その手に触れるまでのレビュー・感想・評価
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素地
2019年カンヌ国際映画祭監督賞受賞作。 ダルデンヌ兄弟はカンヌのコンペに実に8回選出され、パルムドール2回、グランプリ1回、脚本賞1回、そして今回の監督賞である。驚異だ。 原題は "Le Jeune Ahmed"、即ち「若いアメッド」。若さ故の純真さと狂気を示す簡潔なタイトルである。邦題も物語の芯を捉えてはいるのだが、若干ハードフル感がある。しかしこの物語にハートフル要素はない。 ダルデンヌ兄弟は、「若いアメッド」を執拗に追いつつ、肩入れするでもなく、かといって否定するでもなく、ある意味平坦に映し出す。子どもの純真さは、ときに手に負えないものだ。そして大人が思うよりずっとずっと強固だ。恐らくその考えを与えた大人より。 大人から見るとアメッドは「宗教という名の迷信に縛られた少年」に見える。宗教に全てを委ね一切の弛緩を許さない。他の宗教は敵、融和は背教。大変分かりやすい。 要するにこの世の複雑さを受け入れられないのである。彼が特別なのではなく、恐らくこうなる可能性は誰でも秘めている。 そしてその強固な信念は、誰が何を差し出しても変わらないという現実。対話も、仕事も、運動も、交流も全て彼を変えない。いや、少し揺らしはするのだが、結局そこから自分の「現実」に戻ってしまう。 それだからこそ、あのラストは考えこんでしまう。完全な無力に直面したときに思考が変わるのか...そもそも、恐らく「若いアメッド」は自身が「聖戦」を為したあとにどうなるかの発想が徹底的に薄いのである。最初からそうだ。それが恐らく彼の幼さでもある。そして、ラストは彼を否応なく「聖戦の先」のある可能性に直面させている。彼は気づけたのだろうか?それは映画では完全に示されない。全ては観た者に委ねられる。 彼がなぜここまで強固な信念を得るに至ったかは描かれない。描かれるのは全て狂信的になったあとのアメッドであり、彼の過去や周囲は断片的にしか示されない。そこがまた考えさせられるところでもある。その背景を描かずに「若いアメッド」の動きをひたすらに捉えることがダルデンヌ兄弟のメッセージのようにも思える。考える素地。遠くない問題。
宗教とは
イスラム教に全くなじみが無い、この国でも、この映画を楽しむことは可能である。ともすれば、一見、危ない宗教にとらわれがちだが、そこを焦点にすると、この映画の訴えたいこととはかけ離れてしまう。 にしても、ダルデンヌ兄弟の映画は、いつも興味深い作品を我々に提供してくれる。
産毛剃り
ジハード主義的な思想を持つ13歳の少年が、導師の言葉を受けて暴走し、恩人である女性教師を手に掛け様とする話。
以前はゲーム大好きな普通の子だったというが、序盤から既に信仰と思想は固まっており、そこまでの経緯は語られず進行する。
信仰心の欠片もない自分には、主人公の気持ちを理解出来るところはないけれど、その異常なまでの思想に、気持ち悪さと哀れみを感じつつ、興味深くもあって作中に引き込まれる。
そんな主人公の少しずつの変化から、ルイーズとの件とその反動という事情があったとはいえ、最後はあまりにも急で、説得力が感じられず少し残念。
とはいえ、あっという間の84分だった。
余談だけど、途中、ルイーズは仕込みか?と穿った考えが浮かんだ自分は映画の観過ぎ?
無力感
宗教的な葛藤とはほぼ無縁で過ごすことのできる大半の日本人にはどうしても理解が及ばない世界がやはりあると思います。 せめて映画を通じて少しでも理解が深まれば、と臨んだのですが、残ったのは無力感だけでした。 移民やテロの問題と否応なく向き合わざるを得ないヨーロッパ(この映画はベルギーが舞台)の人たちにとっても、この映画はひとつの現実的な諦観のようにも感じられました。 せめて、善良で融和的な多くのムスリムの方々の無念さや悔しさやいたたまれなさだけは忘れないように努力します。 この映画で新たに分かった興味深いこと。 それは、なにか新たな概念を子供たちに教えようという時に、現代アラビア語を取り入れるか、コーランの言葉のみを通じて教えるか、ということが、ムスリム社会では教師と保護者の間で、真剣に語るべき論点になり得るということ。 わがニッポンの会社では、近年、なし崩し的に外来語やその略称が一般常識のように使われるので、私はついていくのが大変です。時には、言ってることの半分もわからないまま、会議が終わったりしています。 『先日のサマリーはよく出来てたけど、まだスキームに課題があるな。A社とのアライアンスやインバウンド効果の向上策なんかちょっとデフォルト感が強くて、新味が足らないと思う。プロジェクト自体は専務からオーソライズとれてるし、ウチの部へのインセンティブもコミットしてくれた。 ところで、コロナ対策のBCPの擦り合わせはどうなってる?』 やっと、7割くらい分かるようになりました。
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