キーパー ある兵士の奇跡のレビュー・感想・評価
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物語よりもすごい実話
冒頭の捕虜収容所でのシーン。志願したのか、ナチだったのか聞かれる。そこでのトラウトマンの答えははっきりしない。
戦争中に何をしたのか、どういう立場なのか、観ている方には最後の方まで分からない。
マーガレットと同じく、言葉少なな彼の振る舞いから善良そうと思い、そう信じるだけ。
子供を亡くし、過去に子供を助けなかった故だというバート。それに対してマーガレットが言った言葉が残る。子供は私の子供でもあり、あなたの罪を一緒に背負えるわけがない、だから前に進むしかないと。
捕虜を地元の商店などで労働力として使うところや、戦後まず戦犯がいないか点検し、再教育を行うところなど、歴史としても興味深かった。
戦争、差別、スポーツ、家族、再生…
全てが詰まっており、それでいながら実話。夫婦役の二人も良い。そして彼女の家族も。本当に戦争が彼の人生に多大なる影を落とし、相当辛かっただろう。それを支える家族、そしてサッカーを通して彼自身、実力で見返し、魅力し、受け入れられた。しかし、息子の不慮の死。人生は切ないながらも、ここでも夫婦の力で乗り越えていく。テンポも良かった。
幸運と不幸が交錯する人生を歩んだ、あるドイツ兵の成功の影
第二次世界大戦に従軍したドイツ兵バート・トラウトマンがイギリス軍の捕虜になりながらも、持ち前のサッカーの素質を買われ、そのままイギリス・サッカー界で大活躍する国民的英雄の伝記映画。そこにはナチス・ドイツを敵視する戦後の差別意識に晒される苦難と戦中犯罪の良心の呵責に苛まれる人間性含めた心の葛藤、そして最愛の子息を事故で失う夫婦の悲劇があり、単純な成功者の人生ドラマにはなっていない。この幸運と不運が交錯する人生を送ったトラウトマンについて何の知識も無かったが、映画で出会わなければそのままであったろう。その意味でこの作品に出会えたことには感謝したい。戦争が無ければ母国で何の差別も無く、戦後ドイツのサッカー界で活躍したと想像するが、そう言い切れないのも、また人の生きる道であろう。人生のめぐり合わせについて、興味深く観ることが出来た。
ただし、この実話を基にした脚本は事実を克明に再現する丁寧さと分かり易さがありながら、最終的に受ける感想は、実子を失った夫婦の破局が大きく占めて作品の意図が分かりにくい。マンチェスター・シティFCでの栄光の軌跡よりも、また戦後の混乱期に敵国同士の男女が結ばれる恋愛ドラマよりも、戦争犯罪を見逃してしまったトラウトマン個人の後悔の念が重く強いのだ。このフラッシュバックで何度か登場する、ある少年の存在感が異様に強調されているからであり、それをトラウマとするトラウトマンの再起が描かれていないからだ。史実に忠実である記録性とは別に、脚本家と監督にはもっと伝えたい事への拘りと表現力が欲しい。
展開の描き方が全体に平坦で、演出にもメリハリが弱い印象を持った。特異で過酷な人生を歩んだ実在のトラウトマンへの関心だけに終わってしまった作品である。主人公トラウトマンを演じたダフィット・クロスは「愛を読むひと」以来の見学だが、特に輝きのある演技は観られなかった。これは、監督のマルクス・H・ローゼンミュラーの演出にも問題がある。イギリス人に囲まれた一人ドイツ人の個性表現が弱い。妻マーガレット・フライヤーを演じたフレイヤ・メイヴァーは殆ど化粧なしの素顔で押し通し中々の役者振りを見せるが、一番存在感があったのは父ジャックを演じたジョン・ヘンショウだった。「リトル・ダンサー」のゲイリー・ルイスも友情出演のような役柄で見せ場がない。
調べると終戦時のバート・トラウトマンは22歳の若さだった。18歳で入隊して通信兵から空挺兵となり、途中軍法会議にかけられて刑務所に服役して、東部戦線から西部戦線と配属され、何度も逃げ延びて最後イギリスの捕虜収容所に辿り着いている。この経歴を知ると映画の印象が変わってしまう。その過酷で数奇な背景をフラッシュバックで表現しても良かったのではないかと思う。
simple
キレイに簡潔にまとまってた。
昔なら「文部省推薦」の文字がポスターなどに表記されるような作品ではないだろうか?
