「人間の尊厳を問う」家族を想うとき ken1さんの映画レビュー(感想・評価)
人間の尊厳を問う
資本主義がもたらすはずの人々の幸せなど、とうの昔に消え去り、もはやそのツケは弱者の普通の生活を壊しながら支払われている。
全ては自己責任と切り捨てられ、人々はすでに沢山の未来をあきらめ、それでもなお懸命に追い求める。
平凡な日常すら手に入れることができない人々。多くのものを求めているのではない。ほんの小さな温かな灯火をも手に入れることが許されないのだ。
そこにはもはや人間としての尊厳はない。蔑まれ、辱められ、日々を惨めな思いで過ごしていく。それは新たな分断を生み、世界は荒んでいく一方だ。
なんとかせねばならない。人々の尊厳を守らねばならない。ケンローチの普通の人々を想う温かな視点と、社会を省みることのないぬくぬくと生きる者たちへの静かな怒り。心揺さぶる映画だ。
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