燃ゆる女の肖像のレビュー・感想・評価
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長い時を経て
ジェンダーバイアスが今よりももっと強かった時代に、マリアンヌとエロイーズみたいな人は沢山いたのでは?と想像します。今までは何気なく観ていた肖像画ですが、もしかすると様々な暗示が込められているのかもしれませんね。穏やかな外見とは裏腹な激しい内面を、まるで肖像画の様に微妙な表情やしぐさで表現していた作品でした。全体的にブルーかかったフィルムも美しかったです。長い時を経て、今やっと彼女達の気持ちが作品を通して世に出ましたし、LGBT作品でも女性を描く作品と女性監督が増えてきているので、これもとても嬉しい変化ですよね。LGBTの先人達もあの世で喜んでいることでしょう。芸術や文化はその人が亡くなってもこうやって次世代に引き継がれるので、今非常識とされることでも反抗してやってみる価値は大いにあると思います。
美しい映画
画家のマリアンヌは貴族の娘エロイーズのお見合いのため肖像絵を描きに訪れる。絵を描き/描かれるうちに二人は惹かれあっていく。 ジャンルとしては「芸術系映画」。どのシーンも美しく絵になり、地味な映画ながら飽きさせないのは素晴らしい。 マリアンヌとエロイーズの恋を主軸に、抑圧された女性が描かれている。かといって、男性が悪者として描かれているわけではなく、むしろ男性は作品から徹底的に排除され、ほとんど登場しない。あくまで女性を淡々と描いている。 二人が惹かれ始めるのが少し唐突に感じた。 本作は批評家から絶賛されているが、批評家でもマニアでもない私からするとそこまで・・・という感じ。 見て損はしなかったが、心に残る映画ではなかった。 ラストシーンに重要な意味があるそうなので最後まで気を抜かずに。私には読み取れず。
ロングドレスごっこに思いを馳せる
18世紀フランスで貴族の娘と彼女の見合い肖像画を描く画家との恋愛映画。 画家の視点で、映像が絵画のように美しい。それは例えば壮大な海だったり、光源の少ないキッチンだったり、白い布のかかった居間においてあるチェンバロだったり、黒い布の服をきたモデルの貴族の娘だったりする。 恋愛ストーリーはことこと煮込まれていくようで、どういう結末を迎えるか知っているのに行方が気になって引き込まれてしまう。 同時に象徴派のように謎も多い。いくつかの謎ははっきり回答がでないまま映画が終わる。 ストーリーの要素として男性との関係(結婚など)が大きな比重を占めるにもかかわらず、この映画にはほとんど男性が出てこない。それだけではなく、覚めて正気にもどされるような引いてしまう要素がない。不思議と勝手知ったるといったような心地よいノスタルジーを感じた。 最後になるが邦題も素晴らしい。ちょっと時代を感じる古めかしい言葉遣いや、ロマンでありロマンスであることを理解できる題名で、不要な副題もなくていい。
♪僕にパスをください あゞ藤井ノンパス藤井ノン
人により退屈する可能性あり。 間を感じ取れたり、モナリザの絵とかを20分眺めていられる人にはよい作品だろう。 序盤ひたすら無言、たまにしゃべっても柔らかいフランス語、さらには海や風や火などのやさしい音が多く、睡魔との戦いとなる。 その格闘の中、字幕がまた早い。1度でも見逃すと物語についていけなくなる可能性があるので、かなり気を引き締めて見ないといけない。 作品の社会背景とかが分かると少し面白い。解説サイトを推奨する。 良い点 ・振り返るオルフェの解釈 ・寄りそう赤ちゃん ・展示会の絵 悪い点 ・冒頭の画面の面々が先生以外は物語に無関係。 ・一見アマチュア映画にも見える。
画と音の圧倒的な美
