罪の声のレビュー・感想・評価
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リアリティを追求した作品
原作を映像化すると、イメージと異なり世界観が変わってしまうことが少なからずある。この作品は映画としての完成度が高い。原作が未読の私にも、十分伝わってくる。細かいディテールにも拘りが見える。例えば小栗旬の着用するスーツやコートが所謂既製服の感じを出している。身体にジャストフィットしていないのだ。ショルダーバッグにしても、ロゴを掠れさせて使用感を出している。それに比べ、星野源の服装はテーラーの主人であるため、肩から袖口までピッタリサイズである。
事件の真相が、この通りなのではないかとも思わせてしまう内容。ストーリーは実に練られており、事件を詳細に調べた上でのものであることが伺い知れる。事件は世間に知らされていないことが多かっただけに様々な憶測が飛び交い、捜査も混乱し、未解決に至ったのであろう。
役者としての宇崎竜童がはまり役。素人感がある演技が却ってリアリティを醸し出している。最期まで逃亡する人物像に相応しいとさえ思えました。
子どもたちの今
原作を読んでとても良い作品であったため、映画も鑑賞。
映画だけあって、物語がテンポ良く進んで行く為、内容が薄くなっているのではないかと心配したが、鑑賞後、杞憂だったのがわかった。
後半、聡一郎の姿を見たとき壮絶な人生だったことがありありと感じられた。
ラスト、聡一郎と母親が望の声の入った音声データを聞きながら抱き合うシーンは涙無く見ることは出来無かった。
物語の元になったグリコ森永事件でも同様に子どもの声が使われているが、その声の子ども達の今が、物語とは違い幸せなものであると心の底から願って止まない。
その時代をリアルに知っている世代にとって
当時を思い出しながら見られ興味深かったです。
原作未読ですが、良い役者さんが良い脚本で演じると、2時間半弱と長めの作品ですが見応えのある作品だと感じました。
ただ個人的にはこの手の作品は嫌いです。
小栗旬さんのセリフにも有りましたが、マスコミの傲慢さを適当に肯定する流れから、最後は離ればなれだった親子が再会出来て良かったデスネ。
チャンチャン。って。
昔の事件を掘り返すことで、被害者(加害者?)側の家族が幸せになるケースは稀なんじゃないかと思います。
※時効に安堵している犯罪者には同情出来ませんが。
行き過ぎた取材を肯定する流れは怖いです。
もしも明日が・・・
題材は「毒入り危険食べたら死ぬで」のグリコ森永事件を「ギン萬事件」として描いてるわけですが、この事件、警察と報道を散々コケにしながらも身代金を手に入れることには失敗しているということになってます。
あれだけ派手にやって全く尻尾を掴まれてない犯人が目的を達成してない訳がないという理屈かと思いますが、株で稼いだ説はありました。
うろ覚えですがしばらくの間グリコ株は低迷していたような記憶があります。
また報道といえば、京アニ放火事件で実名報道に拘ったマスコミが、給付金の不正受給や賭け麻雀事件では実名をひた隠すという欺瞞のイメージが強いです。
デスク(古舘寛治)が事件記者の利己的な欺瞞を社会の為とか正義の為とかいって正当化しているのがほとんど政治的な運動家のような身勝手なロジック丸出しですが、それを主人公の阿久津(小栗旬)にぴしゃりとやりこめられます。
阿久津はそんな感じの事件記者に嫌気がさし文化部に異動していましたが、英語が喋れるという理由でギン萬事件の担当にさせられる。
そんな背景の人間じゃなければ曽根俊也(星野源)が心を開いてくれることもなかったのでしょう。
のちのち事件のキーマンである社会主義活動家の達也(宇崎竜童)の言ってることもまさに記者と同じ利己的な正当化そのものの理屈。またもや阿久津に説教されるという構造になってます。
ところが・・・
時代背景や人間関係の細かい演出がよい。
・小栗旬が一瞬、粗品に見えるところがある。
・わらべの歌が懐かしい。
・当時映画雑誌といえばスクリーンとロードショーがあったが、どちらか忘れたが表紙のフィビーケイツ。(そのころの映画雑誌の表紙とえばブルックシールズ、ソフィーマルソー、フィビーケイツのローテーションだった。たまにジャッキーチェン)
・宇野祥平と日野正平が韻を踏んでいる。
など、ちょっと面白いポイントが多い。
よくわからなかったのが、金主に持っていかれて利益が上がらなかったことでヤクザが生島や達夫を責めるところですが、金主やトレーダーと主犯をつないぐのがヤクザの存在理由かと思うのですが、そうでないならヤクザを絡ませた理由がピンとこない。
金融ヤクザという裏を取ってるところもあるし、何より生島は取り分の交渉にいって殺されたんじゃ?
