「前置きが長くなりますが、、、」Winny TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
前置きが長くなりますが、、、
50過ぎの私にとって「2002年」と聞いてもそれほど昔とは感じません。しかし、改めて映像化された当時を見せられると、すでに30を過ぎていた自分を振り返り、正直目を覆いたくなることも否めません。
ちなみに、Googleで「インターネット元年」と検索してみると、若干のばらつきはあるもののおおよそはWindows95が発売された1995年辺りのこと。ピア・トゥー・ピア型ネットワーク(P2P)という言葉も、このWindows95におけるネットワーク設定の部分で初めて触れた覚えのある言葉ですが、その後このP2Pという言葉を頻繁に耳にするようになったのが音楽の共有を主目的としたファイル共有サービス「ナップスター」の出現です。そしてその数年後、日本では本作の主役である金子勇氏が開発した「Winny」が利用者を増やし、後に事件となるところからこの映画が始まります。
当時を思い起こせば仕事でもインターネットが不可欠になり始めていたけれど、そのためのセキュリティ対策やユーザーのITリテラシーが全くと言っていいほど不足していた印象があります。今考えるとそんな「ずさん」な状況が「満えん(正しくは蔓延)」しているなかで、Winnyによる「情報漏洩」などがニュースになり注目を集めることが、セキュリティが重要視され始める一つの「きっかけ」であったとも思います。また、インターネットの「ブロードバンド化」が進みADSLの普及に勢いがついたのも、実はWinnyなどのP2Pソフトが要因だったような気がします。(ま、諸々は私の「実感」ということで、私周りの詳細は伏せますが。。)
正直この作品、あまり大きな期待はしておりませんでした。私としては「役者・東出昌大」という面白味にあふれた彼の主演作に期待というくらいにつもりで臨んだわけですが、東出さん以外にも三浦貴大さんをはじめ、間違いないキャストの面々の素晴らしい芝居によってこの作品の世界観に惹き込まれます。特によかったのはやはり吹越満さん。巧いのは言わずもがなで、存在感、説得力ともに半端ない。カッコいいっす。あと、最近法廷物にカメオ出演がお約束化しつつある裁判傍聴芸人の阿曽山大噴火氏もちゃんと出ています。
そして、この作品に対して一番感心したのは田巻源太氏の編集。本作は二つの事件を並行して物語ることで「問題の本質」が立体的に見えてくるのですが、まさにこの編集が素晴らしいバランスで構成されており、状況の変化によってヒリヒリしたり、イライラしたり、ゾワゾワしたりと兎に角スリル感があって素晴らしい仕上がりです。エンドクレジットの演出も含め、邦画っぽくない感じが思いのほか刺さりました。おみそれしました。