「小劇場のセミプロ演劇を見せられているよう」スペシャルアクターズ Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
小劇場のセミプロ演劇を見せられているよう
「カメラを止めるな!」(2018)の上田慎一郎監督作品。2019年8月公開の「イソップの思うツボ」も上田監督の作品だが、3監督の共作だったので、本作が正式な劇場長編第2弾にあたる。
社会現象的な大ヒットで注目され、製作環境もよくなっていていいはずだが、松竹ブロードキャスティング製作では、それほど予算に余裕はないだろう。
やはりオーディションで1500人からほぼ無名のキャストを選ぶという手法を踏襲している。
"カメ止め"は、ゾンビ映画に有名俳優が主役だと、「その人は死なない」と分かってしまってツマらないから──と発言していたが、今回の狙いは"半端な役者たち"という設定にありそうだ。
とはいえ、劇中の演技シーンと、素のシーンに差がなく単調なのは、単に下手なだけなのでは…と気が滅入る。
主人公・和人は三文役者。久しぶりに再会した弟から俳優事務所「スペシャル・アクターズ」に誘われる。
その事務所は映画やドラマ以外に、"何でも屋"として要求された役割を日常で演じる仕事を請け負っていた。そんなある日、"カルトな宗教団体から旅館を守ってほしい"という依頼が舞い込んでくる。
演技という"騙し"と、宗教商法という"騙し"、それに精神疾患の治療という題材を関連づけてコメディに仕立てる。
エンターテイメントな演出は他にも手法はあると思うが、結局、上田監督は"どんでん返し"が好きなだけなのかもしれない。
ワンカット撮影以外の映画的な撮影や編集技法を見てみたいし、違うジャンルは書けないのだろうか。
コメディ作品が続いているので、作りの安っぽさも相まって、小劇場のセミプロ演劇を見せられているようだ。
(2019/10/19/新宿ピカデリー/シネスコ)