文句なく傑作
まず何より聞き込みで新情報が次々出てきて点と線が滞りなく繋がるのが映画として見てて気持ちがいい。残穢の呪いの連鎖調べてる時みたいな勢いで事件が繋がってく。
時効を迎えた事件だから関係者も口が軽いという理由があるけど、無駄に溜めずに事件の真相に肉薄するとこまで一気に観る人を引きずりこむ手口がさすがアンナチュラルの脚本の人って感じだ。
アンナチュラルの時もそうだけど本当にキャラクターが行動する理由を大事にしてるなって印象で、軽すぎず重すぎず普通に生きている人が悩みうる理由で行動を起こすから主人公が悩みはじめてドラマが止まっても納得しかない。ノーストレス。
途中で示された「時効を迎えた誰か死んだわけでもない事件を、もう忘れたい関係者の口を開かせて聞く意義って何?」って疑問に終盤30分くらいかけてこれでもかと明確な答えを提示されて思わず泣いてしまう映画だった。
あと自分勝手な理由で人を傷つけて、自分勝手に納得して平然と生きてる悪党を犯した罪に過不足なく裁く達人だなって改めて思った。
久々にずっしりくる作品だった。
3億円強奪事件のように解決していない事件があるが、グリコ森永事件もその1つで、それをモチーフにした作品。
背景としては1970年代の大学闘争で警察や政府への不満からの運動がすべての発端となっている。そこから警察を翻弄させるために社長誘拐事件、食品会社への脅迫状、身代金要求を思いつく。そこから仲間が集まるものの、警察を首になった人、やくざ、車に詳しい人、通信系に強い人、などまとまることのない集団で、内紛で殺される、家族が夜逃げする、ということも起こる。
錚々たる理念と理想をもち活動していくのが良いかどうかは別として、それによって何十年も苦しむ家族や下の世代がいるということも忘れてはならない。
自分が脅迫電話の声だったことを成人して知った時の思い
自分の母親が学生運動に参加していて、事件にも間接的に関わっていることを知った時の思い
自分の叔父が事件を起こした張本人だと知った時の思い
警察官の妻から犯罪者、殺された者の妻になった時の思い
姉を目の前で殺された弟の思い
友だちと待ち合わせしていたら、殺されていて待ち合わせに来れなかったことを知った友人の思い
いろいろな立場でこれは見ることができる作品である。
その中で、宗一郎の立場で考えると、やりきれない思いになる。
時効になっているのに真実を暴くことは世間のためか、記者の自己満足のためか。それは各々に答えは任されているが、それの答えは記者ではないだけに分からない。
おそらく50代以上の世代だと、おぉ!と思う往年の俳優さんがずらりと出てて、ちょい役であっても存在感は抜群。
やけに高評価が目立つが
脚本野木さんにメガホン土井さん。主演が小栗旬に星野源。脇も松重さんや市川実日子さん。これで面白くないから映画って難しいよね…
ひとつ言えるのは皆さん主に本編よりもTVドラマ中心に活躍されてるかな?だからかストーリーを説明しすぎると言うか無駄なセリフが多いんだよね。映画の場合は余分な贅肉はとって観客のイマジネーションを掻き立ててもらう方が有難い。
あと原作への違和感だけど自分の父親の仇を取る為に息子に犯罪を犯さす母親なんて居るのかな?1番そこが納得出来なかったかな…
重厚かつメジャー製作の醍醐味を堪能出来る作品です。
予告編を観て、以前から気になっていた作品ですが、タイミングが合わず、やっと観賞しました。
で、感想はと言うと、面白い!