燃ゆる女の肖像-今年ベスト級の映画に出会ってしまった。全てのシーンが絵画のように美しい圧倒的な画の力…(冒頭の暖炉の前で煙草をふかすシーンから一瞬で虜にさせられる)そこに与えられる甘美な音の表現がまた凄い。キャンバスをはしる筆の音、暖炉で薪が燃える音、家具や床の軋み、蝋燭や煙草を灯す音、パンとワインを食する音、刺繍の針と糸が布を通る音、風や波の畝り、息遣い、瞬きの音すら聞こえてきそう…そんな静けさの中に響く無数の音に誘われ没入していく。それらの音が音楽へと変わる限られた場面では彼女達の感情の隠微が現れ、二人の心が燃え上がる瞬間に流れ出す歌はそれまでの静寂を打ち破る、緩急という言葉ではおよそ片付けられない鮮烈な、鳥肌が立つシーンだった。そして彼女らの眼差しとスクリーン越しに目が合う瞬間、じわりと身体の奥底が熱くなるのを感じた。息をのむエンディングはcall me by your nameのそれと並び称したい。大げさじゃなく全人類に見て欲しい傑作。
画は綺麗で尤もらしいが。
中盤で物語が動き出すと急に緩む。不穏で哀しげな序盤は楽しんだが。描き描かれ撮り撮られる不気味ならダゲレオタイプの女に、同性の愛の熱と虚脱なら櫻の園に軍配。臨時家庭教師の性の手ほどきの書式で深い愛を語るのは土台無理。画は綺麗で尤もらしいが。
日常の音を再認識した
うわーーーっというエロシーンはありませんでした。(安心) 波の音、人の息、軋む床、BGMがなく生活と自然の中にある音にとても敏感になる作品でした。 映像も素朴感の中に際立つ美しさが切り取られた瞬間が多かった。素晴らしかった。 登場する女性の生き方が、時代に逆らわない(逆らえない)部分がリアルで良かったです。 作品の終わり方が色々と考えさせられるので、余韻が残りました。 決断!!!の表情が素晴らしい。 静寂のシーンが多いので、ポップコーンを食べ切るのに苦労しました。(汗) あと突然の映像にビクッとして、むせ返った時は大変でした。マスクの中にポップコーンが。。。 美術鑑賞みたいな作品。 世界観を堪能しました。
一瞬一秒、息も出来ぬ圧倒的な美しさ
「ため息も出る美しさ」という表現があるが、この作品はため息すら許さない美しさ。 ・2人の気まずい沈黙の空気から手の届かない官能的な空気感。 ・登場人物を観察するかのような長回しカメラワーク。 ・島の風景とその空間の撮り方。 ・波の音、民族音楽、オーケストラ(ヴィヴァルディ)など映画館の音響を引き出すサラウンド。 その全てが研磨かれた圧倒的な美しさ。 この映画はとても淡々な展開し、とてもあっさりと幕を閉じる。 観客側としてはこの映画が創り出す「手の届かぬ儚さ」という美しさにもっと浸っていたかったのだが、とてもあっさりと終わってしまうのだ。 展開だってそう。 全てはこのシーンの為に!という普通ならベタ演出で観客を泣かせるような大切なシーンもなんの飾っけもなく淡々としている。泣かせる気もない。 しかし、そこにこの作品ならではの「美しさ」がある。 暗闇の劇場の大スクリーンで映画を観るという行為に付きまとう虚しげな感情。 ーすぐそこにあるのに手が届かない この悶絶にも似た感情を観客に爆発させる美しさと官能。 そして、追い討ちをかけるのがこの「あっさりと終わる」だ。 『バードマン 或いは…(略)』でも表現されていたあくまでも日常の延長線上にあるストーリーで現実味が増すし、感情移入もしやすい。 この映画鑑賞の副産物とも言える感情を引き出すように創られた繊細で綿密な脚本でした。 カンヌ国際映画祭脚本賞も納得。 最初は「燃ゆる女の肖像の美しさに萌えた!」みたいな感想を書こうとしたけど、正直な感覚とは違ったのでやめた。 萌えなかったし。でもこの映画を生み出した監督の才能に対する嫉妬心は燃え上がりました。 ああ… この映画はこれからもっと観ていきたい。(見事、作品の罠にハマってる)
取り残されました。
なんというか、全く感情移入出来なかったんですよね。すべてが“嘘”に見えるというか…。 共感出来なかったから、ですかね? (もう途中からお遊戯にさえ見えてきて、「勝手にしてくれ…」という気持ちにまでなってしまったのは、私が悪いですかね…) あと、ここまで音楽が無いのも珍しい。 劇中曲の大切さを思い知る。 もちろん、波の音とか、小鳥のさえずりとか、暖炉の音とか、息遣いとか、美しいとは思うんだけどそれじゃないというか…。 いつか観た「ロニートとエスティ」という映画のことを思い出してしまって、また観たいなあと考えちゃってました。 年内にもう一回見ようっと…。
〇〇新聞の映画評であまり出ない星5つだったので、とても期待して観に...
