「生きる源泉は映画」ペイン・アンド・グローリー ミカさんの映画レビュー(感想・評価)
生きる源泉は映画
クリックして本文を読む
今作はアルモドバルの半自伝作品ということで、アルモドバルが大好きな私は、サルバドールが痛みに苦しんでいるのとヘロインにハマっていく様子を複雑な気持ちで観ていました。いつだったか、何年か前にインタビューで、鬱になっていたと話していたのを思い出したので。
現代のサルバドールを映すパートのフィルムのトーンが妙に落ち着いていたのに対して、サルバドールの幼少期を映すパートのフィルムが色彩に溢れ生き生きしている様に感じたのですが、ラストで理解しました。
サルバドールが映画を撮っている幼少期のパートのシーンは、アルモドバルが人生を再生した内面を映しだしているのでしょう。母親との暮らし、眩しい太陽に当たり性に目覚めた原体験。アルモドバルにとって、映画は生きる全てであり、映画を創造する源泉が性であり生なのです。そして、創造の源泉を再び思い出させてくれた家族や友人、芸術への敬意と感謝。
サルバドールが『映画』を撮影しているラストシーンに、私は人生の再生は必ずできるのだと涙しました。歳を重ねて人生を見失いそうな時に、改めて鑑賞したいと思います。その時は私も、アルモドバルと同じく映画によって再生されていることでしょう。
コメントする