昭和に起こった未解決事件として有名な「グリコ・森永事件」をモチーフにした内容は観応え十分。
小栗旬さん、星野源さんと人気俳優二人をメインに脇を固めるキャストも豪華。
重厚なメジャー製作作品としての醍醐味を堪能しました。
昭和の未解決事件として「三億円事件」と並んで有名な「グリコ・森永事件」。
リアルタイムで事件の様子がテレビで放送されていたのを知っているので事件の大きさは感じていて、「なんか凄いことが起こっているなぁ」と思っていました。
犯人グループの1人とされる「キツネ目の男」の似顔絵は印象に残り過ぎる程、印象に残ってます。
未解決事件となり、「劇場型犯罪」として有名な事件ですが、いろんな事を調べれば調べる程、凄いとしか言いようがない。
犯罪を美化するつもりはないのですが、巧妙な手口や犯行は犯罪芸術と言う感じで、だからこそ今でもいろんな形で語られるんでしょうね。
グリコ・森永事件の中でも実際にあった犯行の脅迫テープに使われた子供たちに焦点を当てたストーリー展開は上手いし、グッと引き込まれる。
知らぬ間に世間を揺るがす程の大事件に巻き込まれ、人生が狂っていく怖さと切なさ。
気づかず幸せな時を過ごしていたが、ふとした事から知ってしまった絶望感。
それらの思いは想像に難く無いと思いますし、実際に声を使われた子供たちのその後も気になります。
その辺りに虚空と現実の思いのリンクが非常に上手いです。
また、テープの内容も非常に忠実に再現していて怖い。
劇中ではバックボーンが見える分、感じなかったのですが、実際に使われたテープはその背景が見えない分、無機質で棒読みの感じがもうすごく怖いんですよね。
今聞いても背筋がゾッとします。
その再現度が凄いです。
実際に未解決事件なので犯人グループの実像や目的は明らかで無いのですが、だからこそ実態と目的の解釈の構成がリアルだし、納得が出来る感じ。
「三億円事件」をモチーフにしたノンフィクション作品は沢山ありますが、「グリコ・森永事件」をモチーフにした作品ってそんなに無いんですよね。
この作品は今後「グリコ・森永事件」をモチーフにした作品の指針になりそうです。
出演の俳優陣もかなり凄い。
小栗旬さん、星野源さん、松重豊さん、古舘寛治さん、宇野祥平さん、篠原ゆき子さん、木場勝己さん、橋本じゅんさん、桜木健一さん、浅茅陽子さん、高田聖子さん、佐藤蛾次郎さん、佐川満男さん、宮下順子さん、市川実日子さん、火野正平さん、宇崎竜童さん、梶芽衣子さん、原菜乃華さんと鉄壁の布陣。
星野源さん演じる曽根俊也と小栗旬さん演じる阿久津英士はもちろん上手い。またそれぞれの役柄と演技にアクが強くないのが良いんですよね。
この手の作品は過剰に正義感を振りかざし過ぎて些か鼻につく感じのキャラクターが多かったりするんですが、変に力み過ぎてないのが良いし、かと言って何か必要以上に事件に巻き込まれると言うのもあまり無い。
淡々と未解決事件の真相を突き止めていく所に静かな重厚感がありますよね。
個人的に火野正平さん、宇崎竜童さん、梶芽衣子さんの出演は嬉しいところ。
声の主の一人である望役の原菜乃華さんは「はらはらなのか。」や「無限ファンデーション」で気になってた女優さんなので、こういう作品で重要な役での活躍は嬉しいところです♪
難点があるとすると、時効となった事件を新聞の特別企画とは言え、些か人数を割き過ぎの様にも感じます。
曽根俊也以外に脅迫テープの声の主の2人のその後は悲惨と言うか、悲し過ぎる。
声の主の1人の生島聡一郎役の宇野祥平さんの熱演が胸に来ますね。
犯人グループの様々な思惑があった中で、青木組の青木龍一の悪さが目立ちますが、事件のきっかけを作った元凶は曽根達雄と生島秀樹。そしてそれに間接的に加担した母親の曽根真由美。
まさかこうなるとは思わなかったと言う思いはあるにしても、自分の子供達を事件に巻き込んだ気持ちはどうなんだろうか?