〇〇新聞の映画評であまり出ない星5つだったので、とても期待して観に行ったけど‥自分にそっち系の要素がない上に、女性2人が好みのタイプじゃ無かったので(ちょっと逞しい感じが…自分ツッコミ、オヤジか⁉︎)なんか入り込めなかった。ラストは良かったな。
恋愛映画に惹かれたことはなかったが
繊細な表現にこころふるえる。 打ち寄せる波、木の床をコツコツと近づく靴、走るスケッチの鉛筆。そして突然響く音楽。祭りの女たちの唄、ヴィヴァルディ。 見ることと見られること。追憶を表現するものと、現在を生きていくものの別れ。
終始、美しさに息をのむ。
劇中に演奏・歌唱シーンが少しだけあるもののBGM をいっさい挿入しない演出が素晴らしい。その静けさと映像の美しさに終始息をのんでしまいます。 圧巻は作品の余韻が残る無音のエンドロール。たしかにこの素晴らしい作品にヘタに音楽を流してしまっては台無しになってしまいますもんね。 主演のふたりの、表情で心情を語る演技も秀逸でした。 ベースは恋愛映画ですが、その芸術的なアプローチは観るものの感性を刺激しまくる傑作だと思います。 (この映画を観る時の注意点) とにかくずっと静かな映画ですので、ポップコーンは控えたほうが良いかと思います。
絵画を映像にした芸術映画
映画館にあるチラシを見てこの映画を見ました。 娯楽映画というより芸術映画でした。なので面白いかどうかというより、百合や女性の裸を美しく魅せている。 個人的に印象に残っているシーンは最初に主人公の女性が暖炉の前で裸で体育すわりをしながらパイプを吸うシーンが印象的でした。 女性画家と貴族の娘の報われない恋を官能的で切なく、最後には情熱を通り越して怒りを表しているようにも見えた。
女たちのものがたり
登場する、それぞれの女たちが抱えているこの時代ならではの葛藤。 それを共感しあい、助け合い、励ましあいながら生き抜く姿が、視線に集約されているようだ。 どの女性が、どんな視線を保ちながら生きているのか。 最後まで見なければ、わからないかもしれない。 こんなにエンドロールが短い映画も、珍しい。 見るのか、見ないのか。 見ずしてどう、伝えるのか。 うまい演出です。 さて、見ます?
オルフェが振り返らなかった先に光はあったか
過去の思い出とどう付き合っていくか。 2人の選択は、繊細かつ清々しい強さに満ちていたと思う。 観終わったあとの余韻が長く心地良い。 悲しい話と言えばそうかもしれないけど、個人的にはむしろポジティブな生命力を感じる幸せな映画だった。 あとたぶんこの映画でポップコーンを食べるのは至難の業です。
コロナの2020年にこんないい作品に出会えるとは
最初この映画を知ったのは予告編だった。鬼滅だったか、何の映画かは忘れたが、どこか強い磁力をこの作品に感じた。何がと言われても具体的にこれっ!というわけではない。正直言って現代でない、時代。それもフランス。これまでだったら見ることはなかったが、見事に心臓を鷲掴みされた。 映画音楽はなく、彼女たちの感情の起伏をその場に居合わせて吸い取ったような感じというか。火が燃えるパチパチという音、ドレスが擦れる音。とにかく目撃者として、この映画を体感した、そんな印象だ。コロナ禍の2020年。あと何本か見るつもりだが、この映画に巡り会えたことに感謝したい。
尊くて美しい
ゆっくりとした独特の会話の間と静寂。思っていたよりも相当に繊細で控えめな表現だった。 横顔、デコルテ、視線、その寄せ付けない様な美しさと微かな心の触れ合いは、最後の抱擁の為に用意されていた。 内側に秘める熱を抑えた抱擁。このシーンに凝縮された想いは尊くて大切に思える。 静寂の中にフワーッと流れ出す民族音楽的なコーラス曲もたまらない気持ちなる。そっと深いところに入り込んで、気持ちを掻き乱すのだ。 どこかで繋がっているという想いは、美しくて永遠だった。
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