「そのままでも愛すべき好作。背景を知るほど傑作の感を強くする」燃ゆる女の肖像 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
そのままでも愛すべき好作。背景を知るほど傑作の感を強くする
女性の人権や自由が男性より低く見られていた18世紀末のフランス。伯爵家の娘エロイーズは親に縁談を決められる。画家の父親と同じ職についたマリアンヌは慣例にならい父の名で作品を発表している。そんな2人が、見合い用肖像画の制作を通じて出会い、芸術を愛し自由を渇望する互いの魂に触れ、恋に落ちる。
監督・脚本のセリーヌ・シアマは、やはり女性同士の恋愛を扱ったデビュー作「水の中のつぼみ」のヒロインにアデル・エネルを起用。シアマはエネルと一時期パートナーだったが、友好的に別れた後、エネル(仏映画界でのMeToo運動の牽引役でもある)に新境地を拓いてもらいたいとエロイーズ役をあて書きしたという。監督の心情がマリアンヌに投影されたと知れば、ラストシーンでエロイーズを見つめるマリアンヌの眼差しから伝わる切なさが一層増し、彼女らの絆に感動も一段と深まるはず。音楽の使い方も絶妙で、焚火シーンの劇中歌は鳥肌もの!
コメントする