「事件を知らない人も、知っている人も楽しめる法廷ドラマ」Winny スキピオさんの映画レビュー(感想・評価)
事件を知らない人も、知っている人も楽しめる法廷ドラマ
2003年に起きたファイル共有ソフトWinnyをめぐる事件の映画。面白いし、考えさせられる作品ですね。
まあ、事件そのものは、おじさんオタク世代なら覚えている話ですし、Wikipediaで読めば分かります。もちろん映画なので「権力に抗ったエンジニア」として描かれています。
ただ、興味深いのはWinnyの話だけではなく、中世的な日本の司法制度や匿名性の功罪、内部告発の難しさ、などこの事件を題材に投げかけるテーマが複層に絡まり、あえてそこには答えを出さない、という作り方が良いと思います。
テーマに対する一つの答えとして、エンドロールでWinnyの開発者である金子功氏が語るセリフが考え深いです。最高裁で無罪を勝ち取った後の記者会見で冤罪をもたらした責任はどう考えるか?という記者らしい煽り質問に、「誰かの責任にすれば良い、という考えで自分が逮捕されたのでは」、と。
映画としても面白い。やはり東出昌大は上手いです。エンドロールのご本人と雰囲気そっくりです。予告編だと三浦貴大の熱血弁護士が啖呵を切っていますが、本編では秋田弁護士が本当の主役ですね。
最後の被告人の陳述で「Winnyの修正が裁判のおかげでできなくて悔しい」とSDカードを手にするのですが、臭い芝居を入れたな〜、と思ったら、パンフレットを読むと実際の法廷でもやったそうです。法廷でも、SDカードは「仕込みの小道具」として使ったそうで、法廷も舞台なんだな〜、と感心しました。
Winny事件の功罪はあえて語りませんが、Wikipediaでは意外と批判的に書かれていますね。本編でも警察の陰謀論が少し出てきましたが、うやむやになってしまいました。私は陰謀論好きなので、ちょっと深掘りしてみたいな、と思います。