「アザは、誰もが持った心の傷」マティアス&マキシム マリエルさんの映画レビュー(感想・評価)
アザは、誰もが持った心の傷
マックスの顔の痣は、誰もが抱えた心の傷や劣等感などを表しているのではないでしょうか。友だちは誰も触れてこない部分。触れてほしくないけど、でももう一歩踏み込んできてほしい、という気持ちもマックスにはあったのでは。
そこに踏み込んできたのが幼なじみのマット。映画の撮影でキスシーンを演じたことがきっかけになって、はからずも強い感情が溢れ出す。
エリート弁護士で、婚約者もいるマットが、マックスに父の推薦状を渡さなかったのは、オーストラリアに行ってほしくないと思ったから。
途中で二人の衣裳の赤と青が入れ替わります。
これは格差を描いた作品でもありますね。
30歳になり仲間たちと楽しく過ごしたバーテンダーのマックスが家に帰ると、あんな母(アンヌ・ドルバル)がいて。
母子の関係が「Mommy/マミー」とはまるで逆なのが興味深い。
ケベックなまりのフランス語は、ドランの特に初期の作品をほうふつさせます。
オーストラリアに旅立つマックスに、「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」で初英語監督作品に挑戦したドラン自身の姿を重ねて見ました。
追記
二回目見に行ったので、つけたします。
一回目より良かったです。話の流れが分かっているので、字幕はあまり見ないで映像と音に集中できました。
マットのオフィスにあった植木鉢が次にはなくなっているのは、今までそばにいた人がいなくなってしまう寂しさを表してるのね。
とか、
マックスは母とは別に住んでいる。出発前夜、母を訪れようとしたら弟が来てて、結局二人には会わない。出発の日、掃除しているマックスは、冷蔵庫に貼ってあった母と弟と三人で写っている写真をゴミ箱に捨てます。
恋の映画というよりも。
なんかドラン監督の個人的な決意を描いた作品かと。
もう母ものは撮らない、とか。
人が新しい世界に旅立つときに、心の支えってやっぱり必要ですよね。
彼は若くして注目されたので、もちろんそれだけの才能があるわけですが、プレッシャーも半端ないと思う。
こんな仲間たちに囲まれて過ごした日々を撮っておきたかったのかな。
コロナで映画製作がこれからどうなるか分かりませんが、私はずっとドラン監督を応援していきたいな、と思っています。