「表現の自由と文化の成熟度の関係」鵞鳥湖の夜 h.h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)
表現の自由と文化の成熟度の関係
表現の自由を制限されている一党独裁の政治体制下で、このような映画が制作されていることは驚き。ここ最近は、チャイニーズ・ノワールとよばれる作品が日本でも複数公開されている。
売春婦やバイク窃盗団、ドラックの売人など、治安の悪化や貧富の格差、退廃的な社会など、中国政府が外にはみせたくない「恥部」がリアルに描かれている。
とはいえ、作品の中身はまた別問題。
ストーリーやセリフまわし、人物描写は仰々しく薄っぺら。作品全体の覆い隠せない穴を、ノスタルジックでアジアン・オリエンティッドな映像や音楽で取り繕っている感はどうしても拭いきれない。
同じノワールものでも、お隣の韓国モノにはまだまだ及ばず。
ただ、見方によっては体制批判にとらわれかねない制作サイドが被る危険性を顧みず、このような作品制作にチャレンジしている点は本当に頭が下がる。
最近の日本のマスメディアの軟弱な自主規制対応や政府への従属姿勢をみていると、日本のメディア界のほうがチャレンジやリスクテイクに消極的であると感じる。
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きりんさんのコメント
2021年7月22日
国内向けには上映を禁じるという場合もあるようです。
党は、対外的にはオープンな描写の許可を装い、賞レースのためにはフイルムの輸出を許可。
それこそがノワールなのかもしれません。
製作者たちも苦労しているんだろうと想像します。
突然コメント失礼しました。