多分もっと色々あったと思う。
だけど、劇中の台詞にもあったけど「前に進まなきゃ」と。全部背負って、それでも進んでいかなきゃ。
凄い力強いメッセージだと思う。
脚本に沿ったカメラワークが秀逸で…役者の芝居にも寄り添うようで。その芝居を時に増幅し、時に的確に切り取ってくれてるようで嬉しい。
simple is best というか、非常に見易かった。
…色んな弊害や障害は彼の人生にはあったと思う。不遇というか迫害された時間は必ずあっただろうとは思う。だけどソレを印象づけるわけではなく、過ぎていったモノとして描いているかのようだった。
時間でしか癒せない傷もある。
そう粛々と語ってくれてるようでもあった。
「恨」という思想と真逆の世界。
世界は分かり合える事が出来る。
そんな希望を見せてくれる映画だった。
…こういう前例を経て「スポーツの力」とか盲信する輩とかがいるんだろうな。
たまたま上手くいった一例だからな。
その力がある事は否定しないけど、全てに当てはまるとかは暴論だからな。
あまりにキレイに簡潔にまとまり過ぎていたので、ひねくれ者の俺などは、毒の一つも吐きたくなる。
事実だからこそ
期待し過ぎたせいか、盛り上がりに欠ける作品。
と思ってしまったけど、事実に基づいた作品だからこそ、かなと。
ナチスドイツが犯したことで盛り上がりに欠けるとか思う方が間違っているのだから。
どういう経緯で捕虜からイギリス人が愛するスポーツの人気チームの一員になれたか。
収容所に出入りする食料品店の親父さん(笑)が豪快だったから、としか思えない。
やや唐突だったのは、一緒に来た娘…お互い一目惚れ?
遠目でも感じるものでもあったのか?早すぎるよ〜
それはさておき。
ユダヤ人や家族を失ったイギリス人にしてみれば、そう簡単には許せないだろうな、と。
いくら強いチーム作りのためといえども。
戦後まだ間もないあの時期に、ドイツ人をチーム入れるなら負けた方がいい、というくらいの憎しみは残っている気がするが。
それに勝るほどの力がサッカーにあったということか。
サッカー好きだし、サッカーのシーンは多かったけど、この作品でのサッカーの位置付けは思ったほど高くなかったと感じた。
やはり戦争の傷跡がテーマなのだと思う。
色々詰め込みすぎ?
実話を元にしてるため、グッとくる画面が多々。
結局戦争は何も生まず、被害者加害者というくくりにすることは出来ないのか、とも思ったり。
肝心の内容は、一言で言うと色々盛り込みすぎな感がした。戦争→捕虜生活→ヒロインとの出会いを経てサッカー選手になるまで→バッシング→スターになるまで→息子の死→乗り越えるだけど、バッシングからのサポーターに受け入れるまでの過程を省略しすぎでは?
奥さんが声を張り上げてるシーンを良かっただけど、あそこくらいだけだったような気がする。
サッカーを題材にした映画なのだから、そこにもうちょっと重点を置いて欲しかった。
何を見せたいのか?
良い話なんだろうなという感じで
見てしまったのです
実際にあった話らしいのですが
サッカーのシーンは凄さは感じられず
人間ドラマとすると感情移入がしづらく
何を主軸なのか? という気分でした
サッカーに振るならもっとサッカーシーンを
見せて凄さを出した方が良いし
夫婦や子供との関係を出したいなら
カッコよくないサッカーシーンを減らしても
増やすべきだと思う
人に勧めるか?という感じならば
サッカー好きで映画好きなら?
