劇場公開日 2020年9月25日

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「「どう?ダークでしょ?」って一人相撲する男たちの滑稽」鵞鳥湖の夜 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5「どう?ダークでしょ?」って一人相撲する男たちの滑稽

2021年7月22日
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鑑賞方法:DVD/BD

命と引き替えに遺してやる30万元が、女たちにとってはただのラッキーな臨時収入だったという闇。

【前半=男編】
何でしょうね、この映画。
高尚な芸術作品なのか、B級ヤクザ映画なのか、僕は判断に苦しんだんですけれど。
は?パルムドール?

街を支配するチンピラ一派ならさぁ、ジンギスカンダンス踊ってんの、あれみんな警察官だって見破ってほしいですよ(笑)
ギャグかと思うようなこの導入で、お粗末なことこの上もないバイクの窃盗団です。そこに舞い戻って籍を置いているようなチョウ氏に(=イケメンではあるけれど)そもそも魅力が感じられる訳がないんですけど。

街がセット。セットが街。
住民がエキストラ。エキストラが住民。
そこだけはリアルなロケ画面で感心はしました。
すりガラスやテントの幕布にうつる追手の影絵の手法もなかなか。

けれど、
結局この映画は、出所した半グレの男に心寄せる二人の女の物語なのだが、先ず「何ゆえチョウ氏が刑務所でお務めすることになったのか」・・、そこの説明が無い。これは作品の致命的な欠陥ではないでしょうか。

(チョウの出所を、昔の悪い仲間たちも、妻たちも、誰も待っていない。
⇔山田洋次の「幸福の黄色いハンカチ」ならば、男の収監の理由は明かされなくとも待ち続ける家族の爆愛の描写が映画の核となって逸話の感動を最高潮に盛り上げるものを)。

まさか刑期を終えてすぐに再犯しちゃうとかの、よくある残念なパターンかな?
「訳あって牢獄を選んだが、苦労かけた妻に少しでも多額の報奨金を遺すために敢えて警官殺しを積み重ねた」というなら、これは男の末期にもいくらか同情したくなったかも知れないが、「間違って警官を撃ってしまったよォ」と何度も繰り返すチョウ氏って意味不明です。
魅力皆無です。

警官もチンピラ窃盗団もなんだかみんな同じ顔で、観るこちらを混乱させてくれるだけ。
総合評価としては「低」。ストーリーがカオスなのではなく、演出の出鱈目さがカオスなのだ。貧民窟という独特な舞台を選択しながら、正義も悪もまるで描き切れていない、そういう出来損ないでしたね。
⇒映画の出来の悪さを、貧民たちの混沌を言い訳にしちゃダメだと思う。

警官たちの記念撮影とか、最後の捜査官の“舐めるような視線”は、女たちの肉体と、持ち金への欲望感有り有りで、少し面白かったが。

【後半=女編】
夜と雨の場面が多かったけれど、リゾート地「鵞鳥湖」だけが明るい昼間のロケに使われている。
でも、幸薄い女たちには昼も夜もないんですね。覚せい剤が出てこないのは中国公司の指導かもしれません。

エンディングは、それまでの熾烈な抗争や官権の追及、そして旦那の悲しい死などどうでも良かったかのように
札束をしかと抱いて、ガッツリと腕を組み、ずんずんと歩きながら、ふと顔を見合わせて、こらえ切れずにニヤリと笑う女二人のシーンで終わる。

この後半・女編としては
「自分にかかった報奨金を命の代償として妻に残したい」と願った男の「お涙頂戴の愛」など、哀れ どこへやらだ。
あの女たちの薄ら笑いだけが闇に残ります。

結局、女たちにとっては、バイクなんぞに夢中になっている情夫たちの“幼稚で単純な闘い”など、どうでも良かったのですよ。男が死んでも顔色ひとつ変えない女こそ恐ろしい。
男どもは誰ひとり浮かばれず、女たちは笑う。保険金だけが欲しい。
そこが、そこの所だけが、この映画のゾッとするダークな結論だったのではないだろうか。

男の精気を吸い取る、まさしく「白鳥の湖」ならぬ、底無し沼、「鵞鳥の湖」の怪でありました。

女優の多岐川裕美が、離婚して戻ってきた娘華子に言い聞かせたあの言葉
「この世で唯一裏切らないのは女友だちとお金だけよ」
―を、思い出して薄ら寒くなった。

肉うどんにも、ゲップです。

・・・・・・・・・・・・

グイ・ルンメイ
「藍色夏恋」で爽やかさ満点の初恋を見せてくれたグイ・ルンメイちゃん。
あのキュートで清純な高校生が、まさかの水浴女になっているとは、きりん、大ショックでした(笑)

きりん
When I am 75♥️さんのコメント
2024年1月30日

おはようございます。レビュー共感ありがとうございます。
また、消されました。従って、折角の共感の文章も消えています。
誠に申し訳ありません。近い内にまた、見てレビューを書くことにします。とにかく、申し訳ありませんでした。

When I am 75♥️
きりんさんのコメント
2021年7月22日

↑いえいえ、
どんな方が今どんな立場でそれぞれの映画を観ておられるのか、
ふとレビューを繰り出す言葉に垣間見える“人の姿”が、このサークルの楽しさでもあると思っていますから。

4連休で、きっと映画三昧でいらっしゃると想っていました、NOBU さんお疲れさまです。

きりん
NOBUさんのコメント
2021年7月22日

今晩は
 ”「藍色夏恋」で爽やかさ満点の初恋を見せてくれたグイ・ルンメイ”
この作品は、観ていません。NかWで観れないかなあ・・。
 情報、ありがとうございます。有難いです。
 <閑話休題>
 今日と明日が世間では休みという事を全く知らず、普通に会社に行って、午後は現場確認でヘトヘト・・。(暑い・・)
 何故、今日、明日が休みになったのかは、容易に類推出来ますが・・。
 御心配頂き、ありがとうございます。仰る通り(新聞にも出てます・・)
 部品供給制約で、各事業体の稼働調整が大変です・・。
 けれど、”現況下で忙しい事を喜ぼうぜ!”と現場の職制には言ってます。
 あ、このサイトは映画の話をする場でした・・。スイマセン。

NOBU