実際の「グリコ・森永事件」でも子供の声が使われているだけに自分の声が使われている事を知っている、知らないは置いといたしても罪過ぎます。
関西が舞台の事件なだけに関西の様々なロケ地も関西出身の自分とするとちょっと嬉しいし、いろんな要素を絡めながら、海外にまで広げているスケールの大きさは個人的には良い。
作者の塩田武士さんはこの後に「騙し絵の牙」も控えていますが、実は塩田武士さんのお姉さんはかなり前になりますがお仕事を一緒にしていた経緯があるので、まさか知り合いの方の弟さんと知ってビックリ。
リアルタイムで事件を体感した事や事件の発生地域が関西など、いろんな事が自分の中でも近く感じる事が多い事件をモチーフにしているだけにいろんな思いをより感じて観賞しましたが、それ抜きでも十分に楽しめました。
沢山の方か既に観賞されてますが、まだの方は是非観て欲しい。邦画のメジャー作品の力量を存分に堪能出来ます♪
超お勧めです。
星野源 以外は良かった
各自の言動に不自然さを感じる事が多く、なかなか入り込むのが難しかったのです…。
途中からは自身の謎解き欲求が不自然な展開への嫌悪感を上回ることができたからか、不自然さに慣れてきたからなのか、盛り上がれましたが。
細かな『なんで?』を気にしなければ、それなりに重厚な日本映画って感じで楽しめます。
小栗旬や脇役が良かったからかな。
あまり関係ないけど、ソウイチロウさんの子役は、星野源の子供時代の方がピッタリかなと思いました…。
普通に面白かった
有名なグリコ森永事件の映画化。
もちろんこの事件は知っている。でも詳しくは知らなかったので、今回の内容がどこまで真実かはわからない。
ただ、この映画のタイトル、子供の声が犯罪に使われたのは事実だ。罪なのは声の主ではない。それを利用した犯人だ。それでも子供達はその罪と共に生きていかなくてはいけなかった。
3人の内2人の姉弟は最初から巻き込まれて苦しみの中で生きていた。本当に辛く悲しい人生だ。そしてもう1人は大人になって知ることになる。それはまた衝撃の事実だろう。どう消化すればいいかわからないと思う。そして真実とは何かを求めて動き出す。星野源がこの勇気ある誠実な男を見事に演じていた。
そして、最後に出てきた宇崎竜童のかっこよさと存在感が素晴らしかった。
めちゃくちゃ丁寧に作られた作品…!
雑なところが全然なくてとても丁寧に作られた良い映画だった…。
作り手からのたくさんの問題提起とメッセージが込められてるのを感じて胸が詰まった。
モチーフとなった事件を知らない+原作は未読だったのだけど、野木亜紀子さんが脚本をされているということで鑑賞。
事件や人の不幸をエンタメにして消費するマスコミと大衆への疑問。
「正義」という大義名分をかかげた暴力によって傷付けられ翻弄される、社会的弱者の立場にある人々へのまなざし。
解決しなかった事件によって人知れず痛みや何かを背負い続けた人たちへのまなざし。
(社会的弱者へのまなざしや、裁かれるべき者が裁かれないことで生まれる社会や誰かの人生の歪みや痛みは、同じく脚本を担当した野木さんのドラマ、MIU404でも描かれていた気がする。)
意図せず犯罪に加担した者たちの痛みと苦悩。
昭和(古い時代)の学生運動や暴力の価値観の否定と脱却と、過去を教訓にしようという想い。
実際は未解決らしい事件をベースによくこんな物語を生み出すなあと感動してしまった。モチーフになっているのは過去の事件だけど、提起される問題を今の時代にも十分当てはまるものにして、今の価値観で落とし所へ帰着させている(阿久津や曽根は昭和や過去の価値観を持たない今のアップデートされた価値観の持ち主だ。)
マスコミ側(当事者ではない新聞記者)と一般市民(しかも社会的弱者だったために巻き込まれた事件当事者)、双方の視点から描かれて、両者が絡み合い、最終的には共に寄り添いながら動くようになる、という物語の構図もすごくうまいし良い。
阿久津と曽根が相棒のような関係になっていくところは胸が熱くなったし、この重い物語の清涼剤にもなっていた。ラストシーンも良かったな…。
序盤はサスペンス要素が強くて物語がずっと緊迫し、底知れない恐ろしさみたいなものがあってずっと怖かった。
真実が明らかになるにつれ、「罪の声」や事件に人生を翻弄された人たちが抱えた想いが表に姿を表して切なさで胸が苦しくてたまらなかった。
誰かのことを想って、または自分の人生を守るために口を閉ざしてきた人たちが阿久津と曽根に動かされて、ずっと秘めてきたものを吐露するところは苦しかった。
事件に直接関わらなくたって、何十年を傷付いて苦悩して人たちがいた。たぶん現実だってそうなのだろう。
途中でだれることなく最後まで観れたし、エピソード積み上げとその帰着のさせ方が素晴らしい。
あと証言者をはじめ俳優さんが豪華で、うまい俳優さんばかりなのも良かった…。業界のドンみたいな人の話し方がすごく静かなのがすごくリアルな感じで怖かった。
本当に良い映画だった…。
罪の重さ
主演の小栗旬さん、星野源さん、出演されたキャストの皆さんの演技がそれぞれに素晴らしく見応えが有りました。
中でも小栗旬さんが演じられた新聞記者の、温かみの有る表情や眼差し、他者と誠実に向き合う姿に魅力を感じました。
犯罪に巻き込まれた者が背負うものの大きさや苦しみ、事件を追い取材を重ねる新聞記者の真摯さ、葛藤、内に秘めた思いがリアルに描かれており、エンドロールの切ない歌声に胸が熱くなりました。
映画館での鑑賞
良き!
