劇場公開日 2019年12月13日

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「貧困に喘ぐ家族を見つめる重厚なドラマ」家族を想うとき よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0貧困に喘ぐ家族を見つめる重厚なドラマ

2019年12月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

ニューキャッスル在住の非正規ワーカー、リッキーは長年建設業に携わってきたがどの職場も長続きせず、一念発起してマイホームを購入する夢を求めて漸くありついた仕事が宅配ドライバー。配送会社の雇用だと思っていたが実はフランチャイズの自営業。配送用車両はレンタルもあるがレンタル料が高すぎるし、自前で購入しようにもローンの頭金もまた高すぎる。介護福祉士として働きに出ている妻アビーの通勤用車両を売ってなんとか頭金を捻出したものの宅配ドライバーの仕事は想像以上に過酷で、先輩ドライバーから「これが大事だ」とアドバイスとともに渡されたのは尿瓶代わりのペットボトル。介護福祉士の仕事もやはり過酷で、訪問先のドアベルを鳴らしながら汚臭に備えて鼻にクリームを塗りたくる。来る日も来る日も家族の為に身を粉にして働く二人だったが、成績優秀だった長男セブは夜な夜な町に繰り出してスプレー缶で落書きをぶち撒ける問題児になり、聡明な長女ライザは不眠と夜尿に悩まされる。誰かに何かが起これば途端に破綻してしまうギリギリの生活を送っていたリッキー達はそれでも助け合い暮らしていたが、過酷な労働条件はいとも簡単にそのバランスにヒビを入れる。

邦題は全く嘘をついていませんが、ポスタービジュアルが醸す暖かい雰囲気はほぼ皆無。ワーキングプアからどう足掻いても抜け出せない善良な市民がとことん搾取され蹂躙されていく様を傍で見つめ続ける重厚なドラマ。曇天の空の下至る所に転がる貧困に押し潰されたような人々が俯いたまま順番を待つ病院の待合室でアビーが思わずぶち撒ける罵声が虚空に飲み込まれるのを見つめているのは胸が痛いです。

昨今貧困、老々介護、各種ハラスメントといった社会現象を真正面から描く社会派作品が身近になってきた感がありますが、それは即ち我が祖国においてもそういった問題が全然リアルになっているということに他ならず、エンドロールが終わってもすぐに立ち上がる気になれませんでした。

よね