Winnyのレビュー・感想・評価
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事実に基づく本格的社会派映画
邦画のレベル低下が著しい中、ようやく見応えのある映画に出会った気がする。
裁判を扱う映画やドラマは数多くあれど、ほぼ全てが検察を正義の味方として描く短絡的なものばかりで辟易していたが、この映画は事実に基づくだけあって、忖度なく日本の刑事司法の暗黒を伝える、邦画には珍しい良作だった。
これから鑑賞される方は、これが日本の刑事司法の実情であることをしっかりと認識してほしい。
残念ながらいまや邦画はスケールの点ではハリウッドにも韓国にも太刀打ちできない。
しかしこの映画や、「新聞記者」などの忖度なしの社会派映画を製作することが、今後の邦画の活路を見出す一つの方法のような気がした。
権力者が平然と放送に介入するこの国では、TVでこの実在の事件をドラマ化することは不可能だろうし…。
この事件は絵に描いたような不当逮捕で本当に酷いものだったが、金子勇氏を逮捕・起訴した警察・検察は、謝罪一つしていないという事実も付記しておきたい。
何のために生まれ何を為したか
ファイル共有ソフト
2000年代初頭のネットは
まだISDNの64kくらいが主流のところを
ADSLで8Mが爆速と言われた時期
クライアントサーバーへの保存と
アクセスを介さずユーザーのPC間で
直接データをやり取りすることで
普及したフリーウェアソフト
WinMXやNapster等が有名であったが
結果的にゲームや音楽ファイルなどの
データが違法にやり取りされる下地を生み
社会問題化のきっかけを生んだ側面が
あった
そんな時期に2chのユーザーの意見を
取り入れながらファイル共有ソフト
「Winny」を開発した「47氏」
金子勇氏のあまりに急な逮捕から
無罪を勝ち取るまでの顛末を
まとめた今作
どうだったか
世代的にリアルタイムで
この事件に触れていた事もあり
思い出すように感じ取れるシーンも
ありましたが
同時期に発生した警察の裏金事件
なども重ねながら世の中のために
良かれと思って生み出された道具に
果たして罪はあるのか
公平性をかなぐり捨て機能不全し
オワコンと化したマスコミが
醜態を連日さらし続ける令和の世に
問いかけるもの
大きかったと思います
前述の通り2chの住民と
意見を交わしながらWinnyを独力で
作り上げた「47氏」こと金子勇氏
世間はそれによる違法コピーの横行
によって逮捕者も出だしたところで
彼の元にも警察が訪れます
そして取り調べの中で
コレを書いてくれたら帰す
といって誓約書の例文を渡し
金子氏は「著作権侵害を蔓延
させる事を目的とした」という文に
違和感を感じつつもうっかり
その通りに書いてしまいます
その後警察は家に帰すと
言いながら結局警察を原告とした
著作権侵害幇助という罪状で
刑事裁判にかけられてしまいます
そんな報道がなされた頃
それを見ていた北尻法律相談事務所の
壇俊光弁護士は
「ナイフで人を殺した事件があって
ナイフの製造者が罪を問われるわけがない」
「開発者が捕まったのなら
弁護します」と言っていたら
その通りになったので
弁護を引き受けることになります
金子氏の逮捕は不当であり
技術者の意欲を削ぐ可能性を
はらんでいるからです
実際アメリカではNapster等同種の
ソフトウェアにまつわる訴訟において
ソフト開発者の罪は問われない
と言う判例が下っています
壇が金子に接見してみると
やや変わったコミュニケーションで
人の言う事を鵜呑みにしてしまう
ところがあり裁判で自分を不利にする
事をも意識が無い事に頭を抱えつつ
2chを通じて集まった裁判費用のカンパ
を見せあなたを支持してくれる人が
これだけいるんだから頑張りましょう
という意図を伝えます
すると金子は涙し壇はこの人は
決して悪い人じゃないという確信を
持ちます
丁度その頃場面は変わって愛媛県警
内部で行われていた裏金作りに
若い警官が加担させられているのを
目の当たりにして我慢出来なく
なっている仙波敏郎巡査の場面も
出て来ます
この事件も同時期に実在した
ものです
とはいえ壇弁護士は
苦しい戦いを覚悟しました
日本における刑事裁判は
99.9%有罪になるとよく
言われます
ですのでそうした条件でも
幾度と無罪を勝ち取ったことがある
秋田真志弁護士に主任弁護を
依頼することにしました
委細を聞いた秋田は
・警察が原告であること
・逮捕が早急であったこと
などに疑問を持ち
法廷においての質問にも
答えることがありませんでした
著作権侵害であれば著作権保有者が
まず訴えるべきだし何故?
