「拡げるのか絞り込むのか...。難しい選択。」罪の声 またぞうさんの映画レビュー(感想・評価)
拡げるのか絞り込むのか...。難しい選択。
クリックして本文を読む
見に行った理由はいろいろだけど、野木亜希子 脚本の映画を見て見たかったというのが一番大きい。自分の声が自分と無関係と思っていた大事件に使われていたことを知ったテーラーのミステリー、過去の大事件を掘り起こす仕事を突然振られた(報道への熱意を失った)新聞記者を主軸に、叔父の過去、同じ境遇の子供たちのその後などをいつしかバディとなった二人で追うことで、新たな事実が明らかになるとともに、関係者たちの悲しい人生に触れていく。真面目に作っていることは良くわかるが、やはりどうしてももう少し脚本を練りあげればもっと良くなる作品だと思う。
筋としての最大の欠点は、小栗旬自身に動機がないことだ。後半で少しそれらしいセリフを語るが、そもそも企画も降ってきたものだ。なぜそうしたのだろう。梶芽衣子が深くかかわっていることは、年を取った母にも活動家の過去があり父以外との恋があったであろうことが伝わるところは非常に興味深い描写なのだが、ここに対する星野源のリアクションはもっと深堀すべきではなかったか。ラスト、子供を抱きしめるところ、どんな感情なのか、伝わってこない。
そして舞台となった事件への推論についてもあり得る筋ではあるのだが、映画では謎解きに振るのであれば若い層への説明をもう少し丁寧にすべきだと思う。70年安保も絡めるというのであれば尚更だ。橋本じゅん一人ですべてをつなげてしまうのも簡単すぎて驚いた。
事件そのものより影響を受けた家族の群像を描きたかったのだと思う。場面場面は丁寧に描かれているが芯の筋をもっと練りあげて欲しかった。宇野祥平の、篠原ゆき子の熱演もスルーされてしまいそうだ。
コメントする