「火炎瓶は最低の兵器」レ・ミゼラブル bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
火炎瓶は最低の兵器
いや、ミリヲタとして言わせてもらえば、あんなアホな兵器は無いから。簡単すぎ、残虐すぎ、安全装置なし。知恵のない、ただの人殺しが使う殺人兵器です。
2018年7月15日。FIFAワールドカップの決勝で、フランスはクロアチアを4-2で下して優勝。フランスチームでゴールしたのは4人。マリオ・マンジュキッチは旧ユーゴ、クロアチアの移民。アントワーヌ・グリーズマンはブルゴーニュ地域出身。ポール・ボグバはフランスとギニアの国籍を持つ。当時19歳のエムバッペは、フランス・カメルーン・アルジェリアの三重国籍。多国籍のフランスらしいチームを応援する群衆の中には、アルジェリアの国旗を体に巻いた男もいました。出自の違いを一瞬でも忘れ、フランスの優勝に歓喜した人々。
1998年、自国開催の大会で初優勝した後、フランス人記者は、こんな記事を書いて世界中に発信しました。「朝、窓の下を見ると、サッカーボールを蹴りながら学校へと向かう子供たちの姿がある。これが、この大会で優勝した、最大の意義である」。二回目の優勝を果たしたロシア大会で、かの国は何を得たんだろうか。なんて事を思うサカヲタが一人。いや、たまたまなんですが、映画鑑賞した日、フランス代表チームのレプリカユニ着てたもんで。背番号は11でナスリのネーム入りw フランス代表ユニって、ポロシャツみたいに襟が付いてるんで好きなんです!
◆「子供の悪さは大人の責任」。全くもって仰せの通りです。
"Lead" でしょうね。親が、大人が、「子供達にはこういう大人になって欲しい」と思う姿に、まずは自分がなる。それが全てだと思います。ちょっと気になって「しつけ」を英語辞書で調べてみると「discipline」「train」「teach」なんかが出て来ます。しつけも教育も「Lead」と言う単語は表示されなくて。我が国の概念でも、「教える事」「躾けること」は、一方向の矢印なんだ、って思った次第です。
いずれにせよ。
逆恨みで暴動を起こし、火炎瓶まで持ち出した少年を、撃てるか、撃てないか。見る人に問いかける手法は、ちょっと嫌かも。撃てずに火炎瓶に三人が焼かれれば、少年たちへの憎悪を招く。SIG SAUER Proの9mm弾に少年が倒れれば、おそらく、意見が分かれ議論になる。映画的にはですね、個人的には、撃つべきだったと思います。撃って議論を巻き起こすと言う選択もあるのではないでしょうか。
◆俺たちは本当にフランス人なのか?
サッカーで活躍すれば、称賛され英雄になる。落ちぶれれば、手のひらを返したような扱いを受ける。それが移民であれ、生粋のフランス人であれ、同じだと思うんですが。ただ、移民の子の場合、「国へ帰れ」と罵られる。どれだけ頑張って社会に貢献しようとも、その国に迎え入れられていないかの様に錯覚する、いや、疎外され違和感を感じる人の話は、良く聞く訳で。ジオディーヌ・ジダン(同じ移民である姉を侮辱されて頭突き退場した話はあまりにも有名)も、マリオ・バロテッリ(彼はイタリア代表。差別に悩むも、養父母の愛でドロップアウトから立ち直る)も。
出自による差別は無くならない。そうした数多の実例の中から、パリの移民団地の現実が描かれているのであろう、って所が結構刺さりました。
良かった。救世主がいないところがリアルで。