と思っているところへ
京都府警の情報がWinnyを通じた
ウイルス感染で流出したという
ニュースも流れます
つまり府警のPCでWinnyを
使った署員がいたこと(不祥事)
を隠蔽するために金子の逮捕を
急いだという勘繰りを弁護団は
するわけです
壇がそのあたりを金子に尋ねると
Winnyは脆弱性が弱点で
ウイルスに弱いことや
(実際キン○マウイルスなんて
呼ばれるヤバいのがあった)
使われながら改善を進めていく
途中だったこと
何よりWinnyを作った目的は
匿名のまま著作物を広く公開
出来ることであったこと
などの答えが返ってきます
壇は金子がピュアなプログラマーで
あることをただでさえ裁判官や
世間にはわかりにくい
コンピューターやプログラムの話で
どう伝えるかに頭を悩ませることに
なります
その頃先ほどの愛媛県警の仙波氏は
地元マスコミに公表を訴えるものの
取り合ってもらえない事でついに
弁護士を通じて世間に公表する
決意をします
弁護士からは身の安全を第一に
ホテルを使うなど要請されます
ここを映画では
Winnyが目指したものと
対比しているのでしょう
裁判は
金子が「自発的に書いた」
と警察側が言う申述書の
蔓延を「満えん」と誤記してある
部分から秋田弁護士は
この文章は普段使っていない
言葉を用いた→書かされた
ものであるという機転もあり
捜査情報流出の不祥事を抑えるため
京都府警が手っ取り早く逮捕状を取り
申述書を無理に書かせた事実を
ほぼ暴く事に成功します
しかし金子氏の著作権侵害の意図が
無かったことまでは
証明し切れていません
そこで檀氏は法廷で金子氏が
他に作っていた飛行機や
人形が格闘するプログラムなどを披露
ある意味彼がプログラムすることにしか
興味が無い事を裁判官に訴えます
またその頃ついに愛媛県警の裏金を
公表した仙波氏
県警は事実を否認するものの
裏金の証拠となる架空の捜査費用や
協力費の領収書がWinnyを通じて流出
それを見た新聞社が報道し
事態は急転していました
人知れずWinnyがその本来の
目的を果たしていたという
印象的な描写です
(事実として実際関連したのかは
わかりませんが)
そして判決の時
結局金子氏は一審では有罪になって
しまいましたが最高裁まで争い
7年後に金子氏は無罪を勝ち取ります
しかし…その半年後に金子氏は
急性心筋梗塞でこの世を去り
自由にプログラミングを続けられたのは
ほんのわずかだった事になります
それでも遺族の姉は弟は檀氏にいつも
感謝していたと遺品の眼鏡を
檀氏に託すのでした
2003年時点で
Winnyを作ったことが
早かったか遅かったか
今ではYouTubeやSNSなど
情報を個人が広く拡散するツールが
あふれる時代にWinnyが普及する事は
無かったでしょう
早く生まれた技術が批判のやり玉に挙がる
これはよくあることです
個人的にはWinnyに崇高な設計思想が
あったとして金子氏が意見を取り入れた
という2chの住民の意図は本当に
違法ファイル拡散でなかったと
言い切れるのか?
