「社会には集団間の見えない境界線が存在しており、その境界線を相互に見...」パラサイト 半地下の家族 もるたん3しゃいさんの映画レビュー(感想・評価)
社会には集団間の見えない境界線が存在しており、その境界線を相互に見...
社会には集団間の見えない境界線が存在しており、その境界線を相互に見ようとする思考が及ばない為、不満や事件が絶えず生まれてしまう一つであると聴衆へ伝えているように感じました。
中盤までのコミカルなテンポから不安と恐怖へ急降下する終盤のストーリー構成は飽きずに最後まで観覧できる内容でした。
ストーリーの中では置物石、友人、半地下、便所コオロギ、時計回り、ペット、水、匂い、完全地下といった物や概念について随所にハッとするような思考をめぐらせるシーンがあります。
単なる富裕層と貧困層の対立話ではないことが多くの人に評価されてる作品なんだと私は感じました。
貧困家族が偽りのプロフィールと所属をつくり、富裕家族に潜り込む。まるで便所コオロギのように。
金持ちの旦那【上層】は匂いという目には見えないもので貧乏の旦那【下層】と境界線を引いている。偽りでは誤魔化せない「何か自分たちとは違う」といった境界線を自然と嗅ぎ取る嗅覚が上層にはある。
それは下層に直接的に(臭うことを)伝えなくとも、臭いを嫌悪する仕草や上層同士のふとした会話から、下層は自分が臭うということに気付き思い知らされる。
下層同士はその匂いに今までは気づきもせず暮らしていたのに、上層と馴染もうとした途端、そこに境界線があることに気づき自分の現在地を俯瞰して見えたりする。
家庭教師の息子が金持パーティーに自然と参加している人達をみて、金持の娘に対して「自分は馴染めているか?あの人たちと同じにみえるか」を問うシーンは心が痛んだ。
またこの作品は3つの階層対立がある。
①金持ち 対 半地下
②半地下 対 完全地下
③金持ち 対 完全地下
完全地下【最下層】に住む人は、金持ち【上層】に尊敬と服従をしながら、上層の目に見えないところで食料をむさぼり、生を繋ぐ。上層は最下層を見えないだけでなく、存在すら認知していない。
最下層は、上層のペットが歩いてる場所より下の完全地下に生活をし、誰に強いられた訳でもないのに現状を変えることはせず受け入れ、いつまでも現状の生活が続くはずが無いのに、いつまでも思考停止している。
それぞれの層が見えているものが異なるため、行動や考えも階層によって違う。下層になるほど、無計画を計画する、思考停止、夢想する。
まるで自己啓発本を読んで、希望する未来を想像だけするも、いつまでも現状は変わらない。不安がある人のほど、現状維持バイアスが強く、行動に移すのは難しい。それでも行動しなければ半地下の薄暗い部屋で大きな家を持つ夢想をして、人生を終えることになる。
見えないというのはとても不安定で、無限にある選択肢の中でなぜのその選択をするのかと見えてる側からは理解ができない。
こんな家を手にしたいと言葉するも、家政婦やアルバイトで得た収益で、バイキング料理に行くのでは無く、偽りのプロフィールを本当にする為にお金を使う行動は出来なかっただろうか。
ピザの箱を折るぐらいなら、ピザの箱を折らせる側になる行動をしたり、自分には見えない世界を見えてる人へ、どんな風に経験し、思考し、選択をしてきたのか境界線を越えれなくても見ようとする行動は出来なかっただろうか。
周りにヒントやチャンスは溢れているのに、言われたことだけを行い、気に食わないことは不満そうにする。
何が問題なのかがわからない。
問題解決をするための問題自体が見えない。
だから問題は相手にあると衝突や殺人が生まれてしまう。
映画の話ではあるが、実際現実社会にも溢れている問題でもあり、少しでもこういう衝突が減らすためにどうしたら良いのかと改めて考えさせられる作品でした。