「音楽と建築、そして映画」パリに見出されたピアニスト kthykさんの映画レビュー(感想・評価)
音楽と建築、そして映画
映画と建築の関係にあってその基本的要素は物語性にある。さらに、物語としての都市は叙事詩であり、建築は戯曲(悲劇)であると書いたのは、たしかアルゼンチンの女性建築家ダイアナ・アグレスト。
恵比寿ガーデンシネマで映画・パリに見出されたピアニストを見ながらこんなことを思い出していた。なるほど、最近は月に三度は映画を観るが、建築見学にはほとんど出掛けなくなってしまった。消費社会における商品化されたパッケージデザインには関心がないからだ。
「パリに見出されたピアニスト」はパリの北駅から始まる。郊外(バニュー=壁の外)に住まう主人公マチューの楽しみはこの駅構内のピアノを弾くこと。彼はバニューの不良仲間と盗みを働き、警官に捕まり、刑務所へ。しかし、マチューの駅ピアノに魅せられていたパリ音楽学院のピエールに助けられた彼は刑に代用される無償奉仕を口実にピアノのレッスンを強いられる。
ここから先はドラマ・ドラマ・ドラマ、建築では決して表現できないドラマが続く。クライマックスは余りにも予想通り、さすがにここまでくると建築とは程遠い。建築はこの映画のラフマニーノフではなく、水の流れのようなバッハに近い。ミュトスよりロゴスということか。
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