と思うところもあります
ただ普及のし始めってやっぱりそんなもの
(YouTubeだって初期は
TV録画の無断公開ばかりでした)
公開を経て順次改良改善を加えていく
そうやって社会に則したものに
なっていくものです
Winnyは金子氏の裁判によって
その機会を失ってしまった
不幸なソフトと言えるかもしれません
正直ちょっぴり
映画で伝えたいことの焦点が
ぼやけてわかりにくい印象も
ありますが
色々考えさせられるには十分な
作品だったと思います
改めて東出昌大は良い俳優だなと
感心しました
熱い想いが
早すぎた素晴らしいシステム
今ではあたりまえのシステムなのですが、
余りにも早すぎたパソコン用システムだったので悪用、流用されてしまってこのような現象になってしまったため、有能プログラマーが巻き込まれてしまった事件。
彼の製作したプログラムの一部は現在も生き続けています。
映画のストーリーですが、Winnyを主軸として製作者、それにかかわった人の物語、
Winnyを使用した者が善にも悪にもなるという事を裁判、出来事で紡いでいき、その終焉までを描いていく。
プログラマーとその裁判に関わった弁護士、周りの人たちの物語を紡いだ話。
役者さんたちがかなりリアルに演じていらっしゃるので劇場で見ている時間を忘れてしまいます。
エンディング始まっても席をたたないように、ラストにリアルがまっています。
是非とも劇場にて鑑賞してください。
国家権力は怖いね
法治国家における「正義」とは何か
法治国家における有罪無罪の判定基準は、社会における一般的な善悪基準と重なることもあるだろうが、決してイコールではない。前者は、後者よりもはるかに厳密なものでなければならないが、何せ運用するのは人なので、いつでも悪しき運用がなされる可能性がある。拡大解釈で有罪にされるとき、法は法としての用をなさなくなる。
しかし、人は、雰囲気に流され、感情に支配されるので、厳密な法解釈と運用は至難の業。だから、そうした恣意的な解釈や運用(しかもその動機は、しばしば「悪」ではなく、むしろ「善」への指向)をどこまで抑止できるシステムになっているかが問われる。
金子勇さんが最終的に高裁と最高裁で無罪を勝ち取ったことは、日本の法制度が「最終的には」真っ当に機能したことの証左と言えるが、一審で有罪になってしまったことは日本の法制度の瑕疵を示している…ということを訴えた作品。
見る価値のある映画だし、作る価値のある映画だったと思う。主演の東出さんがまったくタイプが違うであろう金子さんを見事に演じていて、その演技力には脱帽。
天才の悲劇
この映画を見終わってまず頭によぎったのは、ノーベル賞の事だった。ダイナマイトを発明したアルフレッド・ノーベルは、wikiで調べると、「ノーベルにとってダイナマイトが戦争で使われることは想定内であり、むしろ破壊力の大きな兵器は戦争抑止力として働くと予想していたが、実際には高性能爆薬の普及により戦争の激化を招いたことで世間的には「死の商人」というイメージが広まっていた。これらのことからノーベルは死後の評価を気にするようになったという。」と、ノーベル賞が創設された経緯が書かれている。この映画の金子勇氏もまさしくそうだ。著作権侵害を幇助するつもりなど、さらさらなく、世の中に貢献するために開発したwinnyが、一部の人間たちによって、悪利用され、金子氏自身も、悪事の隠蔽工作のために抹殺されたであろう事が、映画の中では暗示される。普通のプログラマーが3年かかるプログラミングを短時間でやってのける彼は、天才に他ならない。しかし多くの天才がそうであったように、金と欲にまみれた俗物の餌食にあい、不幸に見舞われるのだ。彼の一番の不幸は、不当な逮捕と裁判により、5年以上の時間を奪われたことだ。映画を見ると分かるが、プログラミングこそが彼の自己表現であり、それを禁じられた年月は、凡人からしてみたら、人間の五感を奪われるのと同じであり、凡人が何十年もかけて開発する偉業を成し遂げる機会を奪ったことになる。まさしく天才の悲劇である。
無実を証明するために奔走する弁護士の前で、「これからの開発者のためになるなら、どうぞ僕を有罪にして下さい」と言い放ってしまう金子氏は、その純粋さ故に、いわゆる一般社会での生活に不自由を感じていたのではないか?
