燃ゆる女の肖像のレビュー・感想・評価
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素晴らしいエモーショナルムービー
素晴らしい。もう『野菊の墓』(松田聖子主演)です。完全なる切ない恋愛。まあ絵描きの話くらいにしか思わず観に行ったのだが(笑)、アニエスヴァルダのような古典映画の快楽を持った現代映画。アデル、ブルー…も思い出した。 荒涼たる風景の、しかし壁の色、波の色、草木も光も絵画的な隔離された屋敷に、絵描きと嫁入り前の娘が肖像画を描くまで暮らす。その間に起こる魂の交換と原始的な恋愛のはじまり。狙いに狙ったバックショットが美しい。出会いの海辺の振り向きと、別れ間際の波打ち際の後ろ姿と。 ミニマルに攻めていって中盤ようやく音楽が加わり、ラストで一気に雪崩れ込む感情のピーク。オルフェのエピソードにもはっとさせられた。
音楽も説明も極力削ぎ落として語るモノとは。
とにかく全てが美しい。人物も風景も絵画もそして音さえも。 場面を盛り上げようとする音楽は一切無く、だからこそキャンバスを力強くなぞる筆やゆらめく炎の音が印象的なのだろう。 とっつきにくい、わかりにくい、と感じる人もいるかもしれない。が、説明的なモノは何もなくても18世紀がどういう時代だったのかを多弁に語っている。 今ヴィヴァルディの「夏」を聴きながらラストシーンを反芻している。 エロイーズ、あなたはなんて人なんだ!
女優も映像も美しいが
予備知識も全くなく予告編も見ず、映画賞とレビューの評価だけで見ました。 主役の女優二人はとても美しく、女性監督作品らしくきめ細かで全てのシーンが絵画的な美しさはありました。しかしストーリーはかなり地味で上映時間が長く感じました。 女性向けの映画なのかも。とにかく美しい映像は印象に残りましたがお勧めはしにくい。
なんか観いってる
170本目。 観たい作品が多く公開され、選択に悩む。 で取り敢えず今日はこれかなと。 カンヌとか出てきた時点で、ハードルアップで、俺向きじゃないかなって。 実際そんな感じはあるんだけど、でもなんか観いってる。 それは多分、ほぼ女性しか出てないだけなのかも知れないけど。
視線と表情で描く究極の恋愛表現!!
まだ限られた職業でしか、女性は社会に居場所を見出すことができなかった時代の中で、多くの女性が社会進出のきっかけとなったのが画家という職業でもあったことから、マリアンヌは18世紀のフェミニストでもあるのだ。 しかし、固定され、限られた概念の中では、まだまだその先に進むということは、未知の領域であり、人間として、女性として許される行為なのかということも判断が難しい環境だった。 時代を通してみれば、同性愛というものは、18世紀以前から存在していたものではあるのだが、芸術や歴史の中で知っていることと、自分の身に起きることでは、全く違ってくるだろう。 マリアンヌはフェミニストではあっても、少なくともエロイーズと出会うまでは、異性を愛し結婚をすることへの反発はあったものの、レズビアンではなかったように思えるし、そもそもその概念自体がマリアンヌの中には存在してなかった。 それがエロイーズと出会い、肖像画を完成させようと、表情や仕草のひとつひとつを観察するうちに、マリアンヌの中に何かが芽生えてくることが伝わってくる。その伝え方というのが、映画的でわかりやすい表現などによるものではなく、マリアンヌとエロイーズの視線や表情からなのだ。 そこには、女性同意の恋愛を描いているという表面上的なものではなく、人間が人間を愛する瞬間を絵画のように、詩のように、美しい景色をキャンバスにみたてて描いていくのである。 手が触れるかもしれない、唇が触れるかもしれないという緊張と恐怖、愛を交わす喜びが自然と口元に現れる。 