「罪に時効なんてない」罪の声 柴左近さんの映画レビュー(感想・評価)
罪に時効なんてない
昭和最大の未解決事件であるグリコ森永事件に基づいて作られた小説の映画化
小説は未読なのでわからないが、映画のストーリーは凄く良かった。
W主役である小栗旬、星野源がそれぞれ違うスタート地点からジリジリと近付いていく序盤。中盤になり二人が交差して、そこからは加速度的に真実が浮き彫りになっていく。特に二人が出会うまでの演出がリアルさと面白さが合わさっていて凄く好きだ。自分自身は平成生まれなのに食い入るように観てしまったので、きっと当時生きていた方はより興味深く観れるのではないか。キツネ目の男を上手く出していたり、地道な方法でじっくりと真実と対面していく脚本のおかげで「なるほど、そういうことだったのか」という快感をフィクションではあるが味わえそうだ。
そして個人的にいいなと思ったのは学生運動の扱いについてだ。「昔学生運動に参加していてね…」と、当時はそういう時代だったから…みたいにケロッと語る老人が時々いるが、さもそれを当然のことのように思ってる神経がわからない。権力に対抗するという大層な大義があったのかはわからないが、実際はただ暴れまわって迷惑をかけただけで、結局何も変えることができなかった。罪のない色んな人を巻き込み迷惑をかけたのに反省の色が全く無い。本当に暴れたいのはその巻き込まれた人達ではないか。それをこの映画では訴えていたので嬉しかった。そう、餌食になるのはいつも声もあげられない弱い者たちだ。
小栗旬がより好きになる。もう十分国民的俳優だが、いずれは高倉健さんぐらいの「国民の宝」ぐらいの俳優になってほしい。
ストーリー、キャストは申し分無いのだけど、少し残念に思ったのは"映画感"が足りないことだ。ドラマの延長の様な撮り方のせいで安っぽい雰囲気になってしまっているのがとても残念。もっと製作陣のこだわりがつたわるショット、演出を盛り込んでも良かったのではないか。これは今作に限らず今後の邦画の課題でもあると思う。