今巷では盛んに多様性云々と言われているが、表面的な言葉だけでなく、この世の中にはおそらく非凡な才能を持ってはいるが、一般社会に適応しにくい人たちがいるのではないか?そういう人たちを早く見つけ出し、この世の中の悪感情や災難から守ってあげる、この映画の弁護士のような人間が本当に必要なんだなとつくづく思った。
事件を知るきっかけとして
実はこの事件、全く知らなかったため興味深く鑑賞しました。
確かにナイフや包丁を作る職人や工場、会社が「使い方を間違えれば危ないものだから作るな」となっては必要な道具まで無くなるわけだし。
この主人公の実在の方が無罪のあとどうなったかまでは知らなかったので、最後に当時のニュース映像、インタビュー映像も流してもらえて良かったです。
東出さんの演技は、御本人映像があったのでなかなかよく似せていて、コンフィデンスマンのような軽妙な感じも少しありつつ、開発以外の世情には疎い主人公をうまく表現していたと思います。
分かりやすく映画にしてもらったので、こういう事件があったと知ることが出来て良かったです。
別事件と思えた警察内部の捜査費ねつ造事件とのリンクもあり、内部告発をどうすればいいのか、とかも考えさせられる内容でした。
タイトルなし(ネタバレ)
Winnyよりも京都府警の汚職方が気になってしまった笑
金子勇が著作権侵害幇助の罪で捕まり一旦有罪となるが、最終的に逆転無罪となった。彼が捕まらなかったら、、みたいな話があるが結局どうかは誰にもわからない。
開発者の意図とは異なり、Winnyは悪用される。使ったことが無いから分からないけど、違法アップロードされた動画などを鑑賞可能なのだと思う。便利な一方でウィルス感染してしまうと個人情報や機密情報が流出し拡散する。度々問題になっている。
東出昌大が金子勇というか、エンジニア特有のキモさを演じていた。彼は役者なんだなと改めて感心した。弁護士が誰だか分からなくて無名俳優が抜擢されたのかと思っていたら三浦貴大だった。
金子は逮捕されると、2ちゃんで支援者が沢山現れて金子勇に支援金が集まる。しかし裁判では負けてしまった。誓約書など警察や検察が用意した書類にサインしてしまう金子も悪いのだが。
金子はWinnyの発想の原点にFreenetというソフトウェアを上げた。Freenetがどういったものかよく分からなかったが、世の中のニュースには情報提供者がいて、誰かがその人を知っている。Freenetならば完全に匿名化出来るようだ。
映画の中では京都府警の汚職の話が並行して進む。一人のベテランが汚職を告発する。彼は告発したことで危険にさらされることになってしまった。匿名であれば、早期に汚職も防げていたであろうか?
二本立てで見たかった
古く浅い。
Fly Away
10日公開は個人的に魅力的な作品が少ない週…。消去法で今作を選びましたが、これがまぁ傑作でした。マジで舐めててすいませんでしたとしか言いようがないです。
パソコンで立ち上げたサイトが悪用されて、そのサイトを作った開発者が不当逮捕されてしまい、その開発者の無罪を証明するために戦う弁護士と開発者との物語になっています。
日本の警察描写は基本的に間抜けなことが多いんですが、今作はとにかく悪どい奴らが多いので、腑抜けに感じるシーンはあまりありませんでした。とにかく権力で抑えつようとする感じ、裏工作を仕掛けて事を収めようとする感じ、年代は違えど悪い警察はとことん悪い、それを体現するメリハリの付け方はとても良かったと思います。
役者陣の入り込みも素晴らしく、東出くんのひょうきんさとダークさが絡み合った濃厚な演技、三浦さんの真摯に事件と向き合う弁護士の鏡の様な生き様の演技、渡辺いっけいさんと吹越満さんの裁判シーンでのバチバチの演技、吉岡さんの警察の裏を暴露する強い姿勢を見せる演技、邦画の中でもトップクラスの演技合戦が観れて最高でした。最初から最後まで隙のないものになっており、エンドロール後に流れるこの作品のモデルにもなった金子勇さんの映像を見ると、東出くんが完全に重なっており、憑依力がエグいと思いました。
リアルな裁判シーンでこんなにもカッコいいと思えたのは初めてで、僅かな隙を見つけてボロを出させて、一気に証拠をたたみかけるという頭脳戦で圧倒する面白さを邦画で体験できたことがとても嬉しかったです。これからの邦画の裁判シーンはこの作品と比較されていく気がします。
淡々と進むドラマに緊張感が直走り、その中で解決へのピースが埋まっていく瞬間、最高に気持ちいいです。ぜひ劇場へ。
鑑賞日 3/10
鑑賞時間 12:10〜14:30
座席 F-14
正義ってなんだ?