細かい視線や表情だけで、どうしてここまで人を愛すること、愛の誕生の表現が可能なのかというと、勿論、今までにも女性同士の恋の芽生えを描き、自身がレズビアンでもある監督のセリーヌ・シアマや撮影のクレール・マトンの力、そして俳優達の演技力もそうなのだが、監督とエロイーズ役のアデル・エネルは、かつて実生活において、恋愛関係にあった間柄なのである。 本編でみせるマリアンヌの眼差しは、正に監督自身の眼差しでもあるのと同時に、アデルの目線も監督を見る眼差しなのである。 結果的に別々の道を歩むことになり、別れてしまった2人にとって、肖像画を描き終えることは、愛に終わりがくるという、マリアンヌとエロイーズの心情に重なるというメタファーともなっているのだ。 美しい景色と、優しい波や風の音が凄く心地よい作品でもあることから、寝不足では観ないことをおすすめしたい。視覚、聴覚的にかなり眠気を誘われる作品である。
美しき諍い女
おー、エロイーズは監督と好い仲(別れた後らしく)なんですね。マリアンヌは'不実な'時から好きなんですが、この人は眼力が凄いですね。メイドちゃんが何気に可愛かったです。 お祭りで皆が歌っている歌詞はなんですか?Fugere Non Possum 囲われ者… 兎に角、画面が綺麗で全部がカレンダーになるくらい凄いです。
遂に、、、
タイトルロールが始まり冒頭の3分間で私は、この映画に恋をした。 ブルターニュの空をターナーのように切取り、睦みのシーンではルノワールのように肌を彩る その撮影力に惑わされるが、黒いマントを羽織り女達が佇む姿はカスパー・フリードリヒのように悲劇へと暗示する 音楽にいざなわれる対話劇は三島の『サド侯爵夫人』のようにエロスの園へと変容して行く そして、訪れる結末 その死から34年目にして私達はトリュフォーの後継者に出逢った。
【オルフェとユリディス】
18世紀のフランスは、絶対主義が揺らぎ、ブルジョアジーが台頭し、革命が起きた時代だ。 ただ、この時代、まだ、カトリックの教えは支配的で、男性は女性に対して優位な地位にあった。 それは、ソフィの妊娠、そして、カトリックでは神の意思に背くおして禁止されている堕胎を人知れず行わなくてはならなかったことからも推測される通りだ。 また、禁じられていると云うところでは、同性愛も同様だ。 この作品は、プロローグからエピローグまで独特なピンと張り詰めたような緊張感が続く。 おそらく、現代とは異なり、この時代にはより厳しく禁じられていた同性愛が物語のテーマになっているからだろう。 マリアンヌとエロイーズの互いに抗えない気持ち。 エロイーズが抗うことの出来ない自身の運命。 この対比も独特な緊張感に繋がる。 こうしたなか、マリアンヌとエロイーズが画家と肖像画のモデルという関係を超えて接近し、気持ちが変化する様は、切なくも美しい。 作中で、引用されるオルフェとユリディス。 オルフェは振り返り、ユリディスは息絶える。 ユリディスは、オルフェに振り返って欲しかったのではないのか。 エロイーズは、ユリディスを自分に重ねたのではないのか。 抗うことの出来ない運命からは逃れられないと知っているから。 しかし、オルフェとユリディスの物語には続きがある。 息絶えたユリディスの後を追い、オルフェも自ら命を絶とうとするが、神はユリディスを生き返らせ、オルフェの元に返すのだ。 マリアンヌは、オルフェとユリディスの物語のように、エロイーズと再会できるのだと信じていたのではないのか。 だが、エロイーズはマリアンヌがそこにいると気付いていながら、涙を流し目を合わせようしない。 オルフェとユリディスの物語は男と女の物語だ。 神はこれを許しても、マリアンヌとエロイーズの愛を許さなかったのかもしれない。 燃ゆる女の肖像は、内面に燃えたぎる愛情を秘めた女性を表したものなのだろうか。 僕は、もしかしたら、この時代にあって、同性愛という禁忌を犯したものは焼かれるのだということを示唆しているのかもしれないとも思った。 時代背景、心の揺らぎ、運命、対比、引用された物語と似た展開と異なる結末が相乗効果と独特な緊張感をもたらす秀逸な作品だと思った。
