「年の瀬に重量級。」家族を想うとき エクさんの映画レビュー(感想・評価)
年の瀬に重量級。
長く勤めた仕事を辞めたことがある。
心身が整えられずに…。
40才になったばかりの頃だったか。
何とか見つけた新しい仕事はこの映画と同じ「自営業」だった。「パートナー契約」という名前だった気もする。
リラクゼーションのお店。そこに管理者は常駐していない。刻々と変動する客が入れる予約のホワイトボード、そこを本社のカメラがライブで見つめている。
そしてもうひとつ。「相互監視カメラ」があった。同僚ではない。職場ではない。お金を稼ぎたいもの同士が一時身を寄せる場所には何かうすら寒いことを感じることがあった。
「働くこと」の「意味」がとても薄く感じる職場だった。
それまで「働く意味」なんて、それほど考えずに済んで来たが、限界はすぐにやって来た。元の職場に戻りたいと腹が決まった。
ケン・ローチの描く働く場はあの職場と同じ香りがした。
働くことで家族が壊れていく。まったく矛盾している。
ただ、これからこんな職場は増えていくのだろう。そして、今働く職場もだんだんとそうなっていくのだろう。
制度も社会も狂っている。人間も狂わないと家族も狂わないと生きていけない。
狂わないと生きていけないなんて、生きているとは言わないのだと思う。
いろんなことを考えさせてもらった。
働くこと、生きること、家族のこと、私の父のこと。父も無理をしていたところもあったのかもしれない。
すごい作品。ケン・ローチ監督、やっぱりすごい。
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