っという感じで 30%くらいの人に
進めるかも?
激動の人生とはこのこと。
すごい話だったー。人にはそれぞれStoryがあるけれども、この人はまさに激動の人生、凄い人生だとしか言えない!
戦争での心の傷は凄まじいものだと聞いたことがある。そのへんをリアルに演じられていたと思う!
彼もすごいのだがナチスドイツ人と結婚したイギリス人のマーガレットはホントにすごい決意を持って結婚したんだろうなぁと思う。
イギリスはドイツ軍からの空襲で街をむちゃくちゃにされたそうで戦争は終わってたとはいえそんな敵国の捕虜と結婚するのはなかなかできることではないですね。彼らの子供が事故で亡くなった場面はかなりショッキング。彼は過去の自分の行いの天罰が下りたのだと嘆いたが、妻はそれを叱責。過去は過去、子供の人生なのだから天罰などではなかったはず。全体的にはいいシーンも悲しいシーンもある、心に残る映画となりました。人生ってドラマですね。大切に生きよう。
バード役のデビッドクロス、ケイト・ウィンスレット主演の愛を読むひとに出てました。おぼこい少年だったのに、大人になったなぁ。( ◜◡◝ )
テーマを盛り込みすぎたかな?
前半はサッカーを通してに「敵を受け入れ、許し、認める、認められる」ことをストレートに表現していて涙ぐむところも多いのですが、後半(優勝後)一気にパワーダウンして行き、テロップで後年を説明しておしまい。的に尻窄みに終わるのは残念。
家族で失意から立ち上がって復帰していく姿とかも前半の勢いで描き込んで欲しかったな。
伝えたいことがいっぱいあるんだろうけど、エンターテインメントとして完成させるなら、社会を伝えるなら社会、ヒューマンを描くならヒューマン、スポーツならスポーツ、伝記なら伝記と、終始一本筋を通した上で他のプロットを絡めてくれたらもっと楽しめたと思う。
そのせいか「サッカーで恩返ししろ」などという台詞も上滑りしてるように感じましたし、宣伝文句にあった<秘密の過去>も、(エンターテインメントとしては)思いの外インパクトに欠けていたような気も。
結局作品を見終わった頃には、何を見たか、感じたかがぼんやりと薄れてしまっていました。
途中で実際の映像も出るけど、誰かがテレビで観戦しているシーンを差し込んで、そのテレビ画面だとかひと工夫すれば唐突な違和感もなかったのではないかなど、細かいツッコミどころは満載。
GKのプレーとしては、勝利への脱出のSスタローンのようなお粗末なプレーではなかったので、そこは安心して観られますが、サッカー映画かと思って見ると失敗すると思います。
ただしキーパーというポジションの魅力を伝えるには十分です(前半ね)。
また、今のサッカー環境とは全く異なった時代ですので(GKが素手だとか、選手が控え室でふつーにタバコ吸ってるとか!)子供と見るときには補足が必要かもしれませんね^^;;;
役者さんは派手さもなくジェントルで、非常に日本人が好みそうな美男美女♪
個人的に前半で☆5、後半でマイナスさせてもらいました。
ラストの○○○○がなぁ。
第二次世界大戦末期、イギリス軍に囚われたドイツ人兵士。捕虜収容所でサッカーのフリーキック
で、ゴールに立ったところ見事な才能を見せつける。それをたまたま見ていたジリ貧サッカーチームのオーナーにみそめられキーパーに立つことを余儀なくされる。しかし、仲間達に敵国の元兵士であることから初めは、嫌悪されるがその実力で次第に認められていき……。
というサクセスストーリーだ。
サッカーシーン自体は少な目。ドラマ中心。
その後、オーナーの娘と結婚。プロリーグへ。と登りつめて苦悩を乗り越えなんとか順調に行くが、長男が交通事故死。実話を元にしているというがこれは衝撃的で可哀想だった
これも事実なのか?
