「地上・半地下・地下」パラサイト 半地下の家族 セロファンさんの映画レビュー(感想・評価)
地上・半地下・地下
面白かったです。色々な事を考えさせられました。格差・線・臭い・比較・家族・幸せ・・・
前半はコメディ映画かと思ってしまうほどの雰囲気でした。息子の家庭教師から始まり、言葉巧みに金持ち一家を騙し、しまいには家族全員で転がり込んでいく様子が滑稽で笑えました。しかし、上には上(下には下と言うべきか?)の強者がいて、、、という展開に驚かされました。ここから急に物語の景色が大きく変化し、引きつけられます。
なぜ、あの父親はあんな悲劇を起こしてしまったのか?
そしてなぜ、自分の娘を刺した地下の男ではなく、社長を刺したのか?
お気楽でちょっと頼りないけど良い父親に見えました。でも実は積もり積もった恨みがあって...いや、実際、お気楽だけど善良な人間だったのだと思います。あの上流家族に出会うまでは。
初めは貧しいながらも家族仲良く、幸せと呼べるかわかりませんが、それなりに暮らしていたと思います。でも、あの家に潜入し、彼らの生活や考え方を目の当たりにする事によって、徐々に気持ちに変化が出てきます。うらやましい・妬ましい等の感情も生じたでしょう。彼らと比べ、自分はなんて惨めなのだろう。彼らと出会う事によってそんな自分を認識するようになったのかもしれません。でもどんなに努力しても、あちら側の人間になる事はできない。そこには越えられない線がある。その線をはっきりと見せつけられた。
’臭い’でもその線が浮彫にされます。見た目はどうにか取り繕えても、臭いは消えない。目には見えないけど体に染みついて消えない半地下の臭い。半地下にいた頃は気付かなかったけど、上流家族と接するようになって意識するようになった。あちら側とこちら側の間にある越えられない線を。
上流家族の地下で出会った男。地下の男は自分と同じ臭いがする。自分と同じ側にいる人間。娘を刺したのは地下の男ですが、その怒りの矛先は社長に向けられます。格差社会やその頂点に立つかのように見える社長に対するどうにもならない怒りや恨み。それがあの線の向こう側に突き刺さった。
あの父親は自分の手で自らを半地下から地下へと引きずり落とし、永久に出られなくしてしまいました。この結末をどう受け止めたら良いのかまだよくわかりません。
きりんさん
コメントありがとうございます。
下へ降りるのは簡単ですが、上へ昇るのは難しい。どんなに努力しても自分の生まれた階層から抜け出せないのが哀しいですね。
セロファンさんの最後の4行。そうでしたよね・・
半地下からひょんなタイミングで浮上しかかった すなおな家庭教師のお兄ちゃんをはじめ、あの家族は今後どうなってしまうのだろうか。
いいね、ありがとうございます。
この映画評、すごく共感しました。後味悪い映画は色々観ましたけど、これがアカデミー賞かぁ…と思いました。
色んな差別を感じて、あんまり好きな作品ではありません。