「君の想いをききたい」思い、思われ、ふり、ふられ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
君の想いをききたい
『アオハライド』『ストロボ・エッジ』と並び、咲坂伊緒の“青春三部作”と呼ばれる同名少女漫画を実写映画化。
監督は『アオハライド』に続き、青春恋愛映画の名手、三木孝浩。
同じマンションに暮らす4人の高校生。
快活な朱里。
クールな理央。
内向的な由奈。
温和な和臣。
親同士の再婚で、突然姉弟となった朱里と理央。その以前から、お互い好意を抱いていて…。
朱里と親友の由奈。彼女は理央に仄かな恋心を…。
由奈の幼馴染みの和臣。理央と親友になり、朱里と距離を縮める。
朱里もそんな和臣に惹かれていくが…。
まあとにかく、最初は4人のキャラや関係を把握するのに一苦労。
親の再婚で突然姉弟になるとか、美少年美少女が織り成す恋愛模様とか、何か久々にド直球の少女コミック実写化恋愛映画を見た気がした。(と言うか、暫くそれ系の作品を見てなかっただけで、今回たまたま三木監督で、“キミスイ”の浜辺&北村に惹かれたので)
実を言うと自分は、咲坂作品がちと苦手。
高校生物語なのに、結構複雑。今回も、
“家族”となった事で、自分の気持ちに蓋をする朱里。
だが理央は朱里に対して恋心を抱いたまま。
自分に自信が持てない由奈。
ある“秘密”を目撃し、和臣もまた首を触って自分の気持ちを偽る。
こんなにも切ない。
こんなにも胸が苦しい。
こんなにも想いが伝えられない。
まるで、複雑な大人の関係ドラマを見ているかのよう。
しかし、現実味の無い恋愛ファンタジーみたいなおバカ作品より圧倒的遥かにイイ。
高校生は大人と子供の狭間。最も自分の気持ちに葛藤する年頃。
それを恋愛に据え、繊細に描いている。
いや、恋愛だけではなく、友情、将来の夢、家族、4人のキャラ心情なども丁寧に掘り下げ、誰かしら何かに共感。
朱里と和臣の将来の夢には、我々映画ファンなら思わず温かい笑みがこぼれてしまう。
注目若手のアンサンブル。
『君の膵臓をたべたい』の浜辺美波と北村匠海の再共演が一番の話題性かもしれないが、個人的には由奈=福本莉子が良かった。
絡まり、燻っていたような4人の関係。それを打破したのは由奈だったと思う。
朱里や理央と出会い、接し、自分に自信が持てないでいた彼女が勇気を持って、遂に理央に告白をする。
それからの由奈は心が変わったように感じた。“もう私なんかと思いたくない、私を頑張ってみたい”…この台詞が彼女の全てを代弁している。
勿論、浜辺美波は相変わらずキュート、北村匠海は“キミスイ”の時と違ってクールなイケメン、それから和臣役の赤楚衛二の好助演も光った。
三木ワールド、全開!
淡く、切なく、瑞々しく、爽やか。
夏祭りや学園祭など少女コミック実写化王道シーンを、誰もが思い出すように。
特筆すべきは、ある人物とある人物の雨の中の突然のキス・シーン。無音と美しい映像で、本作屈指のシーンと言えよう。
多ジャンルを手掛ける監督も居れば、同ジャンルを撮り続ける監督も居る。
本当に今、青春恋愛映画を撮らせて三木孝浩の右に出る者は居ない。
山田洋次が人情作品を撮り続けるように、この人にはこうなったらとことん極めて欲しい。
最初は如何にもな感じで、関係性も複雑で、
でも見ていく内に、それぞれ“思いやる”気持ちに溢れていて、
最後はそれぞれなかなかイイ感じのカップルになって、
まあ、これまで見た少女漫画実写化の最高作とまでは言わないが、
咲坂実写化作品では一番。爽やかで優しい気持ちになれた。
キミスイ以来、ぱっとしなかった浜辺美波が、ようやく、持ち味を活かした作品に出会えたって感じの作品でした。
恋愛ドラマというよりは、生きる指針みたいな示唆に富んだ、なかなかの作品でした。周りを思い遣った上で、自分の気持ちは言葉でハッキリ伝えなければ相手に響かないと再認識させられました。
では、また共感作で。
-以上-