劇場公開日 2019年12月13日

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「救われない世界の中で慎ましく生きることは「美」ではない」家族を想うとき Bluebeatbluesさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0救われない世界の中で慎ましく生きることは「美」ではない

2019年12月17日
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ヒューマントラストシネマ有楽町。最近公開となったケン・ローチ監督の新作「家族を想うとき」を観てきた。人間は突如としてリアルな世界を見せられたとき、身につまされるよりも先に唖然としてしまい、どう対応して良いのか分からなくなってしまう。それが例え映画だとしてもだ。ワーキングプアを生み出す「社会システム」と、その社会システムに翻弄されていくしかない家族。この救われない世界の中で精一杯に働き、慎ましく生きることは、けして「美」ではない。美であってはならない。この映画は、個々の人間も、家族愛も、全てのことを美化して描いていない。だからこそ余計に父、母、息子、娘、それぞれの愛情が、鋭利な刃物で肌を刺すような強い痛みを観客に感じさせる。2019年の今、この物語のような出来事は、イングランドのニューカッスルに限らず、日本を含む世界のあちこちで起こっているのである。観た人が『これ、俺たちの国も同じだよね』とみな感じるのではないかと思う。それこそがケン・ローチの問題提起なのだと感じた。

Bluebeatblues