「消せないあざ・・・みたいな恋心」マティアス&マキシム 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
消せないあざ・・・みたいな恋心
2019年(カナダ)
グザヴィエ・ドラン監督が自作への『トム・アット・ザ・ホーム』以来、
6年ぶりの主演作。
舞台はカナダのケベック。
マックスとマット(マティアス)は30歳の幼なじみ。
いっそ仲間とつるんで遊んでいる。母親たちも巻き込んで仲がいい。
エリートサラリーマンのマット。
バーで働いてるマックスは仲間の母親に言わせると《悲惨な人生》だとか。
母親が薬物依存症で、成人後見人が必要なのだ。
介護やサポートの必要な母親を置いて、マックスはオーストラリアに働きに行くつもりだ。
そんなある日、友人の妹の大学の課題の映画に無理やり出演させられたマックスとマット。2人は男同士のディープキス・シーンを演じることとなる。
このひとつの事件がマットを劇的に変化させる。
別荘の敷地伝いの湖に泳ぎに行ったマットは帰り道を迷って、とんでもなく遠くまで
行ってしまったり、ほとんど自分を失ってしまう。
なぜならマットには美しいフィアンセがいる身なのだ。
(この辺のマットの気持ち・・・たった一度のキス(高校の時に一度キスした過去があり、)で、そこまで動揺する気持ちが私にはわかりにくい)
マットの動揺を激しいピアノ曲が盛り上げて、いつもながらBGMが絶妙なのだ。
男の子と男の子の《初恋から15年後》みたいなビタースウィートさ!!
グザヴィエ・ドランが幼く見える。
(世界的な人気の監督さんの片鱗も見えない)
マットの動揺は、昇進を受け入れない態度、
フィアンセが命じる買い物や用事や結婚にまつわる準備にも、
きっと不安と戸惑いが隠せないのだ。
演出の手ぶれカメラの多用や、仲間たちのゲームシーンを早送りする手法。
俺たちはまだ大人社会に組み込まれないぞ!!
自由でいたいんだ!!
そう表明しているように見える。
一見、良さげなラストにも、なんの将来の展望も描けないけれど、
もう少し時間を、マティアスとマキシムにあげよう。
監督の全作品を観てる私には「大人になれや!!」と、物足りなさの残る映画だった。