「力になれなくてスマン」Winny Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
力になれなくてスマン
オープニングでPC-8001が映るんだよね「おお」っていう。
あと金子さんの小学生の頃の回想シーンで、本屋に《マイコン》《I/O》なんかが並んでるんだけど、古書をがんばって集めたから新品感がないの。
「Winny事件は無罪だったよな」と思って観てたら、地裁は罰金刑で有罪だったんだね。
これはダメだと思う。
Winnyに問題点はあったんだと思うけど、それを司法の場で追求するやり方はどうなのか。
作中でも吹越満が『開発者を逮捕したのは何故なのか。裏の意図を見抜かないと』って言ってるけど、そこが重要だね。
この映画では『匿名性を担保した状態で情報発信が可能になると、権力にとって不利な情報が出てくる。それは防がないと』という意図があって公権力が動いた。そう描かれてると思ったの。強く主張しないから読み外してるかも知れないけど。
その理由で公権力が一個人を逮捕・勾留するのを許していると、とんでもないことが起きるね。金子さんを応援して、公権力の暴走を防がなきゃいけなかったなあと観て思ったよ。
この作品はテーマを声高に叫ばないのがいいね。「金子さんは無罪を勝ち取れるのか、どうなのか?」っていう法廷劇の面白さで引っ張っていく。ときおり面白エピソードを混ぜて飽きさせないし。
役者では、木竜麻生が最初に出てきたときの衣装が可愛かったのね。「Winny事件の頃のファッションはいいなあ」と思って観てたんだけど、その後はそうでもなかったから、最初の衣装が良かったんだな。
木竜麻生の位置づけは、半ばお茶くみ要員っぽいところもあって、今だとこの描き方は許されないから、十数年で社会も変わりつつあるなあと思ったよ。
東出は、《聖の青春》の羽生善治役もそうだったけど、寄ってる感情表現をする役が似合うね。
他の役者はみんなすごかった。主演の三浦貴大はほんとにうまい。吹越満もめちゃくちゃ良い味。
レベルの高い脚本と役者で、テーマ性のある作品をエンタメ要素を落とさずに完成させたのは、ほんとうにレベルが高いと思ったよ。