Youtubeが普及する前に一人の天才プログラマーが開発した「Winny」の事件を映画化したノンフィクションリーガル作品。弁護士・壇さんと無邪気な天才プログラマー金子さんが「著作権侵害」をめぐる裁判を繰り広げる傍ら、愛媛県警の巡査部長・仙波さんが県警内で裏金作りが行われているのを告発する。「著作権侵害」と「裏金作り」一見関係なさそうに見えるが「Winny」をきっかけに国家の闇を暴く、という濃ゆい内容で脳みそが満腹になりました。
一言でいえば暴露映画だと認識しました。警察・検察・裁判所の面子を潰す場面が多く、「公権力の信憑性」を今一度見直す良い映画でした。
また、この映画を今の10代に観てほしい気持ちになりました。プログラマーの苦悩や弁護士の仕事がこの映画で細かく描かれているので、プログラマーや弁護士の仕事に興味ある人は必見だと感じました。
おふざけ一切ないですが、無駄な場面がなく充実した時間でした。
20年前も今も日本の組織は何も変わっていない
《2ちゃんねる》や《Winny》が何かを知らなくても、社会人であれば何となく自分との共通項を見出せる作品。
かく言う自分も、Winnyのことはほとんど知りません。
ただ、上司からの指示が社会通念上あり得ないものだったり、実際にことが起きた時に指示役の上司が責任を取らなかったという経験。社長クラスでない限りは、ほぼ全ての社会人なら(公的機関に勤めている人も含め)何かしら経験していると思います。
自分も覚えがあります。
20年前の事件を扱っている作品ですが、日本の組織の仕組みとしては、今も昔も何も変わっていないんじゃないかと思いました。
これは別に警察組織という場に限らず、一般企業にも当てはまりますが。
映画自体の出来は素晴らしかったですが、社会人的には観終わった後、すこぶる嫌な気分になりました。
まあ、でも何にしろアレですね。
自分と共通言語で話せる仲間の存在(今作では壇弁護士)は、精神的にも社会的にも大きな存在なんだなと。
もっと広い視野で描いてほしかった
かつて話題となったソフト「Winny」を題材としているところに興味をひかれて鑑賞してきました。他にも、作中にソフト「Napster」や雑誌「ネットランナー」等が登場していて懐かしかったです。思えば、この頃から情報漏洩や著作権といったものが、自分にとって身近になってきたように感じます。
ストーリーは、ファイル共有ソフト「Winny」による著作権侵害が社会問題となる中、開発者である金子勇を著作権法違反幇助の罪に問おうとする警察と、無罪を主張する弁護士・壇俊光たちとの裁判での攻防を描くというもの。実話をもとにしているため、ドラマチックな見せ場はないですが、当時の記憶がある方には興味深く鑑賞できるのではないかと思います。
Winny開発者の刑事責任の有無を問うという単純なストーリーですが、Winnyの使用経験のない方には少々イメージしにくいかもしれません。とはいえ、その仕組みや違法性について単純化して噛み砕いて描いているので、ネットワークの基礎知識がなくても内容は理解できると思います。また、裁判での争点や駆け引きもなかなかおもしろかったです。
これと同時進行で愛媛県警内部の裏金問題が、メインストーリーとは絡まないながらも、間接的にWinnyの援護射撃をするかのような形で描かれます。全編通して、警察の悪意ある捜査、隠蔽体質、組織の腐敗などを糾弾するスタンスを感じます。開発者の金子勇氏が優れた技術者であり、彼に犯罪目的は微塵もなかった、そんな彼の名誉を守るために、本作は作られたのではないかと思います。もちろんこれはこれでおもしろいのですが、著作権保護の立場からWinnyの存在を苦々しく思っていた人には、作為的な描き方と受け取られるかもしれません。
エンドロールで、金子氏が「誰かのせいにすればいいというわけではない」とコメントしたVTRが流れるのですが、まさにそのとおりだと感じました。とかくこの国は何かが起こると誰かに責任を押し付けて叩いて、ことを収めようとしているように感じます。しかし、警察が全て悪いと言わんばかりの本作も同じではないでしょうか。なぜ警察が開発者の責任にあそこまでこだわり、あのような捜査や尋問をしたのか、その真意はどこにあったのか、軽い気持ちでWinnyを悪用した人間がどれほど多く、著作権者にどれほどの被害や迷惑があったのか、コンテンツクリエーターたちはどう感じていたのか等、愛媛県警の件よりこっちをもっと広く描いてほしかったです。そして、それぞれの立場や思いを感じ取らせ、観客が自身の行動を振り返るような描き方にしてもよかったのではないかと思いました。警察VS弁護団という小さな構図にしてしまうのは、ちょっともったいなく感じました。
キャストは、金子役に東出昌大さん、壇役に三浦貴大さんで、どちらも上手くハマっていました。脇を固めるのは、皆川猿時さん,吹越満さん、吉岡秀隆さん、渡辺いっけいさんらで、ベテランらしい安定の演技で作品を支えます。
良かったです。
20年立ちました
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