「悪役のいない大人のメルヘン」ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 永遠と自動手記人形 レレレさんの映画レビュー(感想・評価)
悪役のいない大人のメルヘン
実はタイトルは
浜村淳さんが「男はつらいよ」シリーズを評した言葉だが
本作にも当てはまるので拝借した
厳密にはエイミーの父が悪役と言えんことも無いが
結果的にエイミーとテイラー助けたし
それによってヴァイオレットと出会えたので不問とする
前半は昭和の少女漫画風味
後半は世界名作劇場風味で
一粒で二度美味しい
美しい物語
そして主人公と仲間たちが
ゲストキャラの生き別れた姉妹の絆を繋ぐという意味では
「男はつらいよ」風味の人情劇でもある
プロットをちょっと加工すると
寅さんにそのまま使える
ヴァイオレットが寅さん
エイミーがマドンナ
テイラーがその妹で
ベネディクトが満男(寅さんの甥)
ライデンが柴又で郵便社はとら屋
マドンナは訳あって別れて暮らしてたテキ屋の娘で
テキ屋の旦那に頼まれた寅さんが
マドンナにテキ屋指南をする
その仕上げは夏祭りの盆踊り
一方とら屋にマドンナの妹が訪ねて来る
彼女は絵本作家を目指していた
そこで満男が小説家と知って
お話の作り方を学ぶべく弟子入りする…
てな具合にスラスラと換骨奪胎出来てしまう
あと作画がとにかくリアルかつ美しい
山々の風景や街並み等
わずか1秒ほどしか映らないのに超緻密
踏み荒らされた雪道とかボロ屋の中とか
本来汚いはずなのに美しく見えるから凄い
そして話題になった具の少ないスープ
これも1秒ぐらいしか映らないから
普通の作品なら適当に色塗って終わりだろうけど
その色彩に優しさを込めようとした職人魂には
敬意を表したい
最後に事件の話を少しだけ
初めて本作のEDを見た時
そこに並ぶ殺された方々の名前を見て
どす黒い怒りに囚われた
「あの犯人この美しい作品作った方たち殺したのかよ」と
映画館では再上映を含めて6回見たが
2回目以降は上映終了したスクリーンに
手を合わせるようにしている
これはその後も京アニ作品を見るたびに実施している