「めちゃくちゃ丁寧に作られた作品…!」罪の声 ゆめさんの映画レビュー(感想・評価)
めちゃくちゃ丁寧に作られた作品…!
雑なところが全然なくてとても丁寧に作られた良い映画だった…。
作り手からのたくさんの問題提起とメッセージが込められてるのを感じて胸が詰まった。
モチーフとなった事件を知らない+原作は未読だったのだけど、野木亜紀子さんが脚本をされているということで鑑賞。
事件や人の不幸をエンタメにして消費するマスコミと大衆への疑問。
「正義」という大義名分をかかげた暴力によって傷付けられ翻弄される、社会的弱者の立場にある人々へのまなざし。
解決しなかった事件によって人知れず痛みや何かを背負い続けた人たちへのまなざし。
(社会的弱者へのまなざしや、裁かれるべき者が裁かれないことで生まれる社会や誰かの人生の歪みや痛みは、同じく脚本を担当した野木さんのドラマ、MIU404でも描かれていた気がする。)
意図せず犯罪に加担した者たちの痛みと苦悩。
昭和(古い時代)の学生運動や暴力の価値観の否定と脱却と、過去を教訓にしようという想い。
実際は未解決らしい事件をベースによくこんな物語を生み出すなあと感動してしまった。モチーフになっているのは過去の事件だけど、提起される問題を今の時代にも十分当てはまるものにして、今の価値観で落とし所へ帰着させている(阿久津や曽根は昭和や過去の価値観を持たない今のアップデートされた価値観の持ち主だ。)
マスコミ側(当事者ではない新聞記者)と一般市民(しかも社会的弱者だったために巻き込まれた事件当事者)、双方の視点から描かれて、両者が絡み合い、最終的には共に寄り添いながら動くようになる、という物語の構図もすごくうまいし良い。
阿久津と曽根が相棒のような関係になっていくところは胸が熱くなったし、この重い物語の清涼剤にもなっていた。ラストシーンも良かったな…。
序盤はサスペンス要素が強くて物語がずっと緊迫し、底知れない恐ろしさみたいなものがあってずっと怖かった。
真実が明らかになるにつれ、「罪の声」や事件に人生を翻弄された人たちが抱えた想いが表に姿を表して切なさで胸が苦しくてたまらなかった。
誰かのことを想って、または自分の人生を守るために口を閉ざしてきた人たちが阿久津と曽根に動かされて、ずっと秘めてきたものを吐露するところは苦しかった。
事件に直接関わらなくたって、何十年を傷付いて苦悩して人たちがいた。たぶん現実だってそうなのだろう。
途中でだれることなく最後まで観れたし、エピソード積み上げとその帰着のさせ方が素晴らしい。
あと証言者をはじめ俳優さんが豪華で、うまい俳優さんばかりなのも良かった…。業界のドンみたいな人の話し方がすごく静かなのがすごくリアルな感じで怖かった。
本当に良い映画だった…。