「日本の国益に明らかに反するような警察と検察の、天才プログラマーに対する無知と横暴に対する静かな怒りが伝わってきた」Winny Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
日本の国益に明らかに反するような警察と検察の、天才プログラマーに対する無知と横暴に対する静かな怒りが伝わってきた
松本優作 監督による2023年製作(127分)の日本映画。
配給:KDDI、ナカチカ。
新しい画期的なものを創る才能を潰しにかかるという日本の大きな問題を真正面から描いた、とても硬派な骨のある映画と感じた。この日本の言わば悲劇を描いた映画を産み出した中心人物、松本優作(1992年生まれ、脚本と監督) 及び岸建太朗(1973年生まれで撮影と脚本を担当)両氏に、拍手を送りたいと思った。
Windy を産み出した天才プログラマー金子勇の、超理系的で純粋にプログラミングを楽しんでいる人物像が実にリアルで、素晴らしかった。その人物像を創った脚本と、その人物をとても魅力的に見せた東出昌大の渾身の演技に魅せられてしまった。このヒトやっぱり、凄い俳優だ。
裁判で金子を弁護した壇俊光弁護士を演じた三浦貴大も、弁護士としての粘り強さに金子への尊敬と愛情が滲み出る演技で、とても良かった。大スターを両親に持ちながら、朴訥さに溢れて良い俳優だなとも感じた。
法廷描写はとても難しいと思うのだが、見事な闘いのドラマとなっていた。特に、吹越満演ずるスター弁護士が警察官に嘘を話す様に仕掛けるところの組み立ては鮮やかで、その飲み屋での観客向け?の解説も含めて、お見事!と感心させられた。
愛媛警察における裏金問題を告発した仙波敏郎・元巡査部長(吉岡秀隆)の実名エピソードにもビックリ。県警は否定したが、Winnyで証拠ファイルが出てきてしまうという展開が、事実らしいが皮肉な展開。金子さんの検挙は、こういった内部告発に対する恐怖からの組織的な対応ということなのか?いずれにせよ、事件をでっち上げての裏金作りに組織をあげて取り組んでいたという事実、告白者を抹殺しようと動く正義遂行するはずの組織に恐怖を覚えた。
最後、本人の映像も含めて、この裁判の後に控訴し、最高裁で勝利を勝ち取ったが、2年後心筋梗塞で亡くなった映像もみせられる。日本が産んだ貴重な天才、その彼から奪い取った貴重な時間(起訴2004年で、最高裁判決が2011年)、長期的な国益に明らかに反するような自己目的化した警察と検察の無知と横暴、それらに対する静かな怒りがこちらにも十分に伝わってきて、涙が流れた。凄いパワーを秘めた画期的な映画であった。
監督松本優作、原案渡辺淳基、脚本松本優作、 岸建太朗。
企画古橋智史、プロデューサー伊藤主税 、藤井宏二、 金山、撮影岸建太朗、照明玉川直人、録音伊藤裕規、衣装川本誠子、梶原夏帆、ヘアメイク板垣実和、装飾有村謙志、編集田巻源太、音楽プロデューサー、田井モトヨシ、音楽Teje 田井千里、音響効果岡瀬晶彦、助監督杉岡知哉、キャスティング伊藤尚哉、ラインプロデューサー中島裕作、制作担当今井尚道 、原田博志。
出演
東出昌大金子勇、三浦貴大壇俊光、皆川猿時、和田正人、木竜麻生、池田大、金子大地、
阿部進之介、渋川清彦、田村泰二郎、渡辺いっけい北村文哉、吉田羊、吹越満秋田真志、吉岡秀隆仙波敏郎。