「『満えん』」Winny いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
『満えん』
P2P技術での世界に於ける日本のアドヴァンテージを予感させる開発であったWinNY
しかし、余りにも日本の世情とのミスマッチによる運の悪さに因って、プログラマ自身が逮捕起訴されるというトンでもない転がり方をした事件の顛末を描いた作品である
勿論、ドキュメンタリーではないのでドラマとして加筆している部分はあるだろう しかし鑑賞後に改めてこの事件をネットで調べてみると興味深さは一段と浮き彫りになる内容である
主人公である開発者、そして対峙する警察・検察、味方となる弁護士、そして世論 このどちらにも『プロトコル』が存在していない この事件に於ける一番の問題は、お互いの欠けている部分を認識し、並列にすべき概念を逸している事なのではないかと思う それはクライアントサーバー型式のように上下の繋がりではなく、正にピアツーピアの発想こそが請われているコンセプトなのではないかと愚考したのである
それぞれの立場故に中々相手を慮る姿勢については困難を極める 未来永劫それは無理なのかも知れない それでも風穴を開けたいと願う人間は出現する 一人は天才 もう一人は正直 何れも共通するプロトコルは"純粋" 純度が高い程、爆発的な化学反応を引き起す だからこそ雑味が酷い一般社会に於いては、それを『異形』と称して排除しようとシステムが稼働してしまう
しかし、純度が100%に限りなく近かったら?・・・ 雑味は所詮妥協の成れの果て 自覚しているからこそ武装するのであって、本来はその重い鎧を脱ぎ捨てたい
抽象的な話に始終してしまったが、"純粋"と"不純"、その相克を突きつけた意義のある作品であると強く感じたのである
もう少し削ぎ落として良い箇所、しかしストーリーとしてのカタルシスを刻みたい欲 制作陣の苦悩がそこかしこに色づけされていることを痛い程感じてしまったのだ
確かに、山があったから登ってしまった金子勇氏は、思慮が足りなかったかもしれません。ネットの海は航行の自由があり、新天地がどこまでも続いている。当時の自分もそう思っていたので、winny事件はショックでした。
何故か、鑑賞後何日も経っているのに、今作の持つテーマ性の奥深さにやられてしまい、数多あるレビューサイトを当たっている
やはりその中には核心を突いた批評もあり、改めて目から鱗がポロポロ落ちる勢いだ
見落としてしまった重要な台詞があったことを気付かせてくれた
●「こういうことが起きた時、誰かのせいにして終わらせることが果たして正しいのかどうか、今回の件でよく分かったと思う」
誰かをスケープゴートにして終了させる方法は、ホントに簡単で短期間であり、そして事実の忘却も早い しかし物事自体の収束には程遠く、被害は持続する
本質は一体なんなのかということを冷静に見極める重要さは、しかしそれぞれの立場故の綱引きに始終する人間の業の前にはその理性は軽く吹き飛んでしまう・・・
●ナイフの話だが、例えば規制品さえもその規制している主体の思惑なのだから規制されているモノが悪いわけではないという逆説にも繋がり、その独善さは危険性を一気に帯びる そしてそんな規制を想起させるモノを不用意に不特定多数、尚且つ自由というと聞こえは良いが、無責任な問題性も同居している2chに投下したという凡そ褒められるものではない行動も事実である だからであろう、本人は自分が害を与えているのならば有罪にして貰っても構わないという意味は、研究者としての責任感の欠如を自覚している故なのだろうか・・・
『フランケンシュタインの誘惑』というNHKの番組があり、科学技術の社会的倫理的責任、又は受忍限度の必要性をテーマにしている "誘惑"に靡くイノベーターは、その負の作用を革新への犠牲として覆い隠すのか・・・ 自由と責任、そのアクセルとブレーキは人類史上、ずっと傍らに横たわる問題なのであろう
追記ありがとうございますw
内容についても評価の割に食いつきがとかド共感です。
主人公の様な経験をした人は殆どいない筈ですが、話しは小さくとも押し込められたりムゲに扱われた経験というのは誰しも少なからずあるだろうし、無垢な主人公に共感しやすいうまいつくりだったと思います。
こちらこそ失礼致しました(汗)
マスコミへのリークを含め、なかなか狸な警察と裏を考える弁護団に対して、飄々としている被告の純粋さが素晴らしかったです。