「35年の月日を経て変わる「罪の声」」罪の声 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
35年の月日を経て変わる「罪の声」
余計なことを語る必要がないほどにシンプルで分かりやすく、ただただ面白かった。
35年前のギン萬事件を偶然同時期に探り始める二人の男。
小栗旬演じる新聞記者阿久津は今さらこの未解決事件を掘り返すことに意義を見出だせない。
星野源演じるテーラー曽根俊也は知らぬ間に犯罪の片棒を担がされていたことの罪悪感と、身近な人が犯人かもしれないという思いから真相を探ろうとする。
別々の点から始まった二人の捜査はそれぞれ少しずつ手繰り寄せられていく感覚が最高にワクワクしたね。
ちょこちょこ人の名前とかわからなくなるけど、写真のこの男、この男としてもらえるので視覚的に認識出来て特に問題なかった。
多くの関係者が事件について何かしら心に引っ掛かりが残っているが、35年という歳月は蓋をする方が賢明という判断を下すには充分な時間だった。
そんな人たちに対して「脅迫に使われたテープの声、僕なんです」という告白は衝撃を与え、心を開かせた。
出会う人たちは犯人ではない人たちだ。彼らの中にも少なからず罪悪感のようなものがあるだろう。
その中でも犯人に一番近いところで、犯人以外である意味一番大きな罪を背負った男それが曽根俊也だ。
俊也と阿久津の捜査は、俊也の心の解放だけでなく、35年くすぶり続けた関係者たちの心の解放にも繋がる。
今まで黙っていた、隠していたことを一番罪深い男曽根俊也に話すこと、そして、自らの意思で罪を精算しようとする俊也の姿に希望を見出だし、彼らの35年はやっと終わりを告げる。
ここからネタバレ。
脅迫に使われた声は「罪の声」だ。
それが生島千代子に対して「慰めの声」に変わったシーンは涙なくして観られない。
阿久津が疑問に思っていたこの事件を掘る意義。それは、未解決故に苦しみ続けているかもしれない人たちの解放だった。
過ぎてしまったこと、起きてしまったことは覆せない。過去を掘るのではなく、今を救うんだ。
