「似ている所と違う所」パラサイト 半地下の家族 taroさんの映画レビュー(感想・評価)
似ている所と違う所
本作については、台詞や小道具などを記号論的に解釈するレビューがYouTubeなどに挙がっているが、納得できる指摘が多く、映画観賞後に見ると映画の理解がより進むと思われる。それだけ本作は、細部にまで意味を持たせた作りになっている。
本作は、昨年のカンヌ映画祭のパルムドール受賞作品であるが、2018年のパルムドール受賞作は日本の『万引き家族』、2017年のパルムドール受賞作はイギリスの『わたしはダニエル・ブレイク』であった。三年連続して、貧困者を主人公とした映画がパルムドールを取っている。それはカンヌ映画祭の特質を表しているのかも知れないが、それだけ貧富の格差が世界的に共通した問題となっている事の現れでもあるだあろう。
題材は共に〝貧困〟であるが、上記三作品はかなり異なる作風である。『わたしはダニエル・ブレイク』には官僚組織の冷酷さに対する怒りがあり、『万引き家族』には私小説風のユーモアとペーソスがあり、『パラサイト』には富裕層に対する憧れと憎悪がある。日本の『万引き家族』には〝敵〟がいないが、他の二作にははっきりと敵対関係が描き込まれている。また、『私はダニエル・ブレイク』と『万引き家族』は疑似家族がセイフティーネットの役割を果たしているが、『パラサイト』は血縁家族だけが支えとなっている。
作風の違いは、鑑賞中に喚起される感情の違いとなって現れるが、『パラサイト』はエンターテイメントの要素も強く、最も振り幅の広い感情が喚起される。必見。
附)kossyさんのご指摘によって誤りを訂正しました。ありがとうございました。(1/15)
taroさん、お初でコメントいたします。
最近のカンヌは格差社会がテーマにしたものが多いですね~
訴えてくるものが凄いです。
ちなみに、正確にはグランプリじゃなくパルムドールですね。