「おばさま向けの【童話】か【お伽噺】」ブリット=マリーの幸せなひとりだち コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
おばさま向けの【童話】か【お伽噺】
スウェーデン映画なので、いろいろ考えさせられるところがあり、見ごたえがありました。
表層的事項のみで鑑賞すると、「偶然うまくいった」「なりゆきのままで、ご都合主義な」「平板でありがちな」つまらない話に見えなくもないです。
サッカーのくだりは、私も「素人にはいくらなんでも無理じゃないの?」というツッコミをしたくもなりました。
しかし、スウェーデンって専業主婦率2%で、基本的にほとんどの女性が結婚後も仕事をしている国なんですよね。
1960年代から政府が積極的に女性の就労を促し、福祉を担う保育所や介護施設などを整備し、無料(ないしは少額で)で利用できるようサービスの拡充に多くの予算が配分され、法律や制度も仕事と家庭を両立しやすいように変えてきた国。
そこで主人公のおばさま・ブリット=マリーが専業主婦をやってるということは、(子供もおらず、介護する親もおらず、旦那は相当稼いでいるってことはありつつも、それ以上に)「働かない理由」があるということかと。
そう思いながら観ていると、彼女がなにがしかの「心の傷」を抱えて、「主婦業」になにがしのこだわりがあり、「変わらない日常」を欲していることが見えてくる。
この主人公は63歳だが、10歳前後で心を閉ざし、成長をやめてしまった人ではないのか? それが、今の10歳前後の子供たちと触れ合うことで、再び時計の針を進めることを決意するという物語なのではないか、と途中で気付きました。
歳をとっていても、いくつになっても、諦めさえしなければ変わることはできるし、どんなことでも挑戦できる。
挑戦を忘れないその心の持ちようが、真の意味でのひとりだちではないかと、本作は提起していたように思いました。
それが、本作中で語られる、「UEFAチャンピオンズリーグ 2004-05 決勝」のエピソードに絡んで、説得力を増していました。
ところどころ都合よく進んでしまうのも「体は老人、心は少女の人」向けの【童話】や【お伽噺】だと思えば納得。
そんな視点だと、すがすがしく楽しめる作品に仕上がっていたと思えます。