ヘイトを超えて
戦争捕虜がサッカーのゴールキーパーで成功する映画。実話であるようだが現代の日本でもまずないだろう。
捕虜に対する人権保障が浸透している社会で初めて実現するのだろう。
本人のトラウマも描かれていて、ただのサクセスストーリーではない。
反戦映画と言ったら言い過ぎだろうか。
ドイツから来たマスオさんは 男は黙って○○○○を○○し続けるのであった
実話。見る前にWiki参照しました。バート・トラウトマンのYouTube見ました。史実にほぼ忠実でした。でも映画の作り手はちょっと変化球をいくつか入れて来ました。そして、それは大筋を壊さずに、泣ける味付けで、大変評価できるものだと思いました。
戦争シーンから始まります。
野生のシカが出て来ます。
捕虜になります。
たばこをかけて、PKやります。
フレイア・メーバーはスコットランド・グラスゴー出身の若手女優ですが、一昨年「モダンライフ・イズ・ラビッシュ ロンドンの泣き虫ギタリスト」を観て、個性的で素敵だなぁと思いました。そのあと、コメディ映画の「契約破棄していいですか?」でも、癖のあるヒロイン役ですっかり魅了されてしまいました。今回は、旧東ドイツから気球で西ドイツに家族で亡命する実話の映画「バルーン 軌跡の脱出飛行」で、古いミシンで気球を連日の徹夜で縫う地味な役だったデヴィッド・クロス(ドイツ出身)との共演で、とても楽しみにしていました。彼はあんまり大柄ではないのですが、とても良かったです。日本代表ですと、川口タイプでしょうか?身長があり、大きいキーパーはFWに与える心理的なプレッシャーが大きな武器になるのですが、ファインセーブの映像は彼ぐらいがちょうどいいですね。そして、これは史実ですが、バート・トラウトマンはハンドボールの経験もあり、スローイングがすごい。相手のシュートをキャッチしたあとのキーパーからの素早い縦攻撃場面が多かったです。
「フィッシャーマンズソング コーンウールから愛をこめて」で長老のおじいちゃん役のデイヴ・ジョーンズも出ていて、期待を裏切らないいい映画でした。
私はフレイア・メーバーの表情、一挙手一投足を見逃さないように集中していましたが、実にみごとだと思いました。成長著しいです。勝ち気な性格ながら恋する乙女心が仕草から滲み出ていて、それでいて、彼女の持ち味でもあるバリバリ男勝りな面。カッコいいと一言で言ってしまうのはちょっと陳腐。そばかすがすごいですし、目も大きい訳ではないし、ちょっとやさぐれ顔なんですが、それがいいんです。すみません。個人的感想ばかりで。青田買いしておいてよかった~
ネタばれレビューはあまり面白くないですが、一言言っておきたいことがいくつかあります。
まだ観てない方は以下はなるべく読まないで下さいね。
1.長男が5歳で交通事故で亡くなったのは事実。それから、夫婦仲がギクシャクして、結婚後10年で離婚しています。映画では離婚には一切触れていません。長男が死んでから、マーガレットは夫婦生活が苦痛になります。その演技もとてもリアリティーありました。アイスクリームを一人で買いに行かせたのが事実かはわかりませんが、夫婦の話しとしても苦し過ぎてつらい。それでも、あなたの息子だけじゃなくて、私の子供でもあるのよ。前に進むしかないじゃないの。と、夫の背中を押す妻役はただ綺麗なだけの女優さんじゃなかった。
2.収容所のスマイス軍曹(ハリー・メリング)とのちにお墓参りで突然取っ組み合いになるシーンはちょっと唐突でしたが、サッカー辞めないでくれとスマイスが言う場面は泣けました。スマイスがバートに返す小さな木彫りの鳥(銃殺された少年のネックレス。大事にバートが隠し持っていた)を返す。そういえば、バートとマーガレットと急に近づいたきっかけも黄色のインコ🐦でした。スマイスも本当は優しいいい人。戦争は人に全く選択の余地を与えないで、突き進ませることが最もつらく、悲しいことです。バートの誰にも言えなかったトラウマが明らかにされる大事な場面でした。自分の子供の死が、その子供を救えなかった自分のせいだと思うバートの気持ちを表す幻覚シーンが秀逸でした。さすが、映画。
