「「ラスト30分」はガッカリ」レ・ミゼラブル Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
「ラスト30分」はガッカリ
「ラスト30分」がスゴいという触れ込みで、何を見せてくれるのかと期待したのだが、ガッカリだった。
おそらく、監督自身の実経験が盛り込まれた、リアルなシーンだろう。
しかし、“物理的”な騒乱で、映像効果を上げるのはたやすい。
本当に怖く、かつ、描写する価値があるのは、“精神的”な騒乱や荒廃ではないだろうか?
むしろ、この作品の優れているところは、半分、“ドキュメンタリー”のような部分だと思う。
警官、“市長”、ムスリム同胞団、子ども達・・・。
いろいろな立場の人間が出てきて、各自の思惑の中で勝手に行動しているところが、とても自然だ。
誰がどういうキャラクターなのか、なかなか把握できずに錯綜するので、忙しくて目が回る。
あからさまな犯罪者を登場させることなく、普通の人間の寄せ集めから、“不穏”な状況を描き出しているところが素晴らしい。
環境が人を悪くする。周りがワルなのでワルくなるという、負の連鎖が見て取れる。
警官も毎日毎日なので、ムチャクチャな行為が、いつのまにか当然の権利のようになる。“恐怖”を“敬意”と勘違いするのは、ヤクザと変わらない。
新しく赴任した警官の“ポマード”は、その状況を見て取って、正しく行動しようと努める。
それが、本作品のテーマのはずだ。
「ラスト30分」では、やはり暴動まで描かないと、人々の心の沈殿した“ダークエナジー”を表現できないという意図があったのだろう。
“市長”も、実は警官と同じレベルで憎まれていたということも、ここで明らかにされる。
しかし、意図がどうであれ、結果的には、「希望などない」という“オチ”を付けただけに思える。
このラストのせいで、「結局、自分は何の映画を観たのだろう?」という残念な気持ちの方が大きい。
“バイオレンス系の娯楽もの”ではあるまい。
監督が本当に訴えたかったのは、何なのだろうか?