAが世界の富を集約した。そして新たに日本から産まれた新技術は 仮想通貨 だ。今回は潰されずに、世界の富を集約するためのtrapとして、活躍中だが、その行末を外野から見守りたいと思う。
2010年に映画「ソーシャル・ネットワーク」と言う フェイスブック創設者についての映画があったが、見比べると、
何かを感じる筈だ。
なんのための技術なのか
映画館にて鑑賞しました。
WinnyやP2Pの大まかな仕組み、開発者が逮捕されたこと、最終的には無罪となったこと、そしてそこから間もなく亡くなられた、ということは本作を見る前から知っていました。
ストーリーや展開としては現実を基にしているということから、とても大きなスペクタクルがあるというわけでもないです。可能であれば、最高裁で無罪となる過程やその瞬間を見たかった気もしますが、そうなるととても長時間になるかストーリーの密度が下がりそうな気もするのでちょうど良かったのかもしれません。
自分が一番心動いたシーンは、Winnyの脆弱性から情報漏出が相次ぐ中、金子さんが修正したいにも関わらず、修正できない状況に苦悩しているというシーンです。金子さんの「世の中に良いことをしたい」という純粋な気持ちを持ちながら葛藤している様は胸に刺さりました。
鑑賞直後もそうですが、このレビューを書いている今でも映画自体への感想というよりも、Winnyに関連する社会の動きやインターネットに与えた影響について考えてしまいます。そう考えると、自分にとっては様々なことを考えさせてくれる映画だったんだろうと思います。当時のネットの空気感を知っている人にとっては、懐かしさを感じつつも考えさせられる映画だと思います。
実話の重み。
素晴らしい。
ノンフィクションとのことだが…
失われた30年の、負の遺産
題材も俳優もグッド! 心情の機微がわかるような撮り方も良かった。 ...
子ども向けの六法全書などを、成人になる前に一読した方が身のためだと思った。
この事件のことは、うっすらと記憶に残っている。
最初から大変興味深く、物語に入っていくことができた。
壇弁護士の、ナイフで人を刺した時、刺した人は逮捕されるが、ナイフを作った人
が罰されることはないというたとえ話は、Winny事件の核心を表現している。
道具は、あくまでも無機質で、それを悪用する人が罰されるべきなのだ。
小難しい法律も、こうして話してもらえると分かりやすい。
弁護士と検察、裁判官は、いずれも法律の専門家。
けれど、立場が違えば、人が違えば、行動は変わり、正義も変わる。
もし、この裁判が裁判員制度で私が裁判員なら、金子氏の陳述を聴いて無罪に一票を投じるだろう。
金子氏は、プログラミングが大好きな技術者で、社会テロなんて考えてもいないと感じるからだ。
けれど、裁判官は感覚や感情では動かない、動けない。
金子氏たちが無罪を勝ち取るためには、彼らの正義に訴えかけなければいけないのだ、難しいな。
権力側の政府、警察、検察、メディアが、一個人を社会的に抹殺することは簡単である。
学校もそうだけど、個人の自由意志より組織の論理を優先するようになると、ゆがんだ方向に行く。
一度転がしだすと、止めることは難しくなるので、だからこそ、厳重に組織自身が、そのあり方を厳しく律しなければならないと改めて感じた。
金子勇氏のご冥福を心からお祈り申し上げます。
おもろい
警察が悪というようなことをこれでもかというくらい盛り込まれていて、この点に違和感を覚えてしまい、この映画は茶番だな。警察そこまで悪じゃないよ。テレビの見過ぎだよ。
と思いつつ見ていたがここまで一方的に悪く描くと逆に潔く見え、むしろ爽快でした。
真相はどうなんでしょうか。
映画は主に、日常かつ公判の準備パート、公判パート、愛媛パートが次々に展開して進んでいくのですが、パート毎に新たな進展があるので、物語にのめり込んでしまいます。
終わり方が若干盛り上がりに欠ける感じがしました。
あえて、無罪を勝ち取ったところで終わらせなかったのだと思いますが、映画的にはシュンッと終わってしまった感じです。
エンドロールの金子さんのシーンは人柄が出ていてほっこりしてしまいました。
想定を超えてくる面白さだったので見てよかった。
カッコいい
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