3.FAカップ決勝戦(1956年)後半15分の相手のラフプレーでの頸椎多発骨折場面(事実)で、病院での妻の姿や首のレントゲン写真が挿入されますが、時間が前後して、ちょっとわかりにくかった。実際、優勝メダルをかける時にはクビが曲がっていて、ものすごく不自然だったそうです。
4.マンチェスター・シティFCの監督が偉かった。その役のゲイリー・ルイスがカッコ良かった。映画では初試合は0-1 で負けていますが、バートはマンチェスター移籍後の初試合から凄い活躍で、バッシングから一転、大絶賛されたらしいです。スポーツが国を越え、人種を越えることは確かなことだと思います。才能があることは本当に素晴らしい。
5.シーズンオフにキャンピングカーで家族旅行するシーンが良かったですよ。フレイア・メーバーのブラウスにジーンズ姿が素敵でした。当時のファッションも地味ながらセンスよく、シックでした。主役のふたりによく合っていました。
6.マーガレットの妹役がおデブさんで、可愛かったです。美人のお姉さんの気を引くには、まず、妹にオモチャ買ってあげるといいかもね。
では、また。
【戦禍で生まれた恩讐を、サッカーを通じて描き出した作品。ナチス・ドイツ兵だった男の数奇な人生に魅了された作品でもある。】
ー連合軍の捕虜になったナチス・ドイツ兵のバート(デヴィッド・クロス)は、英国のランカシャー収容所に送られる。収容所所長は、厳しい態度でドイツ兵捕虜たちに接し、バートにも目を付け、トイレ掃除を命じる。
が、休憩時間中にサッカーをしていたドイツ兵たちの姿を見た地元弱小サッカーチームの監督ジャックはキーパーをしていたバートの素質を見抜き、収容所関係者と話を付け、自分のサッカーチームのキーパーに抜擢する。
ジャックは、当初は収容所から試合に連れて行っていたが、バートの要望で、自分が営む雑貨屋の手伝いをさせながら、キーパーをさせる・・。-
■印象的なシーン
1.バートがジャックに”喉を怪我したことにして喋るな”と言っていたのに、バートが自らチームメイトに話すシーン。反発する選手たち。
だが、バートのファインセーブ連発により、久しぶりに3-0で勝利し、下部への陥落を免れた辺りから、彼らの溝は埋められていく・・。
ーバートがドイツ人としての誇りを持つ男、誠の心を持つ男である事が良く分かる。ー
2.バートを警戒していたジャックの娘マーガレット(フレイア・メーバー)だが、彼の優しさ ー逃げた小鳥をそっと手で包み込むように捕まえる姿や、妹バーバラに竹馬(英国でもあるんだなあ・・)を作ってあげる姿ーを見て・・。そして、矢張り試合でのキーパーとしての格好良さに惹かれていく。
ーマーガレットに恋するチームメイトとの雨中のPK対決シーン。ー
マーガレットの家族もバートに優しい。皆で夕食を囲むシーン。バーバラは特に嬉しそう・・。バーバラの部屋を与えられ、久しぶりに少し小さいベッドで嬉しそうに寝るバートの姿。
そして、バートとバーバラの電光石火の結婚・・。
ーえ、もう結婚しちゃったの? 早いなあ・・。-
3.バートの力量を見ていた、マンチェスター・シティの監督ジャック・トンプソンは彼を入団させるが・・。記者たちの鋭き質問の雨霰。マンチェスター・シティの有力な支援者だったラビ・アルトマンはシティへの援助打ち切りを申し出る・・。
初戦の、アーセナル戦での観衆からの激しきブーイング・・。
ー■鉄十字勲章:ドイツで戦功の有った者に与えられる勲章。バートが言うように功労章的な位置づけであったようである。だが、バートの責任を問う鋭き声は止むことがない・・。バーバラの懸命に夫を擁護する言葉が心に響く・・。-
