「観る人を選ぶ」パラサイト 半地下の家族 こまめぞうさんの映画レビュー(感想・評価)
観る人を選ぶ
私はポン・ジュノ監督作品が好きで、観る前からある程度の覚悟はできている。
しかし、普段から韓国映画は観ない、
暴力描写は耐えられない、
グロいの無理、
そういった好みの方には辛い二時間となるだろう。
カンヌのパルムドールは暗くてどんよりしてるものが多いので、
賞を獲ったからと言って心温まる物語を期待したら
裏切られることになる。
くどくどと書いたが、この作品は
格差社会を扱いつつもエンタメな作りであり、
惨たらしい展開でありつつも
どこか間の抜けたところもあって
ジャンル分けしようとすると困難だ。
映画祭の受賞作品に疑問を感じる話もよく聞くが
人間というものを描ききってるかどうか、というところに
収束していると自分は理解している。
恐ろしい面もバカバカしい面も内包しているのが
人間なのだから、ジャンル分けがしづらくてもなんら不思議はないのだ。
全編の雰囲気からああいった展開へ行くとは
多少予測していた。
唐突ではないかという意見もあるだろうなと確かに思う。
最後に犯罪を犯すのが父親であるという点がポイントだと思う。
貧困だが家族思いで一家の家長として
子供達も彼なりに愛してきた父親である。
それが、子供たちの前でプライドを潰され、
さらに男としても差を見せつけられる。
極め付けに愛する家族たちが傷つけられて、
娘たちを救急車を呼んでいますぐ病院へ運ぼうと
金持ちが言ってくれるならまだしも、
自分たちだけ逃げるために鍵を要求し
臭いと鼻をつまみ、下層民への扱いが
犬畜生レベルであることを改めて知るのである。
あそこで刺してしまうのは、同じ人間なんだという
感情の発露であり、己が家族を馬鹿にするなという
父親ゆえの怒りでもあると自分は受け取った。
息子の書いた手紙は父に渡す術がない。金もないから大学へもいけないだろう。
金持ちになって、という将来の希望はきっと叶わないのだ。
親が下層だとその子供も浮上の望み薄。
半地下と地下の間にも大きな差がある。
貧困層の中でも格差が生まれてはいあがれないのではないか、という
悲しく息苦しいラスト。
無常感に苛まれる。
ポン・ジュノ作品の持ち味だ。