「"豊かな"現代社会」家族を想うとき ごいんきょさんの映画レビュー(感想・評価)
"豊かな"現代社会
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余裕のある暮らしがしたくて宅配業として独立するが、独立とはほど遠い業務委託だった。家族のためを思い、働けば働くほど、家族と過ごす時間はなくなり、家族はばらばらになっていく。救いようのない状況で始まり、救いようのない状況で終わる。映画としてのカタルシスも何もないけれど、これが先進社会のもたらした現実なのだ。
思えば、私が子どものころは、貧しかったけれども、父親は夜はいつも家にいた。母親ももちろん家にいた。職住近接で6時ごろには全員そろって夕食を食べていたと思う。今、そんな家庭がどこにあるだろうか。まだまだみんな職場にいる時間だ。確かに社会は便利になった。家の中は物で溢れている。ファストファッションのおかげで破れた服を着ている者などいない。携帯をもっていない人もいない。テレビの買えない人もいない。でも、どうなんだろう。おだやかな落ち着いた家庭をこどもたちに与えられているのだろうか。
宅配ドライバーと介護士という現代社会を代表するような仕事に就く夫婦の極限の物語だ。
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