4.劇中に度々出てくる、戦時中にボール遊びをしていたのに、ドイツ兵にボールを取られてしまった貧しき格好の男の子の姿。そして、序盤での男の子をバートが助けるシーンが頭をよぎり始める・・。
ーもしかして、バートがマーガレットに激しい口調で語った”君は自分の恥を語れるのか・・”と言う言葉は・・。-
そして、試合で大怪我をしたバートが自分の過去をマーガレットに話そうとした時に愛息子ジョニーに訪れてしまったあの悲しきシーン。ー
5.悲しみの中、バートはマンチェスター・シティの守護神として活躍を続け、とうとうFAカップを掛けたバーミンガムとの一戦に臨むバート達。
バートの真摯に試合に臨み、懸命にプレーする姿を見て、支援再開を発表するラビ・アルトマン・・。
6.愛息子ジョニーの墓参りをしている所に現れた男。それは、且つての収容所所長のスマイス軍曹だった・・。
ー彼が、戦時中、ドイツ兵たちにキツク接していた理由が判明する。取っ組み合いになる二人だが、スマイス軍曹がバートに”渡したモノ”・・。それは、彼が”自らの恥を忘れないように”大事にしていたモノだった・・。-
<この作品が心に響くのは、バートを単なる英雄として描くのではなく、彼が心に抱える”罪悪感”を引きずりながら生きている事、ドイツ兵として“贖罪”の意識を持ちながら、真摯にプレーしている姿がキチンと描かれている所だと、私は思う。
多少、ストーリー展開に粗い部分もあるが、見応えがある作品である。
ナチス兵から、英国民の英雄にまでなったバート・トラウトマンさんの激動の人生に驚くとともに、敬服の気持ちが鑑賞後に湧き上がって来た作品でもある。>
必死に生きる姿は人の心を動かす
非常に心温まるそして勇気をもらえる作品であった。
前半は主に戦争捕虜として生きるバードが描かれる。そして後半はマンシティのキーパーとしてイギリスで活躍するバードの姿が描かれている。
戦争を題材とした作品のため当初は重い内容なのかなと思ったが比較的優しい作品のため子供が見ても理解できるのではないか。
その為少し淡白に感じる場面も時折あるようにも感じた。
スポーツ作品が自分にとっては後半のマンシティで活躍するバードの姿は非常に興奮させられた。
戦争捕虜の過去やドイツ人という事もあって当初は批判の的となった。この辺りが良くも悪くもすごくマイルドにこの作品では描かれていたが、現実はもっと過酷な批判下の中でのプレーだったと思われる。
そんな中でも信じて共にプレーする仲間、監督、チームスタッフ。そして何より愛する妻マーガレットとその家族の存在があってこそ乗り越えられた事であろう。
そんな批判も黙々とプレーをし同時に最高の結果を残し続ける事で観衆を最後は味方にするわけだ。
これこそ真なるスポーツマンの姿でありとても興奮したシーンであった。
その後も長男を事故で失うなど困難が続いたバードとマーガレット。
それでも互いを信じ、そして許し合う事で前を進みづけた。
この許し合う事はバード夫婦に限らず、最初にバードを受け入れたマーガレットの父、そしてバードの必死なプレーを見守り続けた観衆もそうだろう。この許し合う姿もまたこの作品ではとても自然にそして美しく描かれている。
人は誰しもが過ちを犯す。もちろん過ちを犯したものは反省はしなくてはいけない。同時に周囲もまたその姿を見て時には許し、受け入れ共に生きていくことの大切さをこの作品では感じさせてくれる。
重ねていうが人は過ちを犯すものだ。そして同時に反省しなくてはいけない。ではその後はどうするのか。ひたすら前を向き今できる自分の力を精一杯発揮して一生懸命に生きる事ではないか。必死な姿、一生懸命に生きる姿は人の心を動かす。そんな事を改めて感じさせてくれる作品であった。
自分に忠実にあれ!
