「一番大切なことは理想ではなく現実を見ろということ」罪の声 M hobbyさんの映画レビュー(感想・評価)
一番大切なことは理想ではなく現実を見ろということ
映画館でこのような現実に起こった事件をベースに、社会へ問いかけるような内容の作品を見ることができてよかった。
ただの娯楽作品ももちろん大好きですが、お金を出してわざわざ映画館まで行って、映画を見る最高の環境で観るには、やはり、このような作品がすき。
この映画でなにを感じるかは人それぞれだと思うが、私の一番印象に残ったシーンは、総一郎さん(宇野祥平)か母親(篠原ゆき子)と再会するシーン。久々に映画館で肩を震わせるくらい泣いてしまいました。
30年近くの間離れ離れになり、それまでにお互い想像を絶する人生を歩んできたことはもちろん、離れてしまったことを後悔する息子と、息子に生きて再会できた母親の気持ちがあのワンシーンでドカンと伝わってきて涙が溢れて止まりませんでした。
そもそも、本作に出てくる犯罪グループは、己の理想や私欲や、逆恨みのために集まった連中で、もはや、誰一人として尊敬できる人物はおらず。
ただ、一言残しておきたいのは、新聞記者の阿久津(小栗旬)が、犯罪グループの1人であった曽根達雄(宇崎竜童)をイギリスまで探しに行き、一連の事件の裏側と彼の動機を聞いたあと、"あなたのせいで、、、"と彼に訴えるシーンがあったのですが、そこはいかがなもんかと思いました。もちろんそのシーンの伝えたいものはなんとなく分かるのですが、そこだけで終わってしまったこと。達雄1人を責めたところで、何も戻らなければ何も得ない。過去の彼の過ちはもちろん罰せられなけらばいけないと思いますが、彼らがなぜあのように行動を起こしたのか。最初にも言いましたが、もちろんそれは己の目的のためです。でも、彼らのように世間や社会や国へ不平不満を抱かせてしまう国家やメディアの責任はないんかい?そこはもっと掘り下げないのかい阿久津さん??と、大した情熱も持たずに人のネタでご飯食べてる新聞記者のあなたに、そんな偉そうな言葉を達雄にいえるのかい??
と、私はひたすら、なんじゃこいつは?と思いながら鑑賞。これを自分の知らぬうちに犯罪グループに利用された俊也(星野源)がいうならば、まーまー納得しただろうけど、阿久津が言うにはちょっとなぁ。
そして、最後、そんだけ偉そうに言った阿久津が書いた記事についてほぼほぼ触れない演出もモヤってしました。
本作を通して感じたことは3点。
*子供を犯罪に決して巻き込むな
*ヤーさん絡みは絶対ろくなことない
*理想を現実にするために、犯罪を犯してはいけない
当たり前のことですが、本作を通して強く感じたことでした。当たり前の生活を、誰かの理想という名の身勝手さで奪われないよう、そもそもの、世の中を少しでも良いものにする努力が人には必要なんだと感じました。