「バンドデシネ+スチームパンク+クレヨンしんちゃん?」アヴリルと奇妙な世界 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
バンドデシネ+スチームパンク+クレヨンしんちゃん?
カリコレ2019
フランス発のヌーベルSFファンタジーアニメという触込みだが、流石ジャパニーズアニメに共感性を頂いている国だけに、両国の良い所が混ざり合ったような感じを受ける。それは、タンタンのような画風や、歩くときの粘着的な動き、しかし丁寧且つ綺麗な背景画、しかしきちんとコミカライズされたキャラ達、伏線の回収の丁寧さ、歴史改編物等、それぞれの国のアニメ映画をきちんと理解している監督だと思える。それは、ハリウッドにはないアニメならではの表現方法をキチンと踏まえたオリジナリティと、小さい出来事をデフォルメさせてストーリーを膨らませるセオリー、そして何より、大人から子供まで安心して観ることが出来る展開などが、概視感となって落ち着いて観る事が出来るからである。
逃げ出した改造トカゲが、世界中の科学者を誘拐するというトンデモ話としても、それはそれで納得してみせてくれる力強さをひしひしと感じる。と同時に、実は10年前に作られた血清ではなく主人公が作った血清が完成品という、小粋なトリックを組み込むシークエンス、ロケット爆発によってスクリーン全部を真っ白にしての場面転換の演出の妙、ロープウェイや歩く歩道などのガジェットのデザインもさすがヨーロピアンといった洗練さだし、登場人物達のキャラ設定も分かり易い。何より、“夫婦喧嘩”という些細な家族内軋轢と世界紛争を結びつける“セカイ系”にも結びつけているところが興味深い。映画企画での上映よりも、きちんと配給が付いて正式に興行しても充分日本では受容れてくれるのではないだろうか。とりもなおさず子供は充分楽しめると思う。“ハウルの動く城“的なガジェットも、パクリではなく、あくまでもオマージュとして面白いし、その他いろいろなジャパンアニメ要素が、フランス式解釈として埋め込まれているので、飽きずに愉しめる、大変有意義な鑑賞時間であった。尚、フランスならではの熱いベーゼや、それに伴う涎液の交換等の大人のジョークも又、クスッとさせるウィットとしてオシャレなのである。