「人格や品格と結び付かない貧富の差」パラサイト 半地下の家族 とくこさんの映画レビュー(感想・評価)
人格や品格と結び付かない貧富の差
映画としての完成度はさほど高くないが、考えさせられるストーリーだった。
色々となあなあで片付けられた部分も多く、あれはどうなったの?とモヤモヤが残る。重いテーマを扱う作品ではきちんと罪と罰まで清算してほしいところだ。
さて、本作では富裕層の登場人物たちも嫌味がなく個人的には好感が持てるキャラクターだったが、賢かろうが愚かだろうが、魅力があろうがなかろうが、稼げる人間と稼げない人間の間には埋められない溝がある。
どんなに金銭欲が強くても金に縁がない人間もいれば、特に何も考えず生きてもお金が舞い込んでくる人間もいる。
しかし富とは、不思議なものだ。
カラーテレビ、洗濯機、携帯電話、パソコン、米
時代が時代なら お金持ち と称される生活を、今の時代では 貧困 と言われている人たちも、ほとんどが享受している。
大画面、高画質、ドラム式洗濯機、洗剤自動投入、AI搭載、最新機種、薄型、ハイスペック
富の象徴は変化していく。
結局、我々が欲しいものはなんなのだろうか。
周りと比べて裕福な暮らし
なのか
必要なものが揃っている暮らし
なのか
惨めじゃない暮らし
なのか。
ラストの主人公家族の父親の選択は、とても胸が痛くなるものだった。
諦観していて、欲を持ちながらも卑屈さが無い好人物。
だが、朗らかで温厚な彼がなぜあのような選択をしたのか、充分に理解できる。
彼がどうしても受け入れられなかったもの。
身勝手だと分かっていても、衝動に駆り立てられるほどの、奥に秘めたもの。
行動や思想や、発言などではなく、自覚すら難しい。けれど明確に、あちらとこちらを区分されてしまうもの。
まるで細胞の隅々まで否定されるような気分だ。
少しずつ少しずつ感情が奥で増大していく役者さんの表情がなんとも巧みで、下手な役者であれば え!? となりそうな展開でも見事に辻褄を合わせていた。
仲の良い家族がいて、それなりに笑って生活できていれば幸せなんじゃないか。
彼らは貪欲だったのだろうか?
そうでもない。
何があれば、自分たちを幸せだと思うことを、世間は認めてくれるのだろうか。