映画館でうるっときたのは久しぶり!3人の声に焦点併せ、こういうアプローチの映画だったのかー。『罪の声』だもんね。とりあえず、感謝の心を持って大切に生きないとなと思わせる映画(いい映画をみるとだいたいこうなる)
前半1/3は登場人物や説明を追うのに少し疲れたけど、後半からは引き込まれました。
星野源の何気ない表情がとても素敵でした。終盤母親と話す時も責め立てない感じが余計にぐさっとくる。
エンドロールの曲も良かったです。
罪の声
このレビューでこの映画もとい原作小説が基にした実際に起きた事件の名前を出すのはタブーだろうか。2016年に原作が出版され、その中身の濃さに引き込まれてあっという間に読破してしまったのを覚えている。件の事件についてはWikipediaで得た知識しか持ち合わせていなかったが、その事件が想像を絶するほど日本中を震撼させたであろうことは、当時まだ影も形もなかった私ですら容易に想像できる。
その事件における直接的な犠牲者はいなかったという。しかしながら今作でスポットを浴びた「犯行に使われたテープに録音された子供の声の持ち主の人生」を想像した人が当時どれだけいたのだろうか。曽根俊哉のように何も知らないまま大人になり、幸せな家庭を築いたかもしれないし、生島姉弟のように凄惨な人生を強いられていたのかもしれない。単なる「子供の時分に声を録音されたテープ」ではないのだ。「日本中を震撼させた犯罪に使われたテープ」なのである。いわば彼らは陰の犠牲者なのであり、この事件において「犠牲者なし」と言い切るのはあまりに軽率なことだろう。どんな事件も様々な角度から光を当てるべきなのである。コロナウイルスが流行し、不安を煽るかのように偏った報道をする、そんな昨今のジャーナリズムの在り方を正そうと奔走したのが阿久津英士なのではないだろうか。かつていち新聞社が真相解明できなかったことだけが問題ではないのだ。
2000年に時効を迎え、すべてが迷宮入りしてしまった未解決事件。詳らかにならなかった現実を塩田武士氏が補完した作品というイメージ。ただ単に想像で書いているのではなく、これが事件の真相なのではないかと思わされるほど綿密に描き込まれている。原作を読んだ時から、きっと実写映画化するのだろうなと思っていたので、映画化の報せが届いた時はとても嬉しかった。主演のキャスティングにやや違和感を覚えたものの、こんなに深い余韻に浸れる映画は久しぶりで、文句の付け所が無く満足度が高かった。
胸がいっぱいになった。
もし、伯父さんやお母さんの父親が理不尽な濡れ衣で、社会から抹殺されていなければ、警察や社会に対する怒りを持ち続けることなく、事件も起きていなかったかもしれない。
事件の残酷な運命が、また子どもに降り掛かってしまったことに胸が張り裂けそうな想いがした。
メディアの役割とは?報道とは?ということが問われ、マスコミが一括りで批判されてしまうことも多い昨今。
なぜ報道するのか、そこに疑問を持ち社会部を離れた阿久津。
でも、一人の命は救えた。
そこに意味を見出したからこそ、社会部に戻ったのではないだろうか。
脇を固める役者さんが、皆良かった。
総一郎を演じている俳優さんは誰だろう!?とすぐ調べてしまった。
それくらい、母親に呼びかけるシーンが涙腺にきた。
「重版出来」や「逃げ恥」で信頼できる監督と脚本家だと思い観に行ったが、それ以上に何か心に残る作品だったと思う。
その時、人は「奮い立っちゃう」んだろうなぁ。
話題になっているという点、野木亜紀子さんが脚本をされているということぐらいしか頭に入れず、映画を鑑賞しました。完全オリジナルなのかと思いながら見ていて、エンドロールで原作があったことを知ったぐらいでした。すみません、不勉強で。
隙のない、素晴らしい映画だと思いました。