圧倒的怒りと、束の間の(貴女にしか見せない)笑顔
《怒り》と(貴女にしか見せない)笑顔 --- 別れの瞬間、当人にしか分かり得ぬものを表現する。カンヌ国際映画祭脚本賞は伊達じゃない、流石のキャラクタースタディと構成力に唸る。けどそれを可能にしたのは、紛れもなく目が離せない主役二人の演技と演出による所が大きい。予定調和でなく二人の行く末が気になって仕方がない。日本語で言うところのシュールに変な緊張感が漂う。時にスリリングで、時に不思議とユーモラスですらあるという独特な空気感、作品を包む雰囲気が素晴らしい。何層にもなっていて考えさせられる。 《波》が高い ---- 主人公が自画像を描くシーンとラストカットは圧巻の一言で、本当に見入ってしまった。ポスタービジュアルにもなっている、火を囲むまさしく燃えるシーンもすごい。心をじっくりと時間をかけて開いていき、束の間の幸せの後に、性別/時代(= 女性であることの窮屈・不自由さ)や身分によって葛藤する様もリアル。安易な表現になってしまうが、もう出会うことのないと思っていた所から遂に見つけた情熱や命の炎。例えば本作が何年と明確に明示されていないのもと邪推したり、刹那、かくも魔力の虜になる。そうした普遍性故かも。どうしたら出来上がり?その時が来たら --- 28ページ P.S. 主人公二人はデイジー・リドリーとグレタ・ガーウィグに似ている 勝手に関連作『美しき諍い女』『キャロル』『君の名前で僕を呼んで』『モーリス』『マディソン郡の橋』
タイトルなし
波立つ海・吹き付ける風 古城・蝋燭の灯り・肖像画 その絵画のような美しい映像 . 18世紀 フランスブルターニュの孤島が舞台 結婚を控える貴族の娘エロイーズ 彼女の肖像画を依頼された画家マリアンヌ 一緒に過ごすうちに芽生えてくる感情 肖像画の完成は 二人の別れを意味する . 使われているのは2曲だけ その効果は大きい 女性たちの合唱 🎼Laleune Fille en Feu :ニーチェの詩から引用した歌詞をラテン語に書き起こしたオリジナル曲 ピアノで弾きそして映画のラストを飾る 🎼ヴィヴァルディ 協奏曲第2番ト短調 RV315「夏」 ラストシーン エロイーズの表情から目が離せません . 『愛の美しさと共に美術や文学や音楽などのアートこそが私たちの感情を完全に解放してくれることを描きました』 (セリーヌシアマ監督) . 下女ソフィとの関わりもよかった でもベッドに横たわり涙するソフィに 無邪気に手をのばす手。 このシーンは辛い
劇場の大画面で圧倒されましょう
TIFF2020にて鑑賞。前評判が良いので、早く観たかったんです。 まず、この作品は劇場の大画面と音響で観て頂きたいですね。 演技、映像の迫力は素晴らしいです。 大画面に負けてません。熱量。眼力。すげーです。女優さん、メインの3人。凄く良いです。 相手をより深く知るという画家とモデルの関係性が恋愛に昇華していくお話ですが、18世紀という時代性、舞台の土地の風景、音楽、演技、そしてそこに絵画の力が重なり、恋愛の進行がドラマティックに描かれるます。静かに熱く。 中盤、女子お泊まり会モードのようなパートが大好きです。 身分を感じることなく、イチ女性として絆と力強さを感じられるから。その空間で描き出されるのは「自由」「現実」「正直」「強さ」「意思」「愛」かな? まさに、生きたいように生活している、満たされてる時間に見えます。 18世紀は女性にとってはそれらを容易に手に入れられない時代だったのでは?と勝手に推測する故、本作は女性自身の自由を謳う作品だと思います。 後日エピソードも見事。たまらんですよ! ラストは、まー、画面に釘付けでした。 瞬きできませんでした、いや、するのが惜しいラストカット。 切ない、切なーい。
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