「『サウンド・オブ・ミュージック』のパラレルワールド」名もなき生涯 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)
『サウンド・オブ・ミュージック』のパラレルワールド
一般的な日本人には(少なくとも私には)実感的な理解が及ばないほど信仰心が厚いピュアな夫婦の精神世界の物語(作中、夫は肉体的には亡くなるけれど、メインテーマはそこではないという意味です)。
名前からしてフランツ、たぶん中世イタリアの聖人、アッシジのフランチェスコのドイツ語読みなのではないでしょうか。イタリア旅行を計画したことのある人ならば、サンマリノ共和国の南に位置するアッシジといえば、ああそういえば、と思い出す人もいると思います。といっても〝清貧〟というイメージしか知らないので、何をもって聖人に列せられたのか私はよく知りません😅
アメリカのサンフランシスコという地名もここに由来していると思うので、キリスト教世界の聖人番付(不謹慎な言い回しで怪しからん‼️と怒られそうですが)でもトップクラスの方であることは間違いないと思います。
そういう聖人にも擬せられるほど気高い、名もなき人、という前提でもないと私のような世俗的な人間にはラスト近くのあの場面で、妻が『正義を貫いて!』などと言うのが理解できないのです。もし、私があの場面で妻の立場にいたら、絶対こう言います。
子供たちのために、兵役拒否を撤回して生きていて‼️(その後の戦争でどうなるのかは別問題)
神様だって許してくれるわ、これだけ頑張ってきたのだもの。
正直、〝殉教〟という概念は、私にとっては、『サイレンス 沈黙』のようなドラマの中での話であって、現実的に存在するということがうまく受け止めることができません。
市井の〝名もなき人たちが世の中を支えている〟ことについては、クリント・イーストウッド監督がこれまで何度も鮮やかに描いているので、その点もつい比べてしまいました。
ところで、時代背景的には、ほぼ同じ時期に『サウンド・オブ・ミュージック』のトラップ大佐とマリアとその一家は、ナチの傀儡となったオーストリアの官憲達からアルプスを超えて逃げることに成功していたことになりますよね。
アルプスの稜線、爽やかな風が吹き抜ける草原、その風に乗って届く鐘の音。自然はいつもと同じように季節を巡らせる、というフレーズがとても印象的でした。
琥珀さんいつもお世話になっています。
確かにサウンド・オブ・ミュージックのパラレルワールドですね。相変わらず鋭いです。この映画をオーストリアの方々はどう観るかも興味深いです。
この所、戦争映画三本観たので、気持ちが戦場に行ってます。