この映画を見たいと思った理由は、負の遺産であり第二次大戦の侵略者、それに、ユダヤ人たちに対する卑劣な差別や殺害などの結果。ドイツの軍人に対する連合軍側の差別を映画で見たかった。当時の様子をなんらかの形で観てみたかった。ユダヤ人差別はかなり多くの映画になっているし、あちらこちらに、ホロコストの負の遺産を残すために、記念碑が建てられていて、自ずと、共鳴する。
果たして、ヒットラー政権崩壊後、ドイツの人々、軍人はどう生きていったんだろう。自分の存在を隠していきてきたのだろうか? 差別の影響も並大抵じゃないだろうし。Bert Trautmann (David Kross) _がなぜ英国マンチェスターのフットボールのチームに入れたのかも不思議だし。数多くの疑問があったし実在の人物なので、鑑賞動機も高まった。
1944年バートのドイツ軍が、ライン川の近くのクレーヴェ(Kleve )という所で、捕虜になり、北東イギリスのランカスターのLancashire Camp で捕虜生活をしているところから始まる。
好きなシーンは:
1)マーガレット。マーガレットはバートに興味をもっても、敵だったということで、苦しむ。敵を好きになってはいけないがマーガレットは心が動く。二人の心の中が理解できるので、一番美しいシーンだと思う。
2)1949年、バートはマンチェスターに出かけて、契約する記者会見がある。これが、興味深い、まるで裁判やヒヤリングのように記者は、バートの過去に対して質問を投げかける。彼は志願してナチスに入ったと調べが。でも、自分が何をするか、軍にはいったことでどうなるかもなににも知らなかったと。洗脳されていたわけだから、理解できる。軍に入るか、入らないかの選択肢がなく、自分がフロントラインで戦い始めたときはもう遅すぎた。フットボールのゴールキーパーとしての質問はなし。 これだけ、避難責めの質問にコミッショナーたちはストップをかけるが、バートはそれを振り払って、彼にとっての真実を話す。この姿勢に感動した。マスコミの前で、そのままの自分でいるという強い信念をもっている。自分の過去はどんなことがあっても変えられないから、自分の過去が捌かれようとも透明にする。それで、あとで信頼を獲得できるから。
嘘というのはどこかで辻褄が合わなくなるし、自分に卑怯になりたくないんじゃないか?
そして、帰り道、疑いを持ち始めた伴侶マーガレットに。自分を信じてもらうには今の自分しかないんだ。いま、自分に忠実に生きていたらと。そのあと、ゴーリーがアイロンクロス(Iron Cross )にいたと、新聞にも載る。自分の生き方が問われる映画。後で、YouTubeのBert Trautmann Storyをみたけど、彼の生き方についての情報が少なかった。でも一言、自分を救って、教育してくれた、イギリスに感謝すると。
3)マーガレットが、ユダヤ人の多いマンチェスターでバートのプレイを反対している人々に言った言葉『ドイツのやったことは絶対に忘れてはならない。でも、許せないという意味じゃない。バート軍隊に四年いたけど、それを否定していない。ひとりでいたわけじゃない。このすべて起きたことは彼だけの責任にできない。私は彼のことを軍人として知らない。人間としてしか知らない。』ユダヤ人のラビがこれに耳を傾ける。力強いシーンだ。
バート・トラウトマンは1949-1964年マンチェスターシティーFCのゴールキーパーをして、両国の架け橋となった。彼は退職後海外のチームの指導に当たったらしい。二人はすでに離婚していて、マーガレットは千九百八十年になくなった。バートは二千十三年になくなった。二人には息子が二人いると。バートは女性に人気があったらしくマーガレットの前に、女性がいてその女性との間に女の子フリーダができ、バートは二人をおいて去ったらしい。四十二年後に、フリーダが母親をバートにあわせたと。YouTubeのBert Trautmann Storyから。映画では、必要ない部分や不名誉な部分を省いているかもしれない。
蛇足
ドイツの俳優デビッドクロスのフットボールの動きがいいと思ったら、2004-2006年まで、プロバスケットボールクラブに所属していたと書いてあった。
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