『スパイの妻』が映画らしい(?)余白の多い、色々な見方ができる映画でしたが、こちらは多くの情報を分かりやすく伝えてくれた、いい意味で対照的な映画だと感じました。
この完成度は原作、監督、脚本、俳優さん、現場スタッフの方たちのしっかりとした連携や協力、コミュニケーションがあってできたものだろうと、勝手ながら想像します。ビッグリスペクトです、はい。
ただ、一点、学生運動が犯行の動機となる点は、私なりの解釈をしました。
学生運動の時のあれこれが動機となる物語はたくさん見てきましたが、正直40代の私にはまったくピンときません。なるほど、少し上の年代の方には、それほど深い傷をのこしたというのはわかっても。
私自身を納得させる言葉としては、犯人たちの「奮い立つ」というセリフでした。
今も昔も正義と思ってやった行動が実は…というのは多いですが、それを今風の事象に当てはめれば、あえて詳細は言いませんが、ここ1~2年でも個人単位、もしくは誰かに乗せられて「奮い立った」結果、とんでもないことになったという出来事は後を絶ちません。
主にネット、SNSの世界で。
舞台や時代は変わっても、そして、その人がどれだけ年齢を重ね、人生の経験を積んでいても、この熱く燃え上がる感情が時に目を曇らせるという、その怖さに思いを至った次第でした。
社会派邦画では近年No. 1!
原作は見てません。
お母さんをお見舞いするシーンで、嫁がリンゴをむこうとしたら、梶さんがオレンジが食べたいと強めに言ったシーンがあり、何か意味あるのかこのシーンは?嫁姑は仲悪いのか?と思いましたが、最後にどんでん返しがありましたね。
脇を固める役者陣が、それぞれ良い味を出していて、よくぞこの芸達者なメンバーを集めてきたと。特に昭和のシーンは良い味が出てました。川口覚、阿部純子、篠原ゆき子、望ちゃん役の子、若葉竜也など。
また、宇野祥平さんは、日本アカデミー賞助演男優賞を与えて欲しいレベルの演技でした。
星野源と小栗旬のコンビ意外とアリ
学生運動が裏テーマにあって、いろいろ考えさせられた。
ただ、愚かな大衆にとって、自国で起きたことはテロやら罪だったが、他国で起きれば、正義やら人権やら…洗脳、操られる存在にしかならない。
結局、罪は誰なん?
血も流さない、罪も問われない政治家と汚い大人たち。
罪の声と未来
小説を読んで、映画化するとなって絶対観ると決めました。普段は映画は全くみない私が。
私は平成生まれでまだ当時は知らなかった、1950年代のグリコ・森永事件などを元にした昭和の大事件が映画化されている。(映画では万堂、ギンガ)
主人公が自宅からカセットテープとノートを発見して、カセットテープを聴くと当時事件で使われた子供の声が自分の声だと気づく。一方、新聞社は当時の事件を取材にしていく中で主人公に出会い、色々な人との繋がりを得て「きつね目の男」にあったり当時、他に使用された男の子の声の主に出会えたり。
使われた「罪の声」は過去で済むものじゃない、未来にも影響するし誰かに背負わされた罪を自分が背負って生きていく辛さも実感。罪は未来へ、過去にあったことを風化させてはならない。
エンドロールで流れた振り子がとても沁みました
犯人が誰という視点ではなく、ひとつのカセットテープに狂わされた人達の姿がとても衝撃的で心の奥深くに刺さるような気持ちになりました。
憎きカセットテープの音声が、唯一残された娘の音声という救いようのない虚しさを考えると涙が止まりませんでした。
家族が裏テーマだと思うのですが、どのフォーカスに当てても心の奥には家族を想ってこその行動なため、どこかやるせない憎みきれないところがもどかしかったです。
展開にハラハラしながら見れて、さすが野木亜紀子さんの脚本だと思いました。素晴らしかったです。
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