「過激思想を拭い去るには」その手に触れるまで 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
過激思想を拭い去るには
人間は誰もが生まれた時にはイデオロギーの偏りなどなくて、人間の本質は、玉ねぎの皮を剥いていくように一枚ずつはがしてゆくと、中は空洞なのではないかと思う。どんな皮を纏うことになるかはもっぱら環境要因で、空洞が本質だからこそどんなものでも吸収できてしまうのが人間ではないか。
この映画の主人公の少年はいたってどこにでもいそうな少年だ。たまたまイスラム教指導者が過激思想の持ち主だったので、本人も感化されてしまう。これは、一度まとってしまった皮を剥がして別の皮に付け替える過程を追いかけた作品と言えるかもしれない。
それは容易なことではない。まとった皮も含めて自分という人間だ。自分の一部を否定することは誰にとっても難しいこと。周囲の助けなくしてはそれは達成できないことなのだ。
まるで異なる思想を身に着けてしまった人々とどう向き合うのか、今の世界のどこであっても